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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
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一年生体力測定(春)

 二千三十九年四月二十六日の火曜日。

 この日の三時限目と四時限目の体育の時間は体力テストである。

「だりーよ。三紅~。休もーぜ~」

 体操着を着たまま腕をやる気無く、だらんとたらしている栗色のポニーテールは、間違い無く姫野だ。


 そんな、姫野を説得するのは、黒色のミディアムボブの小学生……。もとい高校生は三紅。

「だーめ。それに休んだら別の日、放課後補習だよ?」


「ま、マジか……。それはそれでだりし、ここは腹を括って、適当に終わらせるか……」

「白雪姫さんは運動音痴なんですか?」

 金髪にアホ毛、北欧風の顔立ちなのはモカ。モカは何食わぬ顔で聞くと、真下から三紅による否定の声。


「いや、姫野は運動神経は良い方だよ? それこそ中学の時なんか、いろんな部から助っ人にー。って引っ張りダコだったんだから」

「ふーん。そんなに凄いんならどうしてあんなにやる気ないのです?」

「あー、姫野は運動が嫌いなんだよね」


「そりゃそーだろ? 誰が好き好んで汗臭くなりたいんだっての」

「でも、だったら何で助っ人に入ったのですか?」

「あー、それはな、日当一律千円で引き受けてたんだよ。おかげでコーヒー豆の研究や資材もある程度揃ったしな……」


 悪魔めいた笑みで締め括ると、話題がここで一旦終わる。と、すぐさま三紅が若干イラつき混じりの声で聞く。

「それで? モカ。いつまでそうしてるつもり?」

 モカは真上から何食わぬ顔で答える。


「いつまででもですよ。だって錦織さん可愛いんですもん。人形みたいで」

 そう、モカは三紅を後ろから抱きついているのだ。二人の身長差も相成って、キレイに納まっている。


 その光景がほのぼのして、回りの人を和ますせている。

 三紅はそれが気に食わないようで、ムスッと頬を膨らましている――その仕草も三紅の可愛らしさが増しているが、その事にやはり三紅は気付いていない――


 そして、三紅のイライラが最高点まで達したようで、肩から回ってあるモカの左腕と、体操着の襟を掴み、腰の回転を入れて、前方のコンクリート剥き出しの地面に叩き付けた。

 その事象を目の当たりにした全員が固まる。刹那。衝突音のあとに訪れる静寂。


 何が起こったのか状況が未だ掴めない生徒達の中で腹を抱えながら笑っている姫野。

「とうとう、やりやがった……」

 その呟きに答えるように三紅は笑顔で言い放つ。

「これに懲りたら二度と抱きつかないでよね」


「なぁ、三紅聞こえてねぇだろ? それ。コンクリだし……。ここで投げ飛ばされたらどんな強者でも気絶す……」

 姫野は三紅にそう指摘しようと言葉を掛けていると、モカが何事も無かったかのように起き上がり、足早に近づいてくる。


 両手で三紅の両手を包み込み、ブンブンと上下に振りながら声。

「す、すごいですよ! あんなキレイな投げ飛ばされかた初めてです! なにかやってたのですか!?」


「あー、う、うん。小さいってからかわれてたから、ちょっと痛い目を見させたくて、中学の時に柔道と合気道、空手、あとはバスケをちょっと……」

「オレは、お前のほうが驚きだぜ。よくもまぁ、あんな無防備な状態からコンクリにぶつけられピンピンしてんな」


「それほどでもないですよ。あたし、昔から運動音痴でしたけど、受け身は何故か得意でして、柔道、合気道、相撲等々投げ技の特訓相手に付き合っていましただけです」

「ま、マジか……」

「な、なるほど……」


「次の組ー。用意しろー」

 とうの声が聞こえ、三人はトラックの白線へと足を運んだ。最初は五十メートル走。

「では、行くぞー位置について、よーい……。ドン!」


 小学校の体育祭の徒競走めいた合図で三人は走り出した。

「三紅さんのフォームめちゃキレイ!」

「いや、速さっていう観点でいうと、姫野さんのほうが速いぞ! 何であんなフォームなのに、速いんだ!!」


 この組の一着は腕をだらんとたらしたままで走っていた姫野だった。その一秒遅れで三紅がゴールした。

「白雪! 記録、五コンマ八!」

「へーい……」


「錦織! 記録、六コンマ六!」

「は、はい……!」

 息一つ切らさないでなおも気だるげに答えた姫野に対し、三紅は肩で息をしながら、膝に手を付き答えた。

「やっぱり、姫野には勝てない、か……」


「そりゃな。手足がの長さが違うからな」

「ひっどーい。人が一番気にしてることを……。って? モカは?」

 三紅が首を傾げながら聞くと、姫野が「ん……」と、後ろのトラックを指差すので見た。

「うおーーー! 何で進まないのです!?」


 そこにいたのは、未だスタート地点で高速足踏みをしているモカだった。

「あちゃー……。モカ運動音痴なんかじゃなくて、ただ単に体の使い方が下手なだけだね」

「だな……」


 その五分後。先生も呆れたのか、

「宮坂……。頑張りは認めてやるから次行け……」

 と、ため息混じりに言うので、三人は次の課題に向かった。


 続く、立ち幅跳び。

「三紅さんフォーム本当にキレイ!」

「姫野さんはフォームぐちゃぐちゃだけど二メートル超え!?」

「モカさんは……。まさかのバク宙!? いったいどうしたらそうなるの!?」


 ボール投げ。

「うん。三紅ちゃん案の定フォームむちゃキレイ!」

「姫野様は、二十メートル超え!? 本気を出したらどうなるの!?」

「モカさん凄い豪速球! だけど投げる方向が違う! あーー! 計測してる先生にーー!?」


 反復横飛び。

「三紅。フォームキレイで、すばやい! まるで黒光りちゃんみたい……」

「あれ? 姫野っち、なんか動きにくそう? あそっか! ミクミクとは違って胸が……。ぎゃーーーー!!」

「モカやんは……九回か。うん。よく頑張ってる!」


 シャトルラン。

「錦織さんフォームはキレイなんだけど、体格が伴ってないな。可愛そうに……。キャーーーー!!!」

「白雪さんは、一回目で脱落!? なにが……。え? うんうん。あー『クリアしたらドンドンしてかないと行けないのめんどいじゃん?』……って。どんだけめんどくさがりなんだよ!?」

「そして、宮坂さんはやはり前に進んでない!」


 上体起こし。

「三紅姫は真面目に取り組んでて偉い!」

「白雪王子は……。今度もゼロ回で脱落! 真面目に……。ゴフッ!」

「モカ猫さーーん!? 高速で頭ブリッジ!? それもはや違う競技だから!!?」


 全競技無事終了し、昼休み。

 三紅達は、部室で昼食を取っていた。

「ふー。疲れたぜー」

 姫野は机にぐてっと、身を乗り出していた。三紅はそんな姫野にジト目を流す。


「疲れたって言っても、姫野。何一つも真面目にやってなかったよね? でも、中学の時らどんなにめんどくさくても体育は真面目にやってたけど、今回はやってなかった。どういう心境の変化?」

 姫野は「ああ……」と唸りながらむくりと、顔を上げる。その表情は悪魔めいた笑みだった。


「だってよ。ああでもしないと顧客が集まらないだろ? 『こいつ出来るな! よし、助っ人頼むか』ってな。ま、一種の営業だよ」

「な、なるほど……」

「そだよ。あー、疲れてコーヒーしか飲めねぇ……。ってことで作るか……」


 よっと。と、姫野は重い腰を上げ立ち上がり、厨房へと向かう。その行動を見て、三紅が当然のように言う。

「あ、私カフェモカー」


「やだよ。一番めんどいじゃん。なんで自分のコーヒー淹れるついでに、そんなめんどくさいことしないと行けないんだよ?」

 そう言うも、姫野は手際よくコーヒーをサイフォンと、ドリップで二つ同時に作り出す。

「えー、良いじゃん。私のほうが疲れてるんだし……」


 姫野の苦笑。

「そりゃな。三人ヤったら疲れるわな」

「二人だよ! ふたり! 一人は姫野がヤったじゃん!? なに改造してんの!」

「あり? そうだったか? ホラよ」


 姫野は作ったカフェモカの入ったティーカップを差し出した。

「もう、そうだよ! ありがとう――」

 三紅はそれを受け取りながら、ぼやきと、感謝を伝えると一口。


「――ああ、これこれ。姫野の入れてくれるカフェモカは本当に最高だよ……」

 三紅の周囲に花が咲き誇っているのかと、錯覚してしまうほど、顔を綻ばせる。それを対面に――左腕を背もたれの外側に回し、脚を組んだ姿勢で――座る三紅は、


「そうか。それは何よりだ」

 と、微笑を浮かべながら、言い終わると、一口。

 ま、三紅の豆は使い物にならないザコ豆ばっかで淹れてるんだがな。いつ気が付くか楽しみだぜ。

今日はここまでとなります♪


次回は、明日の夜10時になります!

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