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真冬のショート・ホラー小説劇場  第6話 「魔女の娘 」 the Witch's Daughter

作者: 舜風人
掲載日:2020/12/08



ルシフェル一件次第のこと。




長崎教区パーデレ、フランシスコの報告書より。




ポルトガル本庁当て書簡。




「えすてぱん」および「マリア」一件のこと右報告いたしまする。




そもそもエステパンと申す少年は




もと、おおうらの、南蛮寺に、捨てられていた赤子でございまする。。




とある朝のこと、


「ぱあでれ」ふらんしすこが朝の祈祷をせんと起きだすと、庭先のほうから赤子の泣き声がいたしまするので


急いで出てみれば、なんとそこには、一人の捨て子が堂前に置いてあったのでございまする、




ぼろのおくるみには、手紙が添えてあり、「どうぞ、提宇子(デウス)さまのお恵みが有りますように」とあったという。




ぱあでれ ふらんしすこは それを見るとこれはキリシタン信者に間違いあるまい、さて何の困惑事があって捨てたのかといぶかるばかりだったという。




その子がのちのエステパンでござる。


成長後は私のもとで従者として仕え、


私が京都の南蛮寺を訪れた際も同道して何くれとなく世話を


始末してくれたことは重宝いたしまする。




さて京都の南蛮寺に、一人の娘の信徒がおって


なんでも先ごろから気がふれたような振る舞いが目立つというので


私に是非にも見ていただきたいとのこと、




早速呼び出してみるに


目つきは定まらず、


口走るは「ルシヘル様よ」と申しているばかり、


これはまさに悪魔ルシヘルの憑依と判断し


早速加持祈祷を行った次第、


祓い清めの祭式に応じて


エステパンにも異変が現れたのじゃ。


突然目つきが変わったかと思うと、




「この娘ごは のう


ルシヘルさまが連れてこられた魔女の娘なのよ。日本の耶蘇教を滅ぼさんがために


遠くエンケレスからルシヘル様が連れ来たった娘なのよ」




などと口走る始末。




京都南蛮寺の司祭、おるがの様も加わり


加持祈祷を続けざまに行った結果、


やっと呪縛も溶けて


エステパン


及び洗礼名マリアも正気にも戻ったという次第じゃったのじゃ。


我らは深くゼズキリシト様に感謝申し上げ


インヒニートクルスの


ハライソウを加護し奉ったのじゃった。




その後マリアとエステパンは長崎の南蛮寺に連れ申して


コンチリサンのコンヒサンを修しまして


いっそうの信心に励んだことはいうまでもござらん。




ただし、、それから数か月後、


突如マリアが行く方不明に、、


何処ともなく出奔してしもうたのじゃった。




マリアはやはりルシヘルの連れてきた魔女の娘だったのじゃろうか?




今頃日本の何処かに潜んで邪宗門の悪魔信仰を流布せんとでもしておるのじゃろうか?


いかにせん、


謎のままに迷宮入りとはなった次第じゃ。






それにしても


つらつら思うに


一体ルシヘルはどうやってこの東洋の僻地ジパングにまでも


渡ってこられたのか?




そしてマリアという娘に取りついてまでも


耶蘇キリシトの光栄をじゃまだてせんとしたのか?


まったく不可解千万のゆえ




ここに記録して本国にご送付申しあげるしだいでござる。










日本布教長カブラル様御付き


長崎司祭長フルコム様御付きパーデレフランシスコ  拝。




ポルトガル国ナヴァール女王猊下


イエスス会本部司祭長様








付記




上記の書簡はもとポルトガル語で書かれておりますゆえ、




るそん聖南蛮寺付き




ろれんそ   ルそん日本人信者いるまん


ヤジロウ   ルソン フルコム様 御付き従者、同じく、イルマン




両名、日本語に翻訳いたしました写しでございまする次第でありまする。




了


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