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トラカンド国の軍人達  作者: 黒い龍酸
3/11

机の秘密(前編)

その日総統室で、エースは激怒した。

腕組みで仁王立ちをし、タバコを咥え、青筋を浮かべているエースの前に正座をさせられている総統。それを見ている他のメンバー達。

事の発端は数分前、総統の部屋の机が壁に刺さっていない時にまで遡る。




総統はいつも通り執務をこなしていた。

コンコンコン

3回のノックがドアから聞こえ、総統は「どうぞ」と応えた。

ガチャリという音と共に入ってきたのはエースだった。


「エース、どうしたの?」

「書類、できたから持ってきたんだよ」


「ほら」と言って、タバコを咥えたエースは、総統に書類の束を渡す。

総統はその書類の束を見て、眉間に皺を寄せる。


「・・・書類の量が少し多い気がするんだけど、もしかしてジョーカーの分もやってるんじゃないわよね?」

「眉間に皺寄せると、おばさん感増すぞ」

「まだ25よ!!」

「嘘つけ、お前俺より年下なわけねぇだろう35歳」

「あなた今サラッと私の実年齢言ったわね?」

「・・・さぁなんのことやら」


総統は実年齢を言われたのを聞き逃さず、疑いの眼差しをエースに向ける。エースは誤魔化すかのようにタバコをあさっての方向に吹かす。

総統はエースの反応を見て、諦めたのか溜息を出す。


「まったく・・・ジョーカーはいつになったら仕事をしてくれるのかしら・・・」

「昔のお前と一緒だな」

「私はあそこまでひどくないわよ!!それにジョーカーと私は違うわよ!!!!」

「エースから聞く昔話だとババアは俺と同等ぐらいでサボり癖酷かったみたいじゃねぇか」


いつから居たのか、ジョーカーが総統室の入口からひょこっと顔だけ出す。


「あんた、いつもエースに仕事を任せるんじゃなわいよ!」

「エースがやってくれるから、俺はそれに甘えてるだけだ」

「いい加減にしなさよ・・・。少しはエースの負担も考えなさい!」

「俺は別に問題ねぇけど」

「そういう問題じゃない!」


総統は、勢いよく立ち上がろうとしたのか、誤って力任せに机を書類と一緒に殴ってしまった。

その瞬間、机が二つに分かれ、壁に刺さった。

総統はやってしまったという表情になり、ジョーカーも真顔だが、「あっ」と声をもらす。総統はゆっくりとエースの方を見る。総統が目にしたエースの表情は、この世のものとは思えない怒りの表情をしていた。


そして今に至る。因みに他のメンバーは大きな音に反応して駆け着けただけである。




「・・・総統、俺言ったよな?力任せになるなって」

「あの、その」

「あんた、ただでさえ人間では限界だろうメニューを平然とこなすんだから、加減しないとお前の力だと物が壊れるかもしれないって言ったよな?」

「だからごめんって言ってるでしょ!」


エースは低い声で問いただすように総統に言い放つ。だが総統はそれに反発するように言い返す。


「ごめんで済む問題じゃないから言ってんだろう。どうすんだよ、机がなきゃ執務も無理だろ」

「い、今から同じ机探してきて、続きをやるわよ!」

「それは無理だと思いますー」


入口の影からひょこっと顔を出したクラブが言う。

総統は言ってる意味が分からないらしく、クラブに問いかける。


「どうして無理なのよ」

「そ、それは・・・」


クラブは少し言葉を濁す。

ハートはそれを見越していたようで、クラブの代わりに答えようと少し前に出る。


「その机、それしかないのよ」

「え?だって、こんな机、どこにでも売ってるでしょ」


辺りが凍りつく。

エースは総統の言葉を聞いた瞬間に、腰に手を当てる。

そして銃を取り出し、ゆっくりと銃口を総統に向ける。


「・・・言い残すことはあるか」


エースは、先程よりも低い声で総統に言い放つ。隠しきれない殺気を纏いながら。


「まずいエースがキレた!スペード抑えるぞ!」

「あっ、うん!!!」


ダイヤが危険を察知し、スペードと一緒にエースを押さえ込む。

それでもエースはそれを振りほどこうと暴れる。

総統も訳が分からず混乱し、ハートもエースを宥めようとする。クラブはどうしたらいいのか分からずアタフタする。

しかし、ジョーカーだけは退屈そうにあくびをする。


「・・・・クラブ、あれ」

「え?・・・あぁ!はい!!」


ジョーカーはクラブに軽く指示をすると、クラブはスプレー缶を取り出し、エースに吹きかける。スプレー缶には「睡眠薬♡」と書かれていた。

睡眠薬をかけられたエースと、エースを抑えていた為巻き添えでくらってしまったダイヤとスペードはその場で倒れた。


「お見事」

「えへへー」


ハートはホッとして、エースを自室に運ぶため総統室を出た。クラブはハートの後を付いて総統室を後にする。

ジョーカーは「めんどくせぇ」と言いながらスペードとダイヤの首根っこを掴み、引きずりながら総統室を出ようとする。


「・・・なんであんなに怒るのよ、あいつ」


総統の独り言が聞こえたのか、ジョーカーは総統室を出ようとする足をピタリと止める。


「当たり前だろ」

「は?」

「ババア、お前の机に使った木材、あれエースの母国でしか採れない貴重な木だったんだぞ」


総統はジョーカーの一言を聞いて、何かを思い出したかのように絶句する。

ジョーカーは何事もなかったかのように総統室を後にする。

総統室に残った総統は、ひどく罪悪感に苛まれていた。

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