ゲーム仲間
とある昼下がり、スペードはゲームのカセットを片手に、何処かに走っていった。
すれ違う兵士たちを見向きもせず、ただ一目散に一箇所に、何処か嬉しそうに走っていた。そして、一つの部屋の前に到着する。そこはジョーカーの部屋、つまり警備室であった。スペードは警備室のドアを力任せに開け、無邪気な笑顔をジョーカーに向ける。
「ジョーカー!!!」
スペードの声が聞こえたジョーカーはゆっくりと振り返った。
その瞬間、ドンッという音と共に、スペードの頬スレスレに何かが通った。
「・・・うるせぇんだよ、ドア壊したどうするんだよ。・・・・・次やったら当てるからな」
眉間に皺を寄せたジョーカーの手には拳銃が握られていた。
スペードの後ろの壁には弾丸が飛んできたであろう穴があった。スペードは引きつった笑顔でそのまま立っていた。そしてスペードは、次から静かに開けようと心に決めた。
「で、なんの用だよ」
「はっ!そうだった!!今日発売のゲーム買ったから一緒にやろうと・・・」
「やる」
スペードが警備室にやってきた訳を言おうとしたが、ジョーカーは「ゲーム」という言葉を聞いた瞬間に食い気味で二つ返事をした。そして心なしかジョーカーの表情は生き生きとしているようにも見える。
「さすがジョーカー!!そう言ってくれると思ったよ!じゃあ俺が準備するから書類頑張れ!!!」
「任せた」
スペードはテキパキと警備室にあるジョーカーがゲームの為に買ったテレビに接続等の準備をし、「できたよ!」と言ってコントローラーをジョーカーにも渡した。ジョーカーはゲームをやりたくて仕方が無かったのか、書類作成を途中で放置した。スペードはジョーカーが書類作成を途中で放置したと気づかず、ゲームを起動した。
そこからは時間を忘れるほどゲームを楽しみ、いつの間にか夕方になっていた。
「終わったー!やっぱりジョーカーとやるとすぐ終わるな!!」
「まぁ、ゲームは俺の得意分野だしな」
「えー!ジョーカーなんでも得意じゃん!チートだよチート!!」
「・・・まぁな」
スペードにチートと言われたジョーカーは少し嬉しそうだった。
スペードはふと手元のコントローラーを見て、ふと何かを思い出す。その表情はどこか悲しげだった。
「・・・やっぱり誰かとゲームするの、楽しいな。俺、今すっげぇ楽しい!!」
「あ?急にどうしたんだお前?」
「あっ、いや、なんでもない!!」
スペードは自分の発言を取り消すかのように慌てて誤魔化した。
ジョーカーはそれを不思議に思ったが、あえて触れなかった。ジョーカーは、スペードが何か言いたくないことでもあるんだろうなと感じたと同時に、聞くのがめんどくさいとも感じていたようだ。だが、スペードの言葉にどこか思うところがあるようで、画面をじっと見つめ、小さく口を開く。
「まぁ、確かにお前らと一緒に居るようになってから、楽しい、かな」
「え!!?ジョーカーがデレた!!!明日爆弾落ちてこない!?大丈夫!!?」
「喧しい」
ジョーカーの発言にスペードは珍しいと言わんばかりの驚きの顔をした。その瞬間、ジョーカーはスペードの首元にナイフを向けた。だが、スペードはそれを不快に思うどころか、楽しそうに笑っている。何故ならジョーカーに殺意はない為、スペードはジョーカーの照れ隠しなんだと思っているからだ。そんなスペードの表情を見たジョーカーは呆れたかのように小さく笑った。
「ジョーカー!お腹空いたから食堂行こうぜ!」
「・・・そうだな、そろそろ飯の時間だしな」
ジョーカーは警備するときに使う椅子の横にナイフをしまった。
「早く行こう!!」
スペードはジョーカーの手を引いて食堂に走っていった。
食堂に着いて、夕方までに提出するはずだった書類を作成していないことが総統にバレ、食堂で総統とジョーカーがまた、小学生並みの喧嘩するようになるのは、別のお話。