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大阪のおばちゃんとは?

異世界転生物を書いてみたくなりました。大阪弁が苦手な方、申し訳ありません。

 白銀あおいは、短大を出た後、大阪市東部の印刷会社に勤めて35年になる。四国の田舎から出てきた小柄で純朴な少女は、今では、立派な大阪のおばちゃんになっている。

「いや、あたしは、四国出身やから、厳密には大阪のおばちゃんやないよ。大阪ネイティブとちごうて、控えめやん?」

 あおいはいつもそう言うが、周りは、いやいや、どこが控えめ?と思っている。口に出すと、自分がいかに控えめかをマシンガンのように喋りだして止まらないので、誰も反論しない。

 経理を勤めており経理ソフトを使いこなすが、パソコンは苦手である。

「あおいおばちゃんより、若くて可愛い経理の子を雇いましょうよー」

 男性社員は、いつも社長に訴えるが、人情家の社長は、

「定年まであと5年やないか。我慢せえ。あおいちゃんも、あれでなかなか可愛いとこあるやないか」

 と一蹴していた。

(定年まであと5年かー。あたしと猫の食い扶持は、定年後も何とかなるんかなぁ。年金貰えるまで、顧問かなんかでやとてくれへんかなぁ)

 あおいは、若い頃、一回結婚したものの、ほんの数年で旦那の浮気が発覚して離婚していた。今は、中古で買った2DKのマンションで猫二匹と暮らしている。大阪のおばちゃんといえど、近い将来に不安を抱いていた。


 ショッピングモールで惣菜を買って、急ぎ足で家路を辿っていたあおいは、猫のカリカリあったかな?と気になり、ショッピングモールに戻ろうと、くるりと方向転換したがバランスを崩してよろめいた。

(ロコモコ?とかゆうやつかな、ああ、年をとりたないもんや)

 よろめいて、歩道の縁石に乗り上げ、足をひねり、車道に転がり出たあおいは、運悪く通りかかった車にはねられた。昔観たコメディ映画みたいや、と思いながら、あおいは宙を舞い、意識はそのまま途切れていった。


『シロガネアオイ、目を開けなさい』

 優しげな声が話しかける。あおいは、ゆっくり目を開けた。眩しい。辺りを見回したが、声の主の姿はない。

『ここどこですか?天国?病院?なんもないから、やっぱり天国?あたし、死んだんですか?どこも痛ないし…』

『質問を止めて話を聞きなさい』

『あ、ごめんやで。口チャックやな』

『…アオイ、あなたを別の世界に転生させることに…』

『え?まじで?異世界転生?わー、ほんまにそんなことあるんや!』

 あおいは、ラノベとアニメとゲームが好きだった。

『話を聞きなさい!』

『ごめんごめん、怒らんといて』

『とにかく、転生させるから、希望を…』

『男前にして!男前で、身長が195センチで、身体めっちゃ頑丈で力持ちやけど、手先器用で…』

 少年ジャ○プを小学生の頃から読んでいた。

『図々しい!そんなに沢山希望をするのは…』

『えー?ええやん、これくらい。何のおもしろみもない人生だったんやで。転生したら、男前で、背が高くて、頭がよくて眼がよくて…』

『増やすな!もう時間がないから、とりあえず…』

『いやいや、こればかりは一個もまからんよ!主人公補正で何しても死なへんように…』

『これ以上増やすな!兎に角、今から転生させます』

『ちょっと待って、最後にもう一個だけお願い聞いて!』

『…まだ、他に何か?』

『ステラとムンドのことを幸せにしてあげて』

『猫ですね、分かりました』

『幸せにしてくれへんかったら化けて出るからね』

『お前は、異世界に転生するから化けて出られません!』

『あー、でも、ほんまに幸せになるんか心配で心配で…』

『…分かりました。二匹は、いずれお前の元に転生させます』

『ほんまに?ありがとう!ありがとう。気前ええねー、あんた。あれ?そういえば、あんた、誰やの?』

『…』

『いや、待って、ほんまは分かってるから、神様やんな?ようわからんけど!ありがとうな!』

『…もう時間だ。転生先で逞しく生きるがいい』

『あ、ちょっと…』

 あおいは光に包まれた。ちゃんと男前に転生さしてくれへんかったら、あの神様どついたるから!と最後に思った。


 目が覚めると、あおいは、鬱蒼と繁る森の中にいた。どういう世界かまだ分からないが、無事転生したようだ。ぱっと確認したところ、細マッチョな男性のようだ。

 水溜まりを探して自分の姿を映して見た。金髪に蒼い瞳の美丈夫だ。分かってない!黒髪に青い眼で、もう少しマッチョにして欲しかったんや!もっと神様に詳しく伝えておくべきだったという後悔は、後の祭りである。

 とりあえず、男前という希望をきいてくれただけでもよしとせなあかんな、いざとなったらツバメとかジゴロで生きていけるやろうしな!あおいは、気を取り直して、人里を探すことにした。

 森の中でも、じっと目を凝らすと、かなり先まで見通せることが分かった。眼をよくして欲しいという願いを神様が聞き入れてくれたようだ。わりと物分かりの良い神様だ。

「うーん。ちょっと先に動物かなんかおるなぁ。凶暴な奴やったらいややから、避けていくか」

 しかし、相手もこちらの存在に気がついたようで、結構な速さで近付いてきている。ヤバいなー、神様は、どれくらいの希望を聞いてくれたんやろうか。身体を頑丈にしてっていうのは有効なんやろか。逡巡している間に猪に似た動物が目の前まで迫っていた。明らかに殺る気に満ちた凶暴な面構えだ。

「あー、肉食獣っぽいわー。嫌やなぁ」

 獣はあおいに突進してきた。車にはねられたことを思い出す。

「わー!嫌や!嫌や!こっちこんといて!」

 あおいは、身体の前で闇雲に腕を振り回した。腕にドンッと衝撃がくる。ふっとばされる!と思ったが、相手の動物の方が後ろに吹っ飛んだ。

「ん?」

 地面に落ちた動物は、戦意を失わず、また突進してきた。

「あれ、もしかして勝てる?」

 今度は、じっと相手を見た。どういう仕組みなのか、相手の動きはスロー再生のように見える。目がいいって、こういうレベル?

 狙いすまして、眉間の辺りを殴ったら、また、吹っ飛んだ敵は、今度は、戦意喪失して慌てて逃げて行った。

 頑丈な身体で力持ち、神様は、かなり希望を叶えてくれている。身長もどこかで計ってみたい。195センチにしてくれてるかな?でも、この世界の人間が、みんな3メートルあったらチビになってしまうんかー、センチで希望せんかったらよかったかなーとちょっと後悔しながら、遠くに微かに見える集落らしき物を目指してひたすら歩く。いろいろ破壊すればいいので、殆ど一直線に歩いていけるのだ。

 途中、先ほどの猪みたいな奴が再び襲撃してきた。あおいが隠れていた樹木を殴り倒したので、敵もやむを得ず戦いを挑んできたのかもしれない。

「オラオラオラ!」

 あおいは、憧れのラッシュで敵を倒した。

「猪っぽいから食べられそうなんやけど、包丁もないし火も起こせないんよなー。生は無理やしなー」

 仕方なく、猪を肩に担いでいくことにした。街で料理してもらえるかもしれんしな。

 半日ほど歩いて、日が傾くころ、やっと集落に辿り着いた。村よりは、少し大きい感じの小さな街だ。

「ロープレの最初の街っぽいな。とりあえず、冒険者ギルドに行くのが定石やな」

 往来にいた数人の男女は、驚きの表情であおいを見上げてくる。かなり高身長な部類に入るようだ。神様、ちゃんとしてるなー、希望どおりや!

 辺りを見回すと、1人の女性が恐る恐る話しかけてきた。

「あの、何かお捜しですか?」

 ちゃんと聞き取れて、意味が分かる。神様ありがとう。

「冒険者ギルドを探しているのですが、ありますか?」

「ああ、ありますよ。この道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右です」

「ありがとう。」

 ニコッと笑うと、相手は頬を染めてもじもじした。そういや、あたし、めっちゃ男前だったわー。いい気分である。


 猪を担いだままギルドのドアを開けると、ギルドにいた数人の冒険者と受付係のお姉さんが一斉にあおいを見た。床に猪を下ろし、受付係のお姉さんに話しかける。

「すみません。冒険者になりたいんですけど、いけますかね?」

「え?今は、冒険者ではないんですか?」

「はあ、えーと、山奥に住んでたんですけど、一念発起して冒険者になろうかなーと」

「お名前は?」

「…」

 名字が先か、名前が先か瞬時迷ったが、見た目西洋風だから名前を先にすることにきめた。

「アオイ・シロガネです」

「アオイ・シロガネさんですね、えーと、男性と」

 受付係は、アオイをカウンターの上の端末機に登録した。

「では、適性を見ますね」

 そして、なにやらバーコードリーダーみたいな物を取り出して、あおいをスキャンした。

「…異常なステータスです。冒険者に向いているのかどうか…」

「異常なんですか?やっぱり!」

 分かってたで!転生者だけにスキルもステータスももりもりで最強なんやな!アオイが微笑んだため、受付係は真っ赤になってしまった。

「どんなスキルがあります?」

「スキルは、ジョブに就かないと習得できません」

「あれ?そうなん?じゃあ、異常なとこってのは?」

「魔力が全くなく、素質もゼロです。魔法を使えるようには、絶対になりません」

「…あー、そうかそうか、それはそうか」

 あおいは、身体能力ばかりを神様にお願いしたのだ。魔力とか、考えてなかったなー。神様もケチや、頼まんでもサービスしてくれたらええのに。

「これを見て下さい。あなたのステータスです」

 受付係は、指で空中に四角を描いた。たちまちパソコンのモニターのような物が浮かび上がる。

 覗き込むと、アオイのステータスが記載されていた。


名前:アオイ・シロガネ

種族:ウマノ

年齢:18

身長:195センチ

体重:82キロ

レベル:2

経験値:33

体力:1215

防御力:3030

攻撃力:289

知力:125

魔力:-

素早さ:15

ラック:777

属性:無

ジョブ:未

スキル:無

才能:身体頑健、頑丈、馬鹿力、千里眼、審美眼、顕微眼、真理眼、心理眼、スロー眼、邪眼、魔眼、龍眼、地獄耳、男前、精密動作、口車、経理、主人公補正、大阪のおばちゃん


 眼の才能が適当にいろいろ詰め込まれすぎな気がする。スロー眼ていうのはダジャレやないかい!龍眼は東南アジアの果物の名前やし、邪眼とか中二病かな?魔力がないのに魔眼とか、意味があるのかないのか分からんし。口車というのは、神様を丸め込んだらからなのか、あと、経理ってのは単に転生前の職業じゃないのか…。

「まあ!男前なのは才能だったんですね」

 受付係は、うっとりしてアオイを見上げてきたが、怪訝そうに付け加えた。

「でも、大阪のおばちゃん、てどんな才能なんでしょうか?」

「ほんまや。大阪のおばちゃん、て…」

「何か分からないけど、才能が沢山あって素敵です!」

「そ、そう?ありがと」

「レベルが低いのは、今までジョブについていなかったからかもしれませんが、それにしても…。まあ、レベル2とは思えないステータスですが」

 生まれたてやからな、とアオイは思った。経験値はどうやら、猪との戦闘で得たようだ。曖昧に笑ってごまかしたアオイに受付係は、さらに赤くなりながら画面表示を切り替えてジョブ選択画面にした。

「ところで、ジョブは何にします?剣士とか騎士とか、お勧めですけど」

 お姉さんは、見た目だけでジョブを勧めてきている。でも、アオイとしては、役立つスキルを習得できるジョブにしたかった。

「うーん、そやなー、あ、お姉さん、このジョブの文字やけど光ってるのと暗いのと青いのはどう違うの?」

「光ってるのは、今、選べるジョブです。青いのは上級ジョブですから、基礎ジョブを極めないと選べません、あと、暗いのは、アオイさんには生涯選べないジョブです。ソーサラーとか、アオイさんに似合うのに、残念です」

 受付係のお姉さんは、何故か悔しそうに下唇を噛んでいる。

「魔力がないから無理なんやね。」 

 習得スキルを確認していると狩人の、獲物加工、料理、というのが目に付いた。

「あ、これええやん。必要やもんね、料理とか」

「狩人ですか?」

「うん。あ、もしかして一個選んだら、一生そのまま?」

「いえ、転職できます。転職してもスキルは、なくなりません」

「ほんじゃあ、狩人にする」

「…分かりました。狩人で、登録します。手数料が2プラタかかります」

「あ、しもた!文無しやった、あた…オレ」

「まあ!分かりました!私が立て替え、いえ、払います!」

 恐るべし男前の力!お姉さんは、自分の財布を取り出している。

「いやいやいや、それはあかんて。」

「私は、いいんです。お役にたちたいです!」

「そんな訳には!」

「ちょ、待てよ!」

 押し問答していると、ギルドにいた男の1人が割り込んできた。アオイのことを睨み上げてくるところを見ると受付係に好意を持っているらしい。

「あの、この男が持ってきたハバリを買い取ってやれば2プラタどころか2オロぐらいになるんじゃないのか?」

 反感を持っているようなのに親切な男だ。あの猪は、ハバリという名前の動物のようだ。

「…そうですね」

「あれ売れるの?登録料はろて、お釣りくる?」

「ああ、結構高値で、このギルドで買い取ってくれるぜ」

「それは、有り難いな。ご飯も食べたいし、宿屋に泊まるお金もないし」

「宿もご飯も私にお任せ下さっていいんですよ?」

「アリアちゃん、何てことを!」

 やっと受付係がアリアだということが分かった。

「アリアちゃん、あかんよ。会ったばかりの男に、そんな甘いことゆうたら、酷い眼に逢うよ?」

 人差し指をたてて、古典的仕草でメッとしたら、アリアちゃんは失神しそうになった。

「アオイさん!なんて紳士なの!」

「いや、アリアちゃん、こいつなんか言葉遣いもイントネーションも変だよ?紳士って感じじゃないよ?」

「ウトさんは黙ってて!アオイさん、ハバリを4オロで買い取ります!」

 アリアちゃんは、ささっとジョブを登録したあと、アオイに4枚の金貨を渡した。アオイは、そのうちの1枚をアリアに渡し、

「登録料受け取って」

 と言った。アリアは、お釣りとして銀貨を8枚アオイに渡し、両手で、受け取ったアオイの手を握り締めた。うっとりと見上げてくる。

(美味しいシチュエーションなんやけど、あたしは所詮中身がおばちゃんやからなぁ)

 アリアの両手をやんわり外し、アオイは、

「ギルドのことや、ジョブのことをいろいろ聞いておきたいけど、お腹すいて我慢できないから、とりあえず、また説明は明日してもらうわ。アリアちゃん、それでもいい?」

「もちろんです!明日、お待ちしてます!」

 アリアお勧めの料理の美味しい宿屋を教えてもらい、ギルドを後にした。 

 宿で宿泊手続きをしていると、にこにこ顔のアリアと、シブい表情のウトが入ってきた。

「アオイさん!ギルド加入のお祝いをしましょう!」

 ウトが運ばされてきたハバリの肉を宿のカウンターに載せて、アリアが宣言した。

続きは、ぼちぼち書いていきます。

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