第1話 一緒
生まれてすぐに、私は家族から捨てられた。
私が生まれた家はそこまで裕福ではなく、犬を飼う余裕が無かった。
同じ時期に生まれた子供は皆里親が決まったが、私は最後まで里親が決まらなかった。
そして、これ以上は面倒を見切れないということで、私は捨てられた。
段ボールの中に入れられ、私は路上に捨てられた。
最初は疑問だった。
なぜ私が捨てられないといけないの?
私は何も悪いことをしていないのに。
しかし、しばらくして、徐々に命の危機を抱くようになる。
このままでは死んでしまう。
もう、なぜこんなことになっているのかとかどうでもいい。
誰か助けてくれ。誰か、助けて欲しい。
けど、どんなに叫んでも、結局それは鳴き声にしかならない。
私の言葉は、道行く人々に届かない。
やがて雨が降り出し、いよいよ私は死を覚悟した。
喉は嗄れて、すでに誰も助けてはくれなかった。
このまま、人知れず死んでいくのだろうか。
そんな風に考えていた時だった。
「……犬……?」
頭上から、声が降って来た。
顔を上げると、そこには……一人の少女が立っていた。
……綺麗。
それが、私が彼女に抱いた感想だった。
綺麗。前に住んでいた家で見た人形のように、整った顔立ち。
肌も白くて、黒い髪がよく映える。
前に住んでいた家で手に入れた知識なので、正しいかは分からない。
でも、彼女が背負っている赤いものは、ランドセルというもので……あと、手に持っている黄色いのは……傘だ。
確か、ランドセルというのは、小学生という職業の人種だけが持つものらしい。
ということは、彼女は小学生をやっているのか。
そんな風に彼女を観察していると、相変わらず人形のように変わらない表情のまま彼女はしゃがみ、私の頭に手を置いた。
「……貴方“も”……一人ぼっちなの……?」
貴方……も……?
彼女の言葉の真意が分からず、私は首を傾げた。
すると少女は優しく笑い、私の頭をゆっくり撫でた。
「……私と……一緒だね……」
一緒……。
それはつまり、彼女も私と同じということ。
同じ……ということは、彼女も誰かに捨てられたのか?
いや、彼女は一人であることが同じだと言った。
つまり、彼女も私も一人なのだ。
彼女は……私と同じなんだ。
そう考えた瞬間、世界が煌いたような気がした。
私の世界の全てが、その少女になった。
この少女だけが……私を、認めてくれた。
生きていても良いよ、と。私は貴方と同じだから。
一緒に……生きていこう、と。
その日から、私はシロになった。
そのシロという名前が、彼女……岡井美雪から初めてもらったものだった。




