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犬の恩返し  作者: あいまり
黒田花織編
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第22話 報告

 告白の後は、椅子に二人で並び、手を繋いで座っていた。

 美雪さんの悲しそうな顔は、気のせいだったのだろうか。

 あれからはごく普通に笑い、接してくれた。


「あっ……」


 唐突に、美雪さんはそう声を漏らした。

 あまりに突然だったので私は少し驚いた。

 しかしその後、徐々に美雪さんの顔が徐々に青ざめていくのを見て、只事ではないことを知る。


「……美雪さん? どうしましたか?」


 そう聞きながら、彼女の顔を覗き込む。

 すると、ハッとした様子で目を見開いた美雪さんは、私の顔を見て小さく笑った。


「クロと二人きりだから、なんだか緊張してきちゃって……」


 そう答えた美雪さんの声は、強張り、震えていた。

 顔も未だに青いままだし、何より……手に、汗が滲んでいる。

 ……何かを、隠している。

 それは……白田さん関連だろうか。


 そういえば、と少し考える。

 白田さん曰く、美雪さんは私と付き合ったら白田さんが成仏すると考えているらしい。

 だから、もしかしたら白田さんが今頃成仏しているのでは、と考えているのかもしれない。


「美雪さん……?」


 試しに名前を呼んでみる。

 すると彼女の体はビクンッ! と面白いくらい震えた。

 その後すぐに両手をブンブンと振りながら「な、なんでもないよ!」と答えた。

 ……分かりやすいなぁ……。


「……まだ何も聞いていませんが?」

「うッ」


 呻き声を発しながら微かに視線を逸らす美雪さん。

 それに私は笑いつつ、首を傾げてみせた。


「どうしましたか? 何か……ありましたか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……まぁ、色々……」

「……?」


 不思議そうにして見せるが、大体分かる。

 白田さんは……大丈夫だと思う。

 彼女曰く、私と美雪さんが付き合うことで彼女の未練は解決しないらしいから。

 ……じゃあ、彼女はどうやったら、成仏できるのだろう?

 そう思っていた時、美雪さんがポケットから何かを差し出してくる。

 これは……ハンカチ?


「こ、これ!」

「はい……?」

「私の汗で汚れちゃっただろうから……これで拭いて」


 そう言って渡されたのは、黒地に白い犬が描かれたハンカチだった。

 ……本当に、犬が好きなんだな……。

 なんだか少し可愛らしく思えて、私は少し笑った。


 何より……きっと彼女は、話題を変えたいんだ。

 まぁ、これ以上話しても答えは出ないだろうし、私は素直にハンカチを受け取っておいた。


 その時、ゴンドラの扉が開く。

 下りる際に美雪さんが転びそうになったので支えた。

 しかし、美雪さんはすぐに私の腕を振り払い、次に下りて来たゴンドラを見た。

 やがて扉が開き、そして……白田さんが下りて来た。


「美雪~!」


 嬉しそうに笑って手を振る白田さん。

 いつも見ている光景のハズなのに、美雪さんはそれを見ただけでへたり込んだ。

 ……そんなに怖かったのだろうか。

 白田さんがいなくなるのが。

 胸が痛くなるのを感じながら、私は白田さんと共に美雪さんを立たせた。


 それから少し遅れてやってきた美香さんを見て、美雪さんはようやく落ち着く。

 真剣な、何かを決意したような表情で白田さんと美香さんを見る。


「ねぇ、シロ、美香。……報告があるんだけど」


 そう言って、私の手を握る美雪さん。

 これは、まさか……。

 何が起こるのか、いち早く察知した私は、血の気が引くのを感じた。

 しかし、私が止めるより先に、美雪さんは続けた。


「実は、私とクロは……今日から、付き合うことになりました」

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