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犬の恩返し  作者: あいまり
黒田花織編
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第19話 不安

 あれからは特に何事もなく、遊園地を満喫することが出来た。

 しかし、遊びながらも、私の心の中で不安は渦巻いていた。


 私は美雪さんに相応しくないのではないか。

 私に、美雪さんを好きになる資格なんてないのではないか。


 その悩みは私の中で巡り、終わりの無い渦となっていた。


「わぁ~……おっきい~!」


 白田さんの歓声が聴こえ、私は顔を上げた。

 そこには、巨大な観覧車が佇んでいた。

 私も実物を見るのは初めてなので、言葉を失った。

 その時、袖を引かれた。


「クロ。チケット買って並ぼう?」


 そう言って美雪さんは微笑む。

 彼女の言葉に私も笑い返し、「はいっ」と頷いた。

 それからチケットを買い、列に並んでいる間も、観覧車に目を奪われていた。


「あら……?」


 その時、なんとなく視線を下ろした時、列の数組前に見覚えのある人影がいた。

 彼女は確か……一組の……。

 どうやら今日は彼女さんと一緒に来ているらしく、大学生くらいの女性と腕を組んで親しげに話している。

 どちらも美女で、お似合いのカップルと言った感じだ。


「うわぁ……」


 その時、美雪さんが若干引いた様子で声を漏らした。


「……あれ、隣のクラスの子ですよ」

「えッ」


 まさか同じ学校……しかも同級生だとは思っていなかったようだ。

 驚いたように目を丸くし、前に並んでいる二人を見ている。

 前に隣のクラスに彼女持ちの子がいる。

 その子のことを思い出した様子の美雪さんに、私は「えぇ」と頷く。


「やっぱり、あの、クロが前に話してた子だよね?」

「はい。一組の」

「名前は何だっけ……?」


 そう言って思い出そうとする美雪さん。

 しかし、その間に二人組の順番が来て、ゴンドラに乗る。

 どうやらそれに思い出すのを諦めた様子で、美雪さんは腕を下ろす。

 ちなみに余談だが、彼女の苗字はかなり珍しい感じの苗字だ。


「それにしても、あんな感じの見た目なんだ。結構可愛い見た目だよね」

「……そうですね」


 美雪さんの言葉に、私は暗い声で返した。

 なぜか、美雪さんが他の子を褒めると、少し不快になるのだ。

 不愉快な気持ちになり、私は口を噤んだ。

 すると美雪さんも特に何も言わずに、前方を見た。


 ……やってしまった。

 感じ悪いと思われただろうか。

 でも、仕方がないじゃないか。

 胸がズキズキして、すごく……辛いのだから。


 そう思っている間に、私達が乗るゴンドラがやって来る。

 スタッフの方が扉を開けるので、乗ろうとする。

 その瞬間、背中を押された。


「わ……!?」


 声が漏れる。

 振り向くと、扉が閉まった。

 まさか……白田さん?

 でも、なんで?

 呆然としている間に、ゴンドラがゆっくりと上昇していった。

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