第11話 尋問
業間休憩の合間を縫って、私は白田さんを呼び出した。
その時美雪さんは自分の席で眠っていたので、それには気づかなかった。
人通りの少ない場所に白田さんを連れて行くと、白田さんは不思議そうな顔で私を見た。
「黒田さん……どーしたの?」
「……白田さん。貴方は……何を隠しているのですか?」
「え?」
キョトンとした顔で首を傾げる白田さん。
それに、私は彼女と距離を詰め、彼女の背中を壁に押し付けた。
「……!?」
「答えて下さい。貴方は……何者なんですか?」
私の言葉に、白田さんは笑みを引きつらせた。
しかし、それでもすぐにヘラッと苦笑いを浮かべながら、「何言ってるのさ~」と笑う。
「何者って、私は私。白田仔犬だよ~」
「そういうことを聞いているのではなくて……私は……!」
「聞きたかったことって、それだけ? じゃあ私もう行くね~」
そう言ってどこかに歩いて行こうとする白田さん。
私は咄嗟に彼女の腕を掴み、叫んだ。
「白田さんは、美雪さんのことが好きなんですよね!?」
そう聞いた瞬間、彼女は動きを止める。
どうしたのだろうかと思っていた時、彼女が目を伏せた状態でこちらに振り向いた。
「……あーもううっさいなぁ」
ボソッと、そんな言葉が聴こえた。
かと思えば、突然私は突き飛ばされ、バランスを崩す。
なんとか立て直し前を見ると、そこでは、その表情を怒りに染めながら私を睨む白田さんがいた。
「一々しつこい……何そのデリカシーの無さ。異常かよ」
「……それが貴方の本性ですか」
不思議と、冷静だった。
白田さんに裏があることは予想していたし、怒らせれば自然とこういう行動に出るだろうと想像していたからだろうか。
私の言葉に、彼女は忌々しそうに目を逸らし、舌打ちをした。
「……なぜ、美雪さんの前では猫を被っているのですか?」
「……アンタには関係ないでしょ」
「そんなことは……!」
「私とアンタは他人でしょうが!」
白田さんの叫びに、私は唇を噛みしめる。
彼女の本性を引きずり出すことは出来た。
しかし、肝心の彼女の正体には……まだ近づけていない。
だから、さらに……踏み込む。
「そうですね……では、私は先に教室に戻ります」
「……」
「……美雪さんに、白田さんの本性について話してきますね」
「……は!?」
「私と白田さんは他人ですから、白田さんがどうなろうが関係ないので。では」
そう言って教室に向かって歩こうとした時、腕を強く掴まれた。
見ると、白田さんが必死な表情で私の腕を掴んでいた。
「……何が目的……?」
怒りを噛み殺したような表情で言う白田さんに、私は微笑んで見せた。




