第6話 住所
放課後になった。
シロはこれまた色々な人から声を掛けられていたが、相変わらず私一筋なシロはその全てを断ってくれた。
それから、二人で職員室に行き、担任の先生の机に向かう。
机で作業している先生に、代表して私が声を掛けた。
「あの、先生……」
「……ん? 何だ?」
「えっと、シロ……白田さんの住所を聞きたくて」
「はぁ?」
呆ける先生は、シロに顔を向ける。
すると、シロはニカッと笑った。
「私ねー、おうちの場所分かんないのー」
「はぁ……?」
「えっと……まだこの町に来たばかりで、家の場所がよく分からないみたいだから、送って行きたくて……」
私の言葉に先生は困ったように頭を掻いた。
「教えるも何も……そもそも岡井。お前と同じ家じゃないか」
「へ?」
つい聞き返すと、先生は苦い顔で生徒名簿を取り出し、住所が書いてあるページを開く。
「個人情報だから、あまり他の生徒のは見るなよ」
その言葉に従い見てみると、確かに私の住所と、シロの住所は一致する。
どういうことだ……?
そう不思議に思っている間に、先生はさらに大きくため息をついた。
「全く、その年齢で認知症か? まぁ、酷くなったら病院にでも行きなさい」
「は、はい……ご迷惑をお掛けしました」
そう言いつつ、シロを促して職員室を出た。
私は頭に手を当て、ため息をつく。
「どういうこと……?」
「美雪どーしたの~? 顔色悪いよ?」
顔を覗き込んでくるシロに、私は「大丈夫だよ」と言って笑って見せた。
「ちょっと疲れちゃっただけ。……もう、大丈夫」
「ふーん……それで、私のおうちはどこ?」
キラキラした目で聞いてくるシロに、私はため息をつく。
相変わらずこの子は単純なことで……。
私は鞄を肩に掛け直し、口を開いた。
「えーっと、どうやらシロの家は私の家みたいです」
「えっ! 本当!?」
「うん。だから……」
「ゴー!」
シロは上機嫌に私の腕を掴むと、笑顔で歩き出す。
私はそれに動揺するが、私の腕を引くシロがとても楽しそうなので、良しとしよう。
問題は……人気者のシロと一緒にいる私に物凄く大量の視線が注がれていることくらいか。
もし今周りにいる人全員に視線で人を殺せる能力があったら、今頃私は即死だ。
「えっへへ~。美雪と同じおうち~」
しかし、鼻歌混じりにそう言いながら歩くシロを見ていると、今更断ることもできない。
居心地の悪さを感じつつも、私はすぐにシロの隣に並び、彼女の手を握った。
「張り切るのも良いけど、シロ、家の場所分からないでしょ」
「うっ……散歩コースだったら、なんとか……」
「私の通学路、散歩コースと重ならないよ?」
「そんなぁ!」
「いつも行ってた公園、学校と逆方向なんだけど」
私の言葉に、シロはショックを受けた表情を浮かべる。
彼女の反応に私はつい笑ってしまった。