第14話 二人きり
「わぁ~……おっきい~!」
観覧車を見上げた仔犬お姉ちゃんは、そう言って目を輝かせた。
それを見て、お姉ちゃんは顔を綻ばせる。
あれから、特に目立つ問題も起こらず、無事に遊園地を楽しむことが出来た。
そして、最後のシメとして、皆で観覧車に乗るのだ。
列に並んでいると、花織お姉ちゃんが「あら……?」と声を漏らした。
花織お姉ちゃんの視線を追ってみると、そこには、二人の女が仲睦まじく立っていた。
どちらもすごい美人。
ていうか、あの腕の組み方……。
……あの二人、まさか、そういう関係……。
そして所々聴こえるお姉ちゃんと花織お姉ちゃんの会話で、それが確信に変わる。
しかも、片方はお姉ちゃん達の同学年らしい。
そういえば、彼女がいる人がいるって噂あったなー。あの人達なのかなー。
しかし……と、私は隣にいる仔犬お姉ちゃんに視線を向けた。
そこでは、嫉妬に近い目で前方をただジッと見ている仔犬お姉ちゃんの姿があった。
ヤバい、聞くのが怖い……そして仔犬お姉ちゃんは誰に嫉妬しているのだろう……。
花織お姉ちゃん……では、無い気がする。
今日一緒にいて分かったのだけれど、花織お姉ちゃんとお姉ちゃんがイチャイチャする分は構わないらしい。
そうなると、現在お姉ちゃんの視線を一人占め? してるあの二人組だろうか。
美人だし。
そんな風に緊張感漂う空気を感じていた時、私達の番になる。
前に並んでいたお姉ちゃん達が乗ってから、私と仔犬お姉ちゃんが乗る……ハズだった。
しかしそこで……仔犬お姉ちゃんは、お姉ちゃん達の背中を押してゴンドラの中に詰め込む。
突然のことに困惑している間にゴンドラの扉が閉じ、上昇していく。
「楽しんで~」
満面の笑みで手を振る仔犬お姉ちゃん。
固まっていると、次のゴンドラが来る。
すると彼女は私の手を引き、笑顔を浮かべた。
「乗ろ? 美香ちゃん」
「う、うん……」
仔犬お姉ちゃんに促されるまま、私達は観覧車に乗る。
狭いゴンドラに二人きり。
中々緊張するシチュエーションだが、仔犬お姉ちゃんが足を組んで真っ直ぐ私を見ているせいで、ドキドキとは別の緊張感が漂っている。
「えっと……仔犬お姉ちゃん?」
「……」
「ホラ、景色綺麗だよ! 人が虫のようだ~なんて……はは……」
「……」
なんとか場を和ませようと景色を見ながら明るく振る舞ってみるも、効果は無い。
私は自分の頬に冷や汗が伝うのを感じ、速やかに自分の席で縮こまる。
「美香ちゃんってさぁ……私のこと、好きなんだよね?」
突然そんな風に聞かれ、私は弾かれたように顔を上げた。
見ると、そこには冷たい眼差しで真っ直ぐ私を見つめている仔犬お姉ちゃんの姿があった。




