第11話 豹変
ジェットコースターにより、案の定お姉ちゃんは朝食をその……無下にすることになった。
エチケット袋を口元に当てさせつつ、ジェットコースターの近くにあったトイレに連れ込み介抱した。
その時トイレにいた女の子達の憐れむような目が忘れられない。
……忘れよう。
「み、美雪まさかあんなことになるなんて……わ、私のせいかな……」
そして、お姉ちゃんの気遣いにより、私と仔犬お姉ちゃんでしばらく遊ぶことになったのだが、相変わらず仔犬お姉ちゃんはお姉ちゃんの心配ばかりしている。
……そんなに、お姉ちゃんのことが好きなんだね……。
「そんな、仔犬お姉ちゃんのせいじゃないって。私だって、お姉ちゃんが乗り物弱いの、もう少し気を遣っておけばよかったなって思うし」
「で、でもぉ……」
「ははっ、気にしたら負けだよ?」
私の言葉に、潤んだ目で目を伏せる仔犬お姉ちゃん。
うーん……流石に少し言い過ぎたか?
そう思い頭を掻いていた時だった。
「あれ、君達可愛いね?」
そんな声がしたのは。
「え……?」
「ん? 二人ともJC?」
「いや、えっと……」
「へぇ~。俺等高校生なんだけど、良かったら一緒にどう?」
チャラい、という言葉を擬人化させたような相貌の男子二人がそう言ってくる。
年齢は高校生くらいか……しくじったなぁ……。
そりゃ仔犬お姉ちゃんは超美少女だし、声を掛けられるのも不思議ではない。
「一緒に、って?」
そう言って不思議そうに首を傾げる仔犬お姉ちゃん。
ヤバい。純粋な仔犬お姉ちゃんなら、言葉巧みに騙されてついて行っちゃうかもしれない。
ここは、私がなんとかしなければ。
「あ、あの……!」
「残念ですけどぉ……」
突然聴こえた声に、私はビクッと肩を震わせた。
今の声、誰……!?
そう思っていた時、仔犬お姉ちゃんに腕を絡まれた。
「わ……!?」
「私達、“こういう関係”なので……お引き取り願えますか?」
妖艶な声。大人びた声。
それを、目の前にいる白髪の少女が発している事実を、私はしばらく受け止めれなかった。
「そういう……って、マジか」
「し、失礼しました!」
そんな仔犬お姉ちゃんと私を交互に見て、二人は慌てて走って逃げて行った。
男二人の後ろ姿が見えなくなってから、ようやく仔犬お姉ちゃんは私から離れた。
「ごめんね! こうするしか方法見つからなくて!」
「え、あ……うん」
まるで人が変わったように謝る仔犬お姉ちゃんに、私は曖昧な返事しかできない。
いや、この仔犬お姉ちゃんはいつもの仔犬お姉ちゃんだ。
天真爛漫で、無邪気で明るくて可愛い、いつもの仔犬お姉ちゃん。
じゃあ……さっきのは一体誰?
大人びて、妖艶な雰囲気を漂わせた少女は、一体……誰?
「こ、仔犬お姉ちゃ……」
「ねぇ……美香ちゃん?」
仔犬お姉ちゃんの声に、私は足を止める。
すると、彼女はクスッと笑って、ゆっくりと私の方を振り向いた。
艶やかな笑みを浮かべ、人差し指を口に当てる。
「私……結構演技、得意なんだ」
このこと、美雪達には内緒ね……と。
目の前にいる少女は、言ったんだ。




