第2話 書き換え
―――世界は書き換えられる。
別に世界全ての人間の記憶を書き換える必要はない。
白田仔犬という少女の存在を、必要最低限な人間の記憶に埋め込めばいい。
対象は岡井家。
岡井 光子。四十七歳。
岡井 道也。四十八歳。
岡井 美香。十四歳。
この三人に、白田仔犬の存在を知らしめろ。
全ては、一匹の獣の願いのために―――。
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私は自分の名前が好きじゃない。
だってそうでしょう? 名前に「美」なんて字が入るんだよ?
顔が美しくないといけないような名前。プレッシャーが半端じゃない。
美しい香りなんて、私に一番似合わない名前だ。
それに比べて、私の姉である岡井 美雪は、名は体を表すと言っても過言ではないほどに美麗な見た目をしている。
本人は無自覚なようだが、色白の肌に整った顔立ち。
そこいらの女の子よりは可愛い見た目をしていると思う。
それでも男子から告白とかをあまりされない理由は、彼女の『目』に原因があると思う。
まるで世界の全てに辟易としているような目。
目は口程に物を言う、と言うが、彼女の場合それは役に立たないと思う。
おまけに、表情自体も能面のように変わらないため、不気味さが凄い。
そんなお姉ちゃんだけど、一人だけ彼女を笑顔に出来る相手がいる。
その人の名前は白田仔犬ちゃん。
お姉ちゃんと同い年で、お母さんの妹である叔母さんの娘さん。
よく家に遊びに来ていて、すごく可愛い子。
生まれつきの体質か、髪は白い。
でもそんなの関係無しに、いつも天真爛漫でお姉ちゃんの周りをチョロチョロしてる子。
私ともよく仲良くしてくれて、明るくて活発で裏表のない良い子だ。
……いつからか、そんな仔犬お姉ちゃんに惹かれていた。
自然と目で追うようになり、彼女が家に来ると聞かされる度に喜んだものだ。
最初は友達とかイトコとか、そういう意味での好きだと思った。
でも、お姉ちゃんと二人ではしゃいでる仔犬お姉ちゃんを見て、胸が痛くなった。
急に仔犬お姉ちゃんが来られなくなった時は、悲しくて泣きじゃくった。
それが恋だって気付いたのは、小学五年生の時だった。
それから二年間は、仔犬お姉ちゃんへの気持ちを押しこめた。
だって、仔犬お姉ちゃんに告白なんてしたら、迷惑掛かりそうだし。
この気持ちはひた隠して……否、諦めなければならないと思っていた。
でも、やはりそう簡単に諦めきれるものでもなく、ズルズルとその感情を引きずったまま二年程度が過ぎて行った。
そしてある日、転機が訪れる。
母方の叔母さん―――仔犬お姉ちゃんのお母さん―――がしばらくの間外国に出張に行くことになる。
しかし仔犬お姉ちゃんは日本に残りたいと言い、確かにいきなり外国に連れて行くのは酷ではないかという話になった。
そこで、私達の住む岡井家に住まわせることになった。
そして……お姉ちゃんの学校に転校した。




