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犬の恩返し  作者: あいまり
岡井美雪編
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第4話 恩返し

 先生のフォローがあり、なんとか朝のHRが過ぎ去った。

 業間休憩になると、すぐに私は白田さんもといシロを教室から連れ出した。

 教室のすぐ隣にある階段を下りて一階に行き、そのすぐ隣にある細い通路の突き当たりにある扉から外に出る。

 人目に付かない場所に出て、私はようやく一息ついた。


「……それで、シロ……なんだっけ?」

「うん。そうだよ!」


 嬉しそうに答えるシロ。

 目はキラキラと輝き、恐らく今彼女の体が犬だったら、尻尾が大きく揺れていることだろう。

 少なくとも、彼女が嘘をついている可能性は低い。

 だって、そもそも飼い犬の話自体誰かに話した覚えは無いし、こんな真っ白な髪をした美少女、忘れたくても忘れられないだろう。

 でも、だからって……。


「私の中でのシロは犬なんだけど……」

「うん。犬だったよ!」

「……貴方みたいな可愛い女の子じゃないんだけど」

「えへへ~」


 可愛いって言ったからか、嬉しそうにはにかむシロ。

 いや、今はそんな場合じゃない。

 私はため息をつき、頭を押さえて首を横に振った。


「色々聞きたいことがあるんだけど、まず、なんでそんな姿に?」

「んっとねー、死んじゃった時にねー、すごく偉そうなオジサンが出てきてねー、動物の身でそれだけ未練を持った者は初めて見たー、お前にチャンスをやるー……って言われたの」

「はぁ?」


 それからシロに詳しく話を聞いたところ、どうやらシロが死んだ時に神様的な人が現れて、動物にしてはシロがこの現世に強い未練を持っており、そこまで強い未練を持った獣は初めてだったらしい。

 それがどうやら神様のお気に召したようで、その未練を解決させるべく、人間としてこの世に転生? させたらしい。


「まぁ、大体の事情は分かった。じゃあ次の質問。シロは、今どこでどんな生活をしているの?」

「えっとねー、おうち無いよー」

「……は?」


 想定外の言葉に、私はつい聞き返す。

 すると、シロはキョトンとした。


「キョトン……じゃなくて、おうちが無い?」

「うん。なんか、気付いたらこの学校の転校生って感じになってたんだもん。だからおうちとかもよく分かんなーい」


 あっけらかんとした表情で言うシロに、私は開いた口が塞がらない。

 ひとまず、これは担任の教師に聞くしかないか……。


「それじゃあ最後の質問。……シロの未練は何?」


 私が聞くと、シロはキョトンとした表情をした。

 しかし、すぐに満面の笑みになる。


「美雪!」

「……は?」


 突然名前を呼ばれ、私は首を傾げる。

 そんな私に、シロは続けて口を開いた。


「私ね、美雪のこと大好きだから! それに、美雪にはたくさんお世話してもらった! だから、私、美雪に何か恩返ししたいの!」

「……鶴の恩返し?」


 一瞬、私の脳裏に、有名な昔話が浮かんだ。

 鶴が罠に掛かっているのを助けると、夜に美女になって泊めてくれと頼む。

 そしてとある部屋に入り、「絶対にこの扉は開けないでください」と言い、自分の羽で機を織る。

 その機を売って家は金持ちになる。しかし、ある日好奇心に負けて扉を開けてしまうと、そこにはなんと鶴がいるではないか。

 鶴は姿を見られてはもうここにはいられないと言い、飛んで帰ってしまう。

 これが、私の知っている鶴の恩返しの物語だ。


「つる~?」

「……いや、シロは犬だから、犬の恩返しか……」


 まさかそんなおとぎ話のようなことを自分が体験することになるとは……。

 とはいえ、ひとまずこのまま放置するわけにはいかない。

 しかし、シロに出来る私への恩返しとは一体……。

 そう思っていた時、扉が開いた。


「あら? 話し声が聴こえると思ったら……」

「黒田さん!」


 そこにいたのは、クラスのマドンナ黒田さんだった。

 彼女は不思議そうに私とシロを交互に見てから、優しく笑った。


「もうそろそろ、授業が始まりますよ?」

「あ、そっか……って、わざわざ迎えに来たの?」

「いえ、ちょうど図書館から戻るところだったんです。そうしたら、話し声が聴こえたので」

「そういうこと……ごめんね、わざわざ迎えに来てもらって」

「いえいえ。では、お先に」


 そう言って会釈し、黒田さんは去っていく。

 相変わらず綺麗な人だなぁ……ていうか、初めて言葉なんて交わしたかもしれない。

 未だに鼻孔に残る甘美な香り。

 黒髪を揺らしながら遠退いて行く後ろ姿に、私はしばし見惚れてしまった。


「……美雪」


 その時、名前を呼ばれた。

 振り向くと、突然シロが私に顔を近づけ、手を握って来る。


「分かったよ! 美雪! 私が美雪に出来ること!」

「へ?」

「美雪、あの人のこと好きなんでしょ!?」

「は!?」


 突然放たれた言葉に、私は固まる。

 そんな私にシロはニヒッと悪戯っぽく笑った。


「だから、私、美雪があの人と一緒になる手助けする! それが私の恩返し!」

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