第27話 コンビニ
「違う……思っていたのと違う……」
帰り道を歩きながら、シロはそう呟く。
私はそれに「ふーん」と返しながら、首の後ろを掻く。
「ふーん……って、興味無いの!?」
「別に……あ、そこのコンビニで何かスイーツでも買う? 気晴らしに」
「うんっ! ……ってそうじゃなくて!」
文句を言うシロを無視して、私はコンビニに入る。
すると、頬を膨らませながらシロが付いてくる。
……うん。すぐにペットフードのコーナーに行くのは止めようか。
ドッグフードに目をキラキラさせるシロの襟首を掴んで、私はスイーツを売っている場所に連れて行く。
「ホラ、シロ。何か食べたいのある?」
「ビーフジャーキー」
「ペットフードコーナーを見ながら言わないの」
「ぶー」
不満そうに頬を膨らませながら、ようやくシロはスイーツのコーナーを見た。
しかし、目につく良いものが無かったのか、少し眉を潜めた。
うーん……だからって、人間であるシロに犬用ビーフジャーキーをあげるのはなぁ……。
……うん? 犬用……?
私は辺りを見渡し、辺りを見渡す。
周りに目ぼしいものはない。仕方がないので、目当てのものを探すために、コンビニ内を歩く。
「……美雪?」
私の行動にシロも顔を上げ、テケテケと私の後を追いかけてくる。
まぁそれは想定済みなので、私は気にせず歩いて行く。
しばらく辺りを見渡していると、目的のものを見つけたので、私は早歩きでそちらに向かった。
「美雪~?」
ずっと黙っていたからか、シロは不思議そうな顔で私を見た。
そんな彼女に、私は手に取ったばかりの『ソレ』をシロに見せた。
彼女はそれを見た瞬間、満面の笑みになった。
「美味しい~!」
コンビニから出た道を歩きながら、シロはそう言って頬を押さえた。
美少女がそんな素振りをすると中々絵になるとは思う。
その手に持っているものがビーフジャーキーの袋じゃなければ。
「良かったね、シロ」
「うんっ! 美雪もいる?」
「うーん……いらない」
私がそう返して見ると、シロはあからさまに落ち込んだ。
しかしすぐに笑顔になって、またビーフジャーキーを齧る。
「それで? 結局、シロは私とクロに何をしてほしかったの?」
なんとなくそう聞いてみると、シロは口の中でビーフジャーキーをモゴモゴさせた後で呑み込み、口を開いた。
「えっとね、美雪と黒田さんには、もっとこう……体を動かして遊んで欲しかったの」
「体を動かして?」
「というか、えっと……外とかに出て何か遊んだら、きっと楽しいかなって。そしたら、二人はもっと仲良くなるんじゃないかなって思って」
「へー」
外で遊ぶ、か。
でも、シロが言っているのは、なんていうか……公園でやっていたボール遊びのことを言っている気がする。
流石にあれをクロにやるのは……あ、私がボールを取りに行けば良いじゃない。
冗談はさて置き。
「じゃあ何をすれば良いの?」
「うん……だから私なりに少し考えてみたんだけど~」
そう言うとシロはビーフジャーキーを空中に放り、それをパクッと咥え、ニカッと笑った。
「遊園地に行ってみるのはどうかな、って」




