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犬の恩返し  作者: あいまり
岡井美雪編
26/132

第26話 トランプ

 翌朝になると、シロはすっかり元気になっていた。

 そりゃあもう、昨日の落ち込み具合が嘘のように。

 彼女の立ち直りの速さはギネス認定されてもいいのではないかと真面目に考えた。


「美雪っ! お待ちかねの恩返しステップ3だよ!」

「誰も待ってないんだけど」


 冗談半分でそう返すと、シロの顔が悲しそうに歪む。

 慌てて「嘘だよ。すごく楽しみ!」と訂正すると、満面の笑みになった。

 もし大人になったら詐欺とかにあっさり引っ掛かりそうで不安だ。

 ……いらぬ心配だけれど。


「それで? 次はどんな感じの恩返しなの?」


 私がそう聞いてみると、シロは嬉しそうに笑って、人差し指を立てた。


「次は、二人で遊んでみよう!」



「……で、なぜ一緒にトランプをすることになるのですか?」

「さぁ。なんででしょう」


 シロの一緒に遊ぼうという意見に従って、二人で遊ぼうとクロに言った結果、トランプをすることになった。

 トランプ自体は登校途中で百均で買った。

 そしてそれを持ってクロをけしかけた結果、現在昼休憩に二人でトランプをしている。

 何をしているかと言うと、真剣衰弱だ。


「……あ、また揃いました」

「……」

「おぉ。またですね」


 そしてクロの異様な強さ。

 現在、私は5ペア程度しかとれていないのに対し、クロはすでに20ペアくらい取っている。

 トランプは全部で52枚+ジョーカー2枚の54枚。

 つまり、28ペア取られれば負けてしまう。

 ……非常にまずいぞ、この状況は。

 そう思っていると、クロがミスをした。

 出したのはスペードの6とダイヤの3だった。


「あら……では、次は美雪さんですね」

「う、うん」


 ここで外すわけにはいかない。

 慎重に一枚を捲ると……クラブの3だ!

 私はすぐに、先程クロがミスしたダイヤの3を捲り、その二枚を回収する。

 続けてカードを捲ると……ハートの5……。

 5……たしかこの辺りで出た気がしたんだけど……。

 迷いながらカードを捲ると、クラブの6だった。

 意気消沈している間に、速やかにスペードの6とクラブの6が回収される。


 そのまま特に盛り上がりを見せることなく、神経衰弱はクロの圧勝で幕を下ろした。

 この程度で本当にクロと距離を縮められたのか、と、ずっと遠目にこちらを見ていたシロを見る。


「違う……こんなの思っていたのと違うよ!」


 どうやら不満がある様子。

 私とクロがキョトンとした顔でそれを見ていると、シロは私達の前まで来て、トランプの乗った机をバンッと叩いた。


「私はもっとこう……一緒に遊んで、笑い合って、もっと距離を縮めて欲しかった……」

「白田さんの言っていることがよく分からないのですが」

「あー、うん。気にしなくて良いよ」

「なんですと!?」


 シロがそんな反応を示すが、関係無いね。

 いや、だってなんでシロのこと説明しようとしたら、自然と私がクロのことを好きって話に繋がるし。


 正直、恋愛の感情というもの自体はよく分からないが、私はクロのことが好きだと思う。

 一緒にいると楽しいし、彼女と話したいと思うし、彼女を見ていると癒される。

 好きな人といると安心するって話を聞くし、恐らく恋だと思う。

 本当に、よく分からないけど。


 だからこそ、そう言った恋心はあまり知られたくないものだ。

 そりゃあ、シロを成仏させるためには、いずれはクロに告白をしないといけないってことは分かっているけどね。

 でも、やっぱり、まだそれは早いというか……。

 そう一人でウダウダ考えていた時、シロは不満そうにトランプの一枚を摘まんだ。


「そもそも、これなぁに? 私は一緒に遊ぶって言ったんだけど」

「ん? トランプだよ? 室内でやるゲームみたいな」

「ゲーム?」

「うーん……シロも一緒にやってみる?」

「うんっ!」


 それから一緒に仲良くババ抜きをした。

 シロにポーカーフェイスなんてものは不可能だということが分かった。

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