第17話 屋上
いつものように午前中をやり過ごし、昼休憩になる。
授業が終わった途端シロが私のことを急かすので、ひとまず彼女に付いて行く。
なぜかは分からないが、弁当を持って。
それからシロに連れられて来た場所は、学校の屋上だった。
「シロ……なんでこんな場所に?」
「んっふふ~。まず黒田さんと仲良くなるためのステップ1! 一緒にご飯を食べよー!」
十月の寒風に吹かれながら、シロは堂々とそう言い放った。
彼女の言葉に、私は「はぁ!?」と聞き返す。
「何言ってんの、シロ……」
「何って、そのままの意味だよ~?」
「だからって……」
しかし、咄嗟に言い返したものの、言われてみると、正論な気もしなくもない。
一緒に昼食を食べれば、一気に距離が縮まる気もする。
でも、だからって……。
「なんで屋上……」
「美雪がなんで黒田さんと仲良くならないのかな~って考えたらね、美雪、周りの人の目が気になるんじゃないかなって思って」
シロの言葉に、私は、「周りの人の目?」と聞き返した。
私の言葉に、シロは大きく頷いた。
「うんっ。だから、ここなら誰にも見られないよ?」
「そんなっ……そもそも、周りの人なんかっ……」
そこまで言って、私は言葉が詰まった。
周りの人の目なんか気にしていない。そう思っていた。
しかし、脳のどこかにいるもう一人の自分が言う。
気にしているでしょ? と。
言われてみれば、そうだ。
美人過ぎるせいで周りに疎まれている黒田さん。
彼女と仲良くなると、彼女を疎んでいる人から目を付けられる。
そして、彼女同様、孤立してしまうだろう。
今まで周りに合わせて一人にならないようにしてきた。
だから、自分があのクラスという集団から離れることが怖いのだ。
そして、黒田さんにも裏切られたら、それこそ私が孤立する。
だから、話しかけられずにいた。
「美雪?」
「……確かに、私、結構周りを気にしてたかも」
私の言葉に、シロは「でしょ!?」と嬉しそうに言う。
彼女の言葉に私は頷くと、シロは「えへへっ」と笑った。
「だからね、ここで二人でのんびりお喋りしながら、ご飯食べてみたらどうかなって!」
「それは良いけど……流石にいきなり二人きりは……」
「じゃあ私黒田さんのこと呼んでくるね!」
「あ、ちょっと!」
私が止めるより先に、シロは校舎の中に駆けて行く。
一人きりになった私は、適当に腰掛けられる場所を探してみた。
しかし、良い場所が無かったので、仕方なく床にハンカチを敷いてそこに座った。
少しして、屋上に出る扉が開いた。
「あら? 岡井、さん?」
そう言って屋上に来たのは、黒田さんだった。
彼女の顔を見た瞬間、私の心臓が跳ねあがり、私は咄嗟に立ちあがった。
「あ、く、黒田さん……! どうして、ここに?」
「白田さんに一緒にお昼ご飯を食べようと誘われて……それで、美雪を探しに行くから先行ってて、と言われました」
「あ、そう……」
私の返事に、黒田さんは「変わった人ですね、彼女は」と言って笑った。
その笑顔は、すごく可愛かった。




