表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬の恩返し  作者: あいまり
白田仔犬編
114/132

第28話 微笑

 業間休憩の最中に、私は黒田さんに呼び出された。

 美雪も付いて来るのかと思ったが、美雪は自分の部屋で寝ていて気付かなかったし、起こすのも申し訳なかったので、放置。

 黒田さんに連れられて人通りの無い場所に連れてこられると、彼女は私を見た。

 恐らく、ここで話をするつもりなのだろう。

 主導権を奪われるのは極力避けたい。

 私は先手を打つことにした。


「黒田さん……どーしたの?」


 いつもの可愛い可愛いシロちゃんを演じながら、私はそう聞いてみる。

 すると黒田さんは私の目を見て、口を開いた。


「……白田さん。貴方は……何を隠しているのですか?」

「え?」


 突然の質問に、私は固まる。

 何を……隠している……?

 まさかと思うが、彼女は……私の本性に気付いている……?

 いや、それだけならまだマシだ。

 もしも元犬だということも知られていたら……かなりマズイ状況かもしれない。

 そう思っていた時、突然私は黒田さんに肩を掴まれ、背中を壁に押し当てられた。


「……!?」

「答えて下さい。貴方は……何者なんですか?」


 冷たい声と共に、花のような匂いが鼻孔をくすぐる。

 私が、何者なのか。

 本当に、彼女はどこまで勘づいているのだ?

 そう思いつつも、私は笑みを引きつらせ、「何言ってるのさ~」とはぐらかす。


「何者って、私は私。白田仔犬だよ~」

「そういうことを聞いているのではなくて……私は……!」

「聞きたかったことって、それだけ? じゃあ私もう行くね~」


 そう言って手を振りつつ、私はその場を離れようとする。

 すると黒田さんは私の腕を掴み、声を張り上げた。


「白田さんは、美雪さんのことが好きなんですよね!?」


 ……え?

 は、え?

 まさかの言葉に、私は体を動かすことすらできなかった。

 そりゃあ確かに、私は美雪が好きだよ? 大好きだよ?

 なんでそれをお前が知ってるんだよ!?


「……あーもううっさいなぁ」


 気付いたら、私は演技をするのも忘れてそんな風に言っていた。

 いや、というかさ……ホントうるさいよ。

 ていうかしつこい。何様だよ? 黒田花織様?

 は? ふざけるな。

 沸々と湧き上がる怒りぶつけるように私は彼女をつきとばし、続けた。


「一々しつこい……何そのデリカシーの無さ。異常かよ」

「……それが貴方の本性ですか」


 しかし、私に突き飛ばされても尚、冷静にそう呟く黒田花織。

 彼女の言葉に、私は答えられない。

 まさかこれは、彼女が鎌を掛けた?

 はッ……まんまと彼女の掌の上で踊らされたわけだ。

 私は目を逸らし、舌打ちをした。

 その時、彼女が続けた。


「……なぜ、美雪さんの前では猫を被っているのですか?」

「……アンタには関係ないでしょ」

「そんなことは……!」

「私とアンタは他人でしょうが!」


 いよいよ怒りが沸点に達し、私はそう叫んだ。

 すると彼女は唇を真一文字に結んで押し黙る。

 これ以上、彼女と話していたくなかった。

 だから、さっさといなくなってほしかった。

 なのに……。


「そうですね……では、私は先に教室に戻ります」

「……」

「……美雪さんに、白田さんの本性について話してきますね」

「……は!?」

「私と白田さんは他人ですから、白田さんがどうなろうが関係ないので。では」


 そう言って歩き出す。

 いや、待て待て待て。

 私は慌てて彼女の腕を掴み、その足を止めさせる。

 流石に美雪に私のこの本性を知られるのはマズイ!


「……何が目的……?」


 私がそう聞いてみると、彼女はとても優しい微笑を浮かべた。

 しかし、私にとっては、悪魔の笑顔にしか見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ