第16話 人の目
午前中の授業を終え、昼休憩になる。
そこで、私は美雪と黒田さんをくっ付けるために、早速動き出す。
まず弁当を持った美雪を連れて、屋上に向かった。
「シロ……なんでこんな場所に?」
「んっふふ~。まず黒田さんと仲良くなるためのステップ1! 一緒にご飯を食べよー!」
風に吹かれながら私が放った言葉に、美雪はギョッとした顔をして「はぁ!?」と聞き返してくる。
「何言ってんの、シロ……」
「何って、そのままの意味だよ~?」
「だからって……」
そこまで言って、何か思い浮かんだのか、考えるような素振りをする美雪。
今回の作戦は、美雪と黒田さんを二人きりで食事させるというものだ。
しかし、恐らく二人もいきなり『二人きりで食事して!』と言っても、多分断るだろう。
黒田さんは知らないけど、美雪はきっと断る。
だから、いつもの演技で二人を騙して、二人きりにさせるのだ。
しばらく考え込んでいた美雪は、辺りを見渡してため息をついた。
「なんで屋上……」
「美雪がなんで黒田さんと仲良くならないのかな~って考えたらね、美雪、周りの人の目が気になるんじゃないかなって思って」
私の言葉に、美雪は「周りの人の目?」と聞き返してきた。
そう、美雪が黒田さんと話さない理由。それは人の目があるからだ。
少し観察してて分かったことだけど、黒田さんって何ていうか……クラスで浮いてるんだよね。
だから、話しかけるのに抵抗があるのかもしれない。
でも、二人きりにすれば、きっと話すハズだ。
「うんっ。だから、ここなら誰にも見られないよ?」
「そんなっ……そもそも、周りの人なんかっ……」
否定しようとした美雪だが、しばらく考えるような間を置く。
視線を漂わせ、しばらく考え込んでしまう。
その間があまりにも長いので、私は「美雪?」と彼女を呼んだ。
すると美雪は顔を上げ、口を開く。
「……確かに、私、結構周りを気にしてたかも」
「でしょ!?」
咄嗟にそう返事をした。
すると、美雪はコクッと頷いてくれた。
私の言葉に同意してくれたのが嬉しくて、私は「えへへっ」と笑った。
……って、作戦の主旨を見失っている気がする。
「だからね、ここで二人でのんびりお喋りしながら、ご飯食べてみたらどうかなって!」
「それは良いけど……流石にいきなり二人きりは……」
「じゃあ私黒田さんのこと呼んでくるね!」
「あ、ちょっと!」
止める美雪の声を無視して、私は屋上から出て行った。
……正直に言うと気が進まない。
あのまま屋上で美雪と二人で一緒にいた方が確実に楽しい。
でも、それでは意味が無いので、私は教室に向かって走った。




