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40歳だが気付いたら異世界転生してアデール・トゥルーマン将軍になった件  作者: アフリカ霊長類進化研究所 ンゴ・イクァンノカ職員
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アデール将軍、あなたはどこにいますか

この世を恐れるか受け入れるか

それは全て本人次第



もう夜になっている

異世界と言って大分慣れてしまったかの様、しかし実感がないのが本音

それに疲れと怪我が重なり、どっと体が重くなる、歩くのもしんどい


「ほれここがツバキの宿、飯はそろそろくるど」

石切りの男達とはここで別れた


「明日また」

「おうよ!明日は朝早く総出で森に入るんじゃ、ゆっくり休め」

案内された平屋の宿は床がギシギシとなりちょこっとネズミが駆ける

だがベッドは比較的綺麗で広い部屋だ


「フカフカのベッド!・・・ではないがタダで泊めてくれるなんて」

ベッドに倒れ掛かりヘトヘトの椿


チュー   チュー


「ネズミ!?生まれて初めて見た、案外かわいい顔だな」

見渡す限り電気な無い、ロウソクだけが頼りだ


「スマホを照明代わりに使おうとも家に置いてきたままだった」


「財布はあるけど日本通貨はアデール村では使えないしなぁ」


スマホも忘れて転送された為に苛々は募る、悶々としている男その手は震えていた

「今日から20連ガチャ50%オフじゃねえかああ、くっそおおおお・・・」

「スマホあってもこの世界じゃネットに繋がらないか」


手をベッドにおどらせエアスマホを開始、だがどこを押そうにも何も起きない

虚しいので1分も立たずに止めた、気分がさらに落ちる


まるで100枚以上チケットを使っても最高レアが出なかった時と同じ絶望感


その時、ドア越しに声が聞こえてきた、足音もドタバタと近づいてくる

「おーいツバキー飯持ってきたぞぉーーーー」


夜食だ、さっきまでの気分が吹き飛ぶ

正直、自分自身でも何日岩盤に倒れていたのも分からない記憶も曖昧だ

この世界に来てからお腹はすかなかった、ショックも原因の一つだろう


しかし肉の匂いに誘われ一気に椿は目が覚めた

「腹減ってきたあああああああああああああああああああ」


ドアが開いた


夕食を持って現れた男はテュであった

先ほどより顔は綻び安心した顔を見せる椿

テュは健康状態を確認し明日に備える為にいっぱい食えと進めた


「うおっ急に大声出すな、ほれパンと今日〆(しめ)た猪の焼肉じゃ」

「食べた後は外の出入り口に置いといて、それ以外に聞きたい事があるかのぉ」


「トイレってどこでするんだ、この家には無さそうにみえたけど」

「外に小屋があるそこでしてくれ、それと夜中は狼がうろつくんじゃ」


「ちょっとまって狼!?ここの宿の施錠は頑丈でしょうね!?」

「ワカモン落ち着け、わざわざ人を襲ってこない、連中は残飯漁りにくるんじゃ」


この村は頻繁に兵士達が宿泊する事もあって村民が休まる暇はない

次の日に仕込む朝食を含めて約300人前を一晩で作らなければならない


毎晩調理場は修羅場である、その為に残飯、野菜の切りくずも多く出てしまう

中でも猪の骨目当てに狼が多く集まり夜中は外出できない環境


それら全てを地面に埋めようにも翌日には綺麗さっぱり頂かれていた

お手上げである


「寝る前にするのが男ってもんじゃ、夜中に催したら知らん」


これを聞いた椿は自分をふるい立たせる

「俺はアデールだ!狼程度に怯む男じゃない出会ったらこっちが威嚇してやる!」


これを聞いたテュは顔を傾げ笑った

「アデール様は狼など手懐けて番犬ならぬ番狼にして堂々と散歩する男じゃあ」


将軍の武勇伝は止まらない


「そこの家があるじゃろあれもアデール様がお金を出してくれて・・・」

「お腹すいてるんだけどー!」 「そじゃな、さっ冷めない内に食え」


猪肉を初めて食べた椿は驚く

牛肉よりも柔らかくそして野生のうま味が口中に襲ってくる、追撃は止まない

なんと言っても脂身が甘く口の中で溶ける、獣臭はせずむしろ食べやすい


「なんだよこの猪肉・・・霜降り和牛を超えてるだろ!いくらでも食えるわ」

「こんなウマい肉初めて食ったよ、牛丼屋の牛肉なんて比じゃねえ!!!」


牛丼屋の肉で育った椿にとって最高級品ブランド牛の如く美味美味美味


「ギュウドン?なんじゃそれ、そんなに喜ぶとワシも嬉しいじゃぁ」

「この猪は屠畜一筋30年の奴さんがやってくれるのぉ、村でも一番新鮮じゃ」


最後の一口を噛みしめる、また食べたい、否それ以外の肉を受け付けられない

そう思える程の絶品であった、まさに至福

それは異世界に迷い込んだ事すら忘れさせる。


気付くとテュは帰っていた、恐る恐る食器を置きに

幸いまだ狼の群れは来てない


ベッドに座り考える


「ここは異世界だ、でも自分でやれる事はやらないと」

「というかやる事がイマイチ決まってないしなあ」「アデール将軍どこにいますか・・・」


ふと眠気が襲ってくる

「もう寝よう、明日何か手がかりが見つかるかも知れないし」





ウウウ-ン


狼の遠吠えが木霊こだまする、それはどこか寂しげな響きであった

アデール・トゥルーマン将軍に懐いていた狼だろうか

動物と人間そこに境界線はない。



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