アデール将軍、異世界に立つ
最新兵器の暴走により異世界に飛ばされてしまった、地球では何が起こったのか
それを考える事も許さない一瞬の惨劇
立て椿よ!この地を制すのだ!
「イタタタ・・・」
全身を打った椿は悶え苦しんでいる
ギギギギギ・・・ カンッ カンッ
近くから金属のような物を叩きつける騒音が響く
「あの煙に飲まれた後、俺は何をしていたんだ」
情況が呑み込めない、だが生きている実感は直ぐに湧いてきた
「おお・・・いってぇ取りあえず起き上がるか、ううううう・・・」
「地面は何やら固いし座るにしてもケツが岩に擦れて痛い」
全身は痣だらけだが傷は擦った程度で出血は殆どない、服は多少焦げていた
誰か近づいてくる
「おーい見かけない顔だなー誰じゃーー??」
上半身裸の男がせまってくる、椿は思わず後ずさりした
「オラこんな所で寝てるんじゃねぞ、起きろ立つんじゃ」
がっちりとした腕と強靭な上半身まるでボディービルダーだ
「体中傷だらけじゃねぇか、服はボロボロでよぉ山賊にでも襲われたんか」
「違うんです、何やら気が付いたらこの場所にいて・・・」
「こりゃひでぇ、山賊に頭叩かれて覚えてねぇんか、よし待ってろぉ」
この筋肉男、人の話を聞かないどこかへ歩いていった
「随分とムキムキな上半身だな、どこにいったんだろ?」
5分経った頃、何やら大勢の上半身裸軍団が続々と椿を見に来た
「なんじゃこのワカモンはぁ」
「山賊も酷い事するのぉ、さ立てるか?」
「よそ者が来たど、こんな片田舎に何の用ど」
「え・・あ・いやその山賊には襲われてないんですけ・・・うおっおおおお!」
椿をひょいっと抱えてこの岩場から下に降りるようだ、ここは山なのか
「ここはなぁ石切り場じゃあ、寝る所じゃねえて」
「仕事終わりに来てみたら人が倒れてるってフテュが騒いでよぉ」
「さっきの男はフテュって言うんだ」「アンタさ名はなんじゃ?」
「羽翼椿、日本からき・・・いやえーとジパングと言った方が適正か」
見渡す限り家は掘立小屋
村長の家らしき家以外は粗末なつくりであった、まるで何百年前の文明に見えた
「ニホン?ジパング?聞いた事ない地名ど、おで気になる」
「それならよぉユピ・ウォカ村長に聞いたら分かるかもしんねぇ」
「ワカモン歳はいくつじゃ?よかったら石切り手伝うか?」
「歳は40です」「見た目より若くみえるのぉ」「おでらほとんど50過ぎど」
「俺はテュ・シオ、ここから石切ってさ売ってるんじゃ」
「へー随分・・・なんというか石切り場から離れると静かな場所ですね」
閑散としている、テュ曰く若者の半数は貿易拠点へ出稼ぎに行ってしまうそうだ
この村の収入源は石売りと宿泊業であった、それでも生活に困っている様子
「ワカモンがいなくてもアデール村はおで達が盛り上げるど!!!」
「ッ!?・・・まさかとは思いますが、アデール将軍って知っていて?」
「この村出身の戦士、人呼んで飢えた獅子ど」
「なんじゃお前アデール様を知っているんか!あれ程勇敢な戦士はいないぞ!」
「おうよアデール様が居なければこの村は今頃どうなっていたか・・・」
「お前のような若造にも名が知れて泣きそうじゃ・・・」
一気に男たちが盛り上がる、将軍トークは止まらない
椿はアデール将軍とネット上で讃えられた記憶が蘇った
いつでも心の中にはアデール将軍がいた、精神的支柱である忘れる時はない
「(そうだ俺はリアル嫁探しさえも忘れていて・・・)」
「(こんなに慕われていて凄い人だ・・・もし本人がいるなら合いたいな)」
「アデール将軍は今どこに?」
男たちが一瞬にして静まり返った
「(まさか戦死したのか、聞かない方がよかった・・・)」
最年長のフテュが重い口を開いた
「実は2日程前にこの村から姿を消したんじゃぁ・・・」
「あの方は決して何も言わず去る性格ではない、これは理解できんぞ」
すかさずテュが叫んだ
「神隠しにあったとでもいうのか!将軍が!ええ!バカげている!!!!」
「将軍が石切りの手伝いをする為に門を潜って言った姿が最後じゃ」
「降りてきたのみた奴は誰一人おらん、村人総出で石切り場ん中かきわけたど」
突如アデール・トゥルーマン将軍は行方不明になったというのだ
「おい若造!この話は絶対村外に漏らしてはいかんぞ!!」
「もしアデール様がいなくなったのが知れたらとんでもない事に・・・」
絶対的なカリスマを誇る指揮者がいなければ
直属の兵士達は反乱を起こすに違いないとフテュが考えていた
それほど無法者達も従う存在、故にそれが仇になる事を恐れていた
「村に泊まっている義勇兵はなんとか誤魔化しがきくど」
「それでも決起集会までは直属の兵になんと言えばいいのか・・」
自体は深刻だ
ならず者、無法者、マフィアが半数を占めるアデール軍にとって
さらなる士気向上の機会が、このままでは地獄の集会へと変わる
暴徒と化し一瞬にして軍は崩壊するだろうと村長は考えていた
その為に必死で知恵を出し合っている状況だ
「奥さん子供は隣町に避難させているんじゃ、俺らも逃げるか迷う・・」
「アデール様で栄えた町がなくなるかもしれん・・うぅ・・・ヒグッ」
「なに泣いてるど!石切りやってぇ持ち直すど!!!」
「だから町がかなり静かだったのか、アデール将軍会いたかった・・・・」
「ちょっと待てよ、俺が岩場で倒れていた時と将軍のいなくなった時期が」
「いや気のせいか、考え過ぎだな、俺も将軍探し手伝います!!」
椿は必死に訴えた
明日石切り場周辺の森も住民総出で探す予定だったので、大いに喜ばれた
「一人だけ増えてもなぁ」
「なーんじゃ若造いない村でたった一人でも頼もしいわ!」
「もうじきと夜になるど、泊まってみるど?」
もう夕方日は暮れる