正体不明の大男編その5
本能で己の思想を開花させる強者
歴史を見なくとも真実は見えている
水が筋肉質な体を伝い弾ける
「滝で体を洗っていた身としては、贅沢の極みだな」
得意げにシャワーを扱う、使い方を教えられすっかりご満悦
「ここまで水道が整備されていて素晴らしい国だ、これに慣れるのも怖いな」
「我の国でも再現出来ないだろうか、近くの水源からこの様な機械を作れば」
「石切りの連中も大喜び間違いなしだ!」
全ての寮に筒抜けの声、だが他の部屋には入居者が少ないのが救いだった
無論クレームは全て二人が対応、将軍本人はお構いなしだ
「アデールいつも声でかいし独り言がうるさいな、なぁ桜井黙らる方法ない?」
「無駄ッスよ、元々大声の持ち主だから我慢するしかないッス」
「チッ図体もでかけりゃ声もでかい、やっぱり外国人は苦手だな性に合わない」
「週末に街宣があるッス!一緒に行ってスピーチすればいいじゃないッスか!」
「あの選挙カーに乗るのは恥ずかしいから遠慮しとくわ、垂れ幕もなんか・・・」
「普通の日本人として不逞外国人は見逃せないッス!勇気が足りないッスね」
「勇気の問題なのかよ、先に寝るわ」
そう言い残すとソファーに寝転がり就寝した
「和田さんには愛国心が無いッス、反日教師に洗脳でもされたんスかね」
ガラガラと風呂場から戸を締める音が聞こえた
入り終えたアデールが満足げな顔を浮かべ、スナック菓子を貪り食べる
菓子と言えど食費を圧迫、食べる姿を見るだけで止められない
「将軍なんか俺らと生活スタイル同じになってるッスね」
「おう良い所は全て参考にしたいぞ!タラといったか美味だな」
「菓子好きッスね、でも少しは控えなきゃ太るッスよ」
「それは分かってるんだが、サクライも太っているではないか??」
アデールは一日で5袋を食べる程ハマってしまった、ジャンクフード中毒である
調達役を任された和田は苦肉の策として安く量があるポップコーンを全力投入
その甲斐もあってかなんとか食費は持ちこたえた
「時にサクライよ、戦士を支える右腕としてどうだ?」
就寝前の0時、彼は決まって寝る前に人に話かける癖があった
和田は相変わらず既に就寝、将軍との会話は少なくやり過ごしている
「どうって、将軍の役に立てて嬉しいッスよ」
「そうか我に対しての文句言っていいのだぞ、遠慮なく話合いは大事だ」
「お言葉に甘えて、んん~・・・不満と言えば最初の頃と比べたらないッス」
「不満は働いて欲しいッス、でも将軍の性格じゃどの職業に向いてるのか」
「そもそも軍師向けの求人なんてある訳ないッスね、ハハッ」
「確かにこの星にきてから体もあまり動かせずにて、我ながら不甲斐ない」
「身元確認も出来ない正体不明の人間が勤められるのかよ?」
和田は思わず口にする
狸寝入りして会話を聞いていて、指摘するタイミングを伺っていた
「そうッスよね、あるとしたら人に言えない反社会系の仕事・・・怖いッス」
桜井も思い出す、一緒に住んでいるのは異国から来た外国人位の気持ちだ
感覚が麻痺していた、隣に寝ている将軍は人では無いかもしれない
どこの国にも属さない地球外からきた自分達と似た生命だという事実に
「映画みたいにさ、将軍がさ地球人に化けた侵略者なんて思っちゃうぜ」
「侵略者!?まあ我は兵隊を率いていたから事実か」
「まあリアルの地球なんて侵略する程、理由なんてないと思うけどな」
「エイガ・・・?後でその話聞かせて貰うぞ!」
「うっ(言わなきゃ良かった、一々最初から全部説明だ・・・鬱になりそう)」
「和田さん急に喋り出して聞いてたんスね、なんとか仕事見つけたいッスね」
「我を支えてくれて二人共ありがたい、これからも頼むぞ」
「はい将軍に出会えて幸せッス!一生付いて行くッス!」
「(桜井の野郎演技ではなくマジだな、とことんまで染まるタイプかよ)」
「(不法滞在者を叩く癖に目の前にいる本物は良いのか?何考えてやがる)」
気付けば深夜3時
部屋は静まり返り和田はトイレに起きた
「ふー・・・夜中は長いな、寝ていたら一瞬で過ぎる、人生って何だろう」
「包丁で寝ている奴を・・・そんな度胸もねえけどなあー情けねえ」
ブツブツと独り言を喋りつつおもむろに冷蔵庫を開け探す
スポーツドリンクを手に取り、キッチンに行き立ち飲みを始めた
「将軍が来てから少しは良い事あったか、賑やかになっただけか」
深夜に自問自答するのが彼の癖である
「さ寝るか、いっそ裏社会の仕事に追いやったら解決するかもしれねえ」
将軍の始末を計画している和田、一日中それで頭が一杯だ
「パーフェクトゲームにはならなくとも絶対に殺る、覚えていろよアデール」
憎しみを募らせ密かに誓った決意、それは叶うのだろうか




