アデール将軍誕生、二次嫁との決別編
この小説は日本の一般的な成人男性を主人公にしています
40歳の男がいた、彼は至って普通の日本人だ
だが他の人と違う一面がある
インターネット空間では敵国工作機関の書き込みを見抜き、仲間同士と連携
工作員の疑いがある人物を集中的に攻撃する、止め処も無い正論の数々
決して攻撃の手を緩める事なく,破竹の勢いで次々とぶった切り
味方すらも恐れられた、この時ついた二つ名はバーサーク遊撃隊長
工作活動の本拠地、日本最大のネット掲示板に乗り込み彼は叫んだ
瞬く間に日本の名誉を傷つける工作員が蜘蛛の子を散らすように逃げ
その日からぱったり工作らしき書き込みがなくなった
ネット空間は歓喜に沸き泣いて喜んだ
「長年の悲願が叶った」「インターネットからゴミを掃除してくれてありがとう」「あなたは日本の誇りだ!」
賛美の声が止まない
それはネットニュースのみならずテレビ放送に載り名を馳せ、一瞬で時の人となる
その男を住民は「アデール・トゥルーマン将軍」と呼んだ
実在する英雄から拝借した名であった、これ程当てはまる名前はない
アデール将軍は今から1000年前、敵城攻略の際に直接門を叩き
幾多のも城を落としてきた、恐れ戦き一瞬にして敵陣が崩壊する様から
「 落城の餓えた獅子」と呼ばれた
気高さカリスマ性、何よりの強靭なパワー、堂々と正面から敵に突撃する勇敢さ
それらが重なった結果である
確かにこの男をネット住民は狂信的に持ち上げた
だが流行り廃りの消費期限は精々1週間、あっという間に連れ忘れられてしまった
ネットでは将軍と呼ばれた男でも現実では只の一般人軍人でもない
何の階級にも属さない
独身40歳、名前は羽翼椿冴えない日々を送っている
この男は優越感に浸り、本当に自分が将軍なのだと思い込んでいた
男だが椿と名付けられからかわれる事もあったが本人は気にしていない様子
仕事といえば毎日ネットに投稿する動画作成
報酬は1回120円でコツコツと稼いでいる
他を見渡せば同級生達、それらは次々と家庭を作っている
一般的な40歳は子宝に恵まれれば子供がおり既に成人している家庭もあるだろう
それでもなお彼は結婚や彼女について現実で考えた事もなければ無頓着である
しかし二次元の嫁は3人もいる…!
え?二次嫁にしては少ないのではという意見もあるだろう
彼は違う、量より質の漢である故に皆平等に愛した
存分に愛情を注いでも二次嫁からは決して語りかけてはくれない一方的な愛情表現
それでも満足していた
男には家庭を持った友人がいるもちろん結婚というのは愛の契だけではなく
家事仕事子育て、休む暇はなく『人生の墓場』とも揶揄される。
友人宅に遊びに行った
「よお椿相変わらずだな、おーい秋つまみ出してくれ」
「邪魔するぜ」友人の顔つきは明らかに以前とは違う
見渡すと新妻の秋さんがおり愛娘と遊びその顔は幸せに満ち満ちたオーラが輝く
それらを見せつけられ鋼鉄の信念が揺らぐ
「椿さんよかったら晩御飯食べて行きますか?」
秋さんが語りかけた、もう夜だ一日中友人宅で駄弁っている
この男手料理こそしないが振る舞われるのは大好きだ
テーブルを拭き料理を作る、椿は天ぷらの油切りを任された
「スーパーで豚肉が特売だったから奮発しちゃった」
「その反対側にある精肉店も品揃え良いですよね」
おかずが5品ほど出来た友人特製サラダも完成
「お前サラダいつも食ってるな」
「体重気にしてるんだよ」
新妻お手製のどんぶり物も完成した
「ほいよ半額の豚肉で作った具沢山アチアチ、トンテキ丼お待たせ!」
「ちょっとあなた半額の前置きは余計ですー!」
「ごめんごめん、みんな座って食べようか」
新婚アチアチおのろけを至近距離からもろに被弾、椿の心を貫き亀裂が走る
やはり愛情籠った手作り料理は絶品、即座に友人揃っておかわり
完食したと同時に心の中の二次嫁は砕け散る、いや消滅したのだ
「リアルの嫁が欲しいなァ」ポツンと本音が漏れてしまった
それを聞き逃さない友人、街コンに行くよう進めた
会場付近には在日米軍駐屯地があり有名な場所、あまり乗り気ではないが
一度だけならと渋々と申し込完了、週末の金曜日に決まる
アパートに帰宅し決意を噛みしめた「可愛い女の子を掴み取る!!!!!」
「もう二次嫁は卒業だ、これからはリアルに限る」
この日を境に変わったのだ