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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

コミュ障勇者の付き人日記

作者: 多田野箱

ヤンデレな勇者が書きたかった。後悔はしてる、反省もしてる。

深夜テンションで書いたら出てきてしまったんだ、許せ…

俺は割と辺境な村で生まれた。


 一応村を纏める役をしていたから家名もあったが正直そんなのはないにも等しい、そんな家で、俺はずっと普通に暮らしていた。

  友達と一緒に遊び、食っちゃ寝て、また遊ぶ日々を過ごしていた。


  だがその日々は五歳の時に終わりを告げた。

  それは一組の親子が俺の村に子供を預けに来た事から始まったことだったな。

  平民服を着てても伝わるその風格で気圧されたのを覚えている。

 立派なヒゲを生やした大柄な男と、その子供らしい奴。

 それがアイツだった。


 面倒見が割とよかった俺はすぐにおせっかいを焼き、方法は少し荒っぽかったけどアイツを俺達の輪に入れた。

 そこからはいつも一緒だったっけか。

  遊んで食べて寝て、喧嘩もしたししばらく口を聞かないこともあった。

 と言うか生活変わってないな、俺の日々終わってなかったわ。

 ひとまずそれは置いといて、アイツは子供の時から凄かった。ガキ大将をすぐさま倒し、森の魔物もなんのそのでよくイノシーを狩って来てくれた、それに頭も中々良かったから算術とかはアイツから教わったな。

 ちなみにやられたガキ大将は俺だったのだが…まぁ、そんなこんなで俺たちはそのままだんだん大きくなっていった訳だ。


 アイツが勇者であると知らされる15歳の時まで。


 初めはびっくりした。だってお伽話にでも出てくるようなあの勇者だぞ?

 アイツが隠れて修行してるのは知ってたけど、普通に騎士にでもなるのかと思ってた。凄い戦士になるだろうと内心期待していたりしたのだが、それがまさか勇者とは…


 でだ、勇者の使命はただ一つ、魔王を倒して世界を救うこと。アイツもそう。


 そして現在、俺はその勇者と一緒に魔王討伐に行くことになりました、ワーパチパチー…

 何でや!!俺に武の才は無いぞ!?商人にでもなろうと思ってたから魔法もサポート関係しか実践出来ないし、正直お荷物だぞ!?


 理由?勇者がコミュ障だからぁ!!?はぁああああぁぁ…ウン、分かった、しょうがない…


 俺は頷くしかなかった。

 気づいたからだ。

 アイツの正体に長らく気づいていなかったのは俺だけで、それを知っていた奴はアイツとは関わらなくなってた事に、いつしか俺しかアイツのまともな声を聞いてなかった事に。


 そして、俺達の旅は始まった。


ユシアーノ・カカリン 魔王討伐の旅、開始


火の月7日

 長年連れ添った勇者の付き人として魔王討伐の旅を始めた。今日から日記を書く事にする、勇者の輝かしい記録を綴る日記。にはならないだろうけどちょっとした愚痴のようなものも書き記そうと思う。

 まず一日目である今日は、王が見送りとしてまぁ贅沢で豪勢な装飾で街を飾って、勇者の見送りをした。

 その一国総出の見送りは次の村に着くちょっと前まで聞こえた。皆さん頑張ってたんだろうなぁ…王様も過保護だ。

 まぁ、自身の子である勇者を戦地に送るんだから親としては心配しないほうが可笑しいか。

 俺は親からは光栄な事だ、行ってこいとしか言われなかったけど…

 この扱いの差は何なんだよ…ちくせう。

 と言うか今日初めてアイツが王の子だった事を知った。前々から色々とアイツにしちゃっているが俺、処刑されたりしないよね?


 そういえばだがそんな勇者が辺境に来たのは帝都の伝統だそうだ。

 なんでも五歳から一定の年齢になるまで普通の村や街で暮らさせ、そこで得た民の声や風習、技術を吸収し、王となった後もしっかりとした人にしようという計画。

 アイツもその例に漏れず俺の村へとやって来た、と言うわけらしい。世界を救うはずの勇者なのにな。


 あ、そうそう、出来たよ!仲間が!魔法使い(微乳)に聖女(巨乳)にルーキー騎士(男でムキムキ)の三人。俺の役職は荷物持ち…体もデカイししょうがないかと割り切ることにしよう。

 今こそ俺の自慢の補助魔法を使うとき!!


 慣れない事したせいで足が痛い、靴擦れが足に染みる……綺麗な装備にしとけと新しいブーツにしたのが不味かったな。

 馬車が欲しい……


火の月12日

 馬車に揺られ、徒歩でバリバリ歩いて。まずやってきました煙国「ボウボー」。年中暖かくて温泉やら炭鉱業で栄えてる国だ。

 まずはここらで肩慣らし、のはずだったのだが早速問題が露呈した。勇者のバカのコミュ障が爆発しやがったのだ。

 俺が村の事色々と聞いたりしてる内に、なーにがこの付近の火山が偶発的に何度も噴火し、火の化物がその麓で暴れているのです。勇者様、どうかとか迫られて「!!?(コクコクコクコク)」とか頷いちゃってんだよあの馬鹿は。

 火山が噴火してるってぜってー火の大精霊(イフリート)とかの精霊の類だろ…間違いなく俺らのレベルじゃ太刀打ち出来ないだろうに…

 取り敢えず騎士団長のレイントンさんに連絡を入れといた、あの人なら大精霊でもHANASIAIでどうにか落ち着けてくれるだろう。


火の月29日

 やっと問題が収束した…毎日書くようにしてた日記も書けなかったぞ。まだ一週間も書いてないのにもう火の月最終日、笑えない…

 取りあえずは勝利、でも勇者は一日ノックダウン。さらにあのレイントンさんまで半死半生まで追い込まれるとは思いもしなかった…俺もサポートとして参戦したけどまるで歯が立たなかったな。

 鉄をも溶かすブレスにあの俺を縦に三つ積んでもまだ大きい程の巨大な腕、比較的後ろにいた俺まで何度叩き潰されそうになったか…

 やっぱり俺には戦闘の才は無いんだと感じてしまう日々だった。

 その事を皆に言うとお前がいないとそもそも勇者が動いてくれないと言われた。確かにそうかもしれない。


 あ、結局火山の化物の正体は魔王軍の幹部が火の大精霊の体を乗っ取って動かしていたらしい。

 旅ののっけから幹部とか…大丈夫なんだろうか?不安だ…

 火の大精霊からは助けてくれたお礼にと加護を貰えた。火に対する耐性が上がり、さらに軽い火種なら魔力無しでも着けられるようになった。

 これ、ほんの着火とか油跳ねとかに気を使わなくて済むから良いな。

 と言う旅して二日で料理番を任された俺なのだった。


水の月1日

 普通に森を抜けようとしたら何でかエルフの村「アンティ」に迷い込んでそのまま何だお前たちはー、から捕まえろーまで行って現在、牢屋…

 何故だ…理不尽すぎる…どっからどう見たって健全なパーティーだろ、何処が森を荒らす不届きものに見えるんだよ…

 それに顔、顔だ。

 どいつもこいつも皆イケた顔してて見てるこっちが何か恥ずかしかったが勇者の顔はその中でさえ負けてなかった。

 美のエルフ、技のドワーフと言われるエルフと同格とか、勇者、そっちの面でも凄いんだな。

 俺自分の容姿に自信が持てないや。

 でも人間と割と良好な仲なはずだったはずのエルフがこうも攻撃的になるのだろうか?厄介事の匂いがする…


追記:エルフの牢屋は寝床も割と良い様だ、とても寝心地がいい。_(:」∠)_<すやァ


水の月3日

 釈放キター!!と、思ったけど条件がついた。何でもエルフには神を祀る祭壇があるそうなんだがそこに結構ヤバい魔物が住み着いたから討伐頼む、だってよ。

 いや、可笑しいでしょうと、勝手にそっちが誤解して拘束してそんな条件出されましても。と言いたいのにまた勇者の「(コクコクコク)」で受けることに。

 コイツ、マジで後でしめる、全然効かなくてもしめてやる。俺らの負担を考えんか馬鹿者が。


水の月4日

 オーーーーイ!!!何だ!?火の大精霊に続いて今度は水の大精霊ウンディーネと来た!火と来たら次は水でしょう?ってかふざけんな!

 寝りゃ治る勇者と違ってレイントン団長はまだ全身火傷も治ってないんだぞッ!?回復魔法さえ受けられるような状態じゃないってのに立て続けに厄介事が起きやがって…


 クソッ、めちゃくちゃ癪だが大魔道士のオーリーさん呼ぶか…でもあの人、エロじじいなんだよな…

 何が魔導の真髄はエロにあり!だよ…エルフにビンビン食い尽く姿が余裕で見える。

 しかし実力は折り紙つき、今は頼るしかあるまい…アフターフォローに追われる日々が来そうだ…スカウトなんてするんじゃなかった、気が重い。


水の月5日

 転移魔法でオーリーのじじいがやって来た。

 そりゃもうド派手に…ヒョホホホホ!とか叫びながらラッキースケベを装ってエルフの体をまさぐったりするんじゃないよ…

 エルフの王が親の敵を見てるみたいな顔してたんだぞ。寿命が5年は縮む思いだった。

 それとコミュ障勇者はいつも通りの平常運転、色んな人に話しかけられてそこらじゅうでずっと吃ってた。俺はアイツの未来に不安しかない。

 ただそんな行動も全部が全部勇者としての偉業に変換されているからまた凄いのかもな。


水の月17日

 今回は割と早めに終われた。水の大精霊?あぁ、最近湖がエルフ達の魔道具による汚染で不純な物が大精霊の体に貯まり、暴走していたのをオーリーさんが風の魔法でズタズタにして勇者が頑張って仕留めた。

 力を使えない祭壇にいたのが幸いしたんだろう。

 ま、精霊は人の念で生まれるし生きているのでまた新しいのが生まれるだろう。

 出来れば今度はもっと可愛らしい姿になって欲しい。


 そうと言うのも水の大精霊は魚人だった。

 ナマズみたいな顔してムキムキの体持ってるやつなんて誰が得するんだよ。

 服も布切れ一枚腰に当ててるだけで殆んど裸だ。俺はアレ見てキモイしか感想が浮かばない。

 ただ勇者の奴はアレ見て体、ムキムキ、イイ///とか小声で呟いてた…アイツの性癖ヤバい。俺は勇者にぞわっとしたものを感じた。

 消える直前に正気に戻って「おれっちは消えちゃうからお前に加護やるよん」とか言われて加護を貰ったがあの見た目の奴から貰った物だと思うとちっとも嬉しくない。

 どんな水でも浄化して真水に出来る力は確かに使えるのだが、如何せんなぁ…


 話を戻すと結局最初から最後までエルフのせいでしたって事だ。まったくもって迷惑極まりない。

 それに今回勇者が片腕を失いそうになるほどの怪我をしたし、王から貰った宝剣も折れてしまってもう使えくなった。

 今後はこう言う度を越して危ないことを勇者にさせるのは止めてほしいものだ。

 幸い勇者の凄まじい回復力と聖女の魔法で治ったがあれは肝が冷えた。

 剣はエルフから神剣イグニスとかいう大層なのを貰ってたけど勇者、悲しそうにしてたな…宝剣に思い入れでもあっただろうか?

 …そういや王からの貰いもんだった…バリバリ思い入れあったわ。


闇の月4日

 最近事件がたて続きに起きてたせいで日記をろくに書いてないことに気づき、ここらであったことを色々と書いておこうと思う。

 この3ヶ月まずエルフの姫が俺らの乗る馬車に紛れ込んでた。

 マントをしっかり羽織り、声も魔道具で替えて行くと貧相な胸と相まって誰も気づかなかったようだ。

 それ指摘したらボッコボコにされた…強化魔法使って殴るなんて酷い。割と細身なエルフなのに真っ当な拳闘士として戦えるとはこれ如何に?

 最初勇者の奴が「だだんだんだだん誰ぇ!!???」とか女みたいな声で叫んでいたのは面白かった。


 そして俺の力が及ばない事が増えた。ま、当然と言えば当然。何たって俺は弱い。エルフから貰ったダガーや弓を使っても俺は勇者のパーティーメンバー足り得なかった。

 それは今も割と悲しい。でも仕方ない、コイツの意向諸々聞いて行動させないともう、本当に大変な事態になる事が判明したから。


 アイツ、どうやら勇者の呪い的なの罹ってるらしい。


 歓楽都市「ヘルメス」で占いをして貰った時に分かった事なのだが、勇者は歴代の中でもごく少数の、常に自身の全力で挑まねば負けるような敵と遭遇しやすい呪い、いや、この場合は性質とでも言うべきか。それが現れてるらしい。

 見方を変えればどんどん強くなっていくのだが、こちらにも多くのリスクが伴う諸刃の剣ゆえ出来れば順序よく、しっかりと強くなって欲しいものだ。俺が死ぬし皆もついて行けない。

 だから俺がアイツをしっかりと導いてやらないといけなくなった。

 それは別段難しいことでもない、俺が勇者の代わりに言えば良いからだ。


 ただ…目を離すと本当に勇者はやってくれる。

 もうね、この前将国「リダー」で馬にまたがった騎士の格好をした風の大精霊(シルフ)とか出ても驚かなくなったんだ。あぁ、またかって。

 しかも今度は大精霊自体の勘違いと来た。

 どこの国でも騎士様はどこでもやっぱり職務に忠実な人は頭が硬いものなのか?村人の尾ひれどころかトサカまでついたような噂話を信じてこっちを殺しに来るとか。

 なんでも四大精霊のうち二体を倒した勇者に今度は自分が殺られる番だと思ったらしく、今回のような事態になってしまったらしい。

 また加護貰ったし、あともう土の大精霊(ノーム)だけだよ、四大精霊の中で会ってないの。このまま精霊の加護全種コンプリート目指しちゃうか?最近それでもいい気がしてきた。

 今更のことだが風の加護は天候を知れるし追い風を吹かせるようになる力のようだ。風の月の後半での船旅では大助かりした。


闇の月6日

 魔族に攫われた。ヤバい、勇者助けてくれ。加護のお陰で直接手出しはされてないけどここ嫌だ。

 毒飲まされるわ料理されそうになるわ…今この日記だけが俺の取り柄だ…助けて欲しい。


闇の月9日

 助けてくれとは言ったものの、勇者よ、どっちの意味でもやりすぎでは?レイントンさんにオーリーさん、どっちも呼んで来るとか…いや嬉しいけども。

 砦も全壊してたし魔族の半泣き姿とか初めて見た。俺に向かって下等だの劣等だのゴミだのと言ってはしたが何もあそこまでしなくても…

 だが俺は二人のエキスパートから勇者が二人に直接連絡をして頼み込んだ事を知った。

 アイツ、いつもは親と俺位の人としか話せないはずなのに、俺のためにそこまでしてくれたのだ。

 直接言うのは小っ恥ずかしいのでここに書いておく、ありがとう。


闇の月17日

 やっと、魔王城が見える場所までやって来た。いよいよここからだ…

 だと言うのに勇者、その手に持っている服は何だ?俺へのプレゼントなのは嬉しいが何故にピッチピチの服?

 俺の筋肉が…とゴニョゴニョ言ってたがせっかく貰ったものだし身体能力の向上効果がついてたので着た。見事ピッチピチの服着たゴリマッチョの誕生だ。


 祝うな誂うな、おいそこのロバート(ムキムキ騎士)笑うんじゃねぇ。こんなのでもアイツが選んでくれたんだぞ!


闇の月23日

 精霊の加護コンプリート。土の大精霊から普通に貰った。突然地面がモコモコと隆起したと思ったら大小様々なゴーレムが現れて一際でかい奴が「ワシの仲間が色々とやったらしいの、スマン」とか言って普通にくれた。

 俺の格好凄い見てたけど、土の大精霊はめっちゃいい精霊だった。今までが今までだったとも言うけど。

 加護の効果はゴーレムが作れるようになったぜ、これで荷物運びが捗る。


闇の月24日

 ゴーレム使いだしたら皆して俺に荷物持たせるように…いや、ゴーレムいるから楽になったけど、なったけど魔力消費とかさ…もうちょい考えてくれてもいいじゃんよ…

 魔法使いが慰めてくれたのが俺の救いだ。勇者、お前も見習え。


闇の月25日

 今日は何故か起きたら勇者の膝枕だったため、俺は朝寝起きで柄にもなく叫んでしまう事態になった。コレはマジで笑えん。

 勇者よ、見習えとは言ったがそこまでしなくてもいいから。

 めちゃくちゃびっくりしたし硬いんだ、めっちゃ硬いんだよ。ちょっと岩でも枕にしたのかと思う位にお前の太ももはカッチカチ。

 まず何故そんな事をする。それを見ていたエルフの姫さんは何故か羨ましそうだったけど一言言わせて、何処にそんな要素がッ!?

 まさか、姫、腐ってるんじゃ…これは不毛だ!やめよう!俺はもう寝る!


光の月1日

 今日は魔王軍の幹部がコンビで攻めてきた。サキュバスクイーンにオークジェネラル、どちらもかなりの強者だったのだが…

 途中でいきなりやれアイツは女だのあの子は男の娘だのと言い合いを始めた。

 そのまま口論は続いていたのだが勇者の一太刀と共にそれは終わってまた苛烈な攻防戦が始まった。

 最後は俺のゴーレムと追い風のコンボで相手の目を潰すなどして怯ませたところを全員の集中攻撃で倒したのだが途中の口論は一体誰のことを言ってたんだろうか?まさかエルフ姫?あっ(察し)

 だからあの時俺達を見る目が…これは不毛ry


光の月4日

 この前のコンビに続き、今日は魔王軍幹部のトリオで攻めてきた。もうボスラッシュってレベルじゃねぇぞッ!!!

 何でこう、サンダーバードに鉄騎将軍、リッチーなんて凶悪な三体を送ってくるかなぁ!!

 この前のコンビと違ってこっちはそれなりに連携も取れていたし実力もこれまでの敵とは段違い。

 上から雷、地上に将軍、遠距離からは多数の魔法と、大精霊達が駆けつけてくれなければ全滅の可能性もあっただろう。

 魔王がホントに殺しに来てた。

 俺、しっかり導けてるはずだよな?大丈夫だよな?これも勇者の呪い?だとしたら強すぎる…


光の月17日

 今日は特に何もなかった。何もない日はこうも尊いモノなんだ強くと思う。

 この前の魔王軍ボスラッシュが可笑しかったのかもしれない。と言うか可笑しかった。

 何もなかったが何も書かないのもアレなので俺が起きると下半身とシーツが濡れてた事でも書いておこう。

 匂いはそれほど無かったので寝汗だろうか?出来ればそうであって欲しい。毎日の疲れで深く眠ってたから緩んだのかな…後の笑い話にでもなってくれれば別にいいか。

 それと勇者がやけに機嫌が良くて少しくらいなら他の人と喋れてたな。それでも「は、はい」とか「そそ、そう思いますぅ」とかどもりはしてたが…

 このペースで俺以外とも普通に話して貰いたいものだ。


光の月24日

 遂に魔王城に到達。ここを踏破すれば俺たちの旅は終わる。

 俺、この旅が終わったら故郷に帰って結婚するんだ。誰とは言わんが…相手がいないんだよチクショウ、書いてて悲しいな。

 早速門番の龍の石像と戦闘。勇者の剣でもその強固な外殻は削るのは困難で、魔法使いの魔法と合わせて攻撃してもちょっとの傷が出来ただけだった。

 全員無事で逃げ帰れたけど消耗が激しい、もうなりふり構えないので明日秘密兵器使うことにする。

 そういえばだがこの旅が終われば勇者はどうなるんだろうか?そのまま王様?だとしたら…何とかなるのか?アイツはアイツで勇者補正かなんか掛かってるってレベルで悪運が強い、きっとなんだかんだでいい王様になるだろう。


光の月25日

 石龍と二度目の会合、また昨日の繰り返しかと思ったがなんと今日は俺が大活躍!秘密兵器の酸を喰らわせて石龍の外殻を溶かし、そこを勇者と騎士、魔法使いの魔法で連携攻撃。石龍を撃破した。

 日数が掛かってないが何か今までの敵で一番苦戦した気がする。俺が戦闘に真面目に参加したからだろうか?


光の月26日

 魔王戦、最後の戦い、だと言うのに魔王がとんでもなく軽い奴だった。

「うはっww」とか「テラワロスww」だの、知能指数が下がりそうな言動、さらに魔王の周りには美女、美女、美女。側近までもが美女!

 こんなのが俺らが目指してた、そして先日の幹部達を嗾けてきた奴だと思うと今でも泣けてくる。

 最後のセリフも「我が人生に一片の悔いなし、ひょー!決まったァ☆」と、何とも締まらない…

 だが、間違いなく世界は救われた。俺達の旅がついに終わったんだ。


火の月7日

 やっとこさ帝都に戻ってきた。道中色んな人達から貢物やらをたんまり貰ったし。戻ってきたら王様、ひいては国民全員から拍手喝采、大賛辞。

 勇者も俺達も英雄になり、エルフ姫以外は国お抱えの人になることになった。これからは戦闘以外のこともしっかりしとかないとだな。

 これまで書いた日記を見返してみると、俺は終盤までかなりお荷物になってたなぁ…

 大精霊達、敵だった時もあったけど加護くれて本当にありがとう。コレのおかげで俺はアイツ等と一緒にいれたよ。


火の月8日

 俺達パーティーに色々と授与された。下手すりゃ一生暮らせる金銀財宝、公爵並の地位等、そりゃもう様々。

 ただ、唯一の問題。勇者が褒美として俺と結婚すると抜かしたのだ…さらに既成事実まであると言う。いつだよ、そして勇者、お前女だったのかよ…

 何か全部のピースが埋まった気分だったのだが危うく王様にその場で首を撥ねられるところだった。

 ひとまずそれが落ち着いて、現在は王城のある一室にいる。

 でも待って、ココドコ?何か壁中に俺のような男が盗撮的な構図で描かれてる絵がびっしりなんだけど。怖いよ…

 いや、え、マジでどうなるの?気になって体は疲れてるはずなのに寝れんよ。

 それにこのベッドも何か凄いいぃ匂いか”~~~~~~~…


火の月9日

 日記書いて寝落ちして、朝起きたら何故か尋常じゃなく疲れて別の部屋と言う怪異。何があった。

 そして何故か許しが出た。何があった。

 これで正式にアイツが俺の妻になるらしい。これまでずっと男だと思って暮らしていた奴と、結婚生活?馬鹿言うなよ。

 そう考えていた時期が、俺にもありました。

 勇者、きちんとしてれば超可愛い。これまでずっと鎧とか剣を着てたからか全くその全貌が見えてなかったがアレは確かに勇者だった。

 格好を変えれば人はこうも変わるのかとただ驚くばかりだ。

 こうしてみれば俺が勇者の事を見てなかった気もする…

 考えてみれば声や背、体形の変化は男と女で大きく違うはず、しかも体が変わる時期に共にいて普通ならば気づかない訳が無いのだ。

 俺、これからはもっとアイツのこと見てやらないとな。でもまずはアイツのコミュ障を治すことからだ。

 これから女王になると言うのに俺以外とは誰とも喋れないなんて事態、絶対にあってはならない。

 それに、いつも皆と話したがってたから話せるようになればそれはそれで楽しいだろうしな。


 ひとまずこれで俺の日記は終わりにしておく。見られると色々恥ずかしいので何処かに隠しておこう。





火の月9日

 とても懐かしい物を見つけたのでまた少し書いてみることにした。

 存在そのものを完全に忘れていたのだが、まさか宝物庫のオブジェゴーレムの中に隠してあるとは驚いた…当時の俺は中々に面白いことをしたものだ。

 あれから月日は流れ、現在俺は29歳、女王は28歳、子供は男女半々に上から9歳、8歳、7歳二人、となっている。頑張ったな。

 全員顔は女王似、体は俺似とまさに理想的。皆美形になって親としては嬉しいが俺個人としては少しは似て欲しかったと贅沢な悩みがある。

 それにしてもちょうど12年経った日にまたこれを見つけるのにはちょっとした運命を感じてしまう。これも精霊の加護だろうか?

 そうだ、加護で思い出した。これも書いておこう。

 水の大精霊が10年ほど前に復活した。今回の姿は人で言う耳のところにヒレがついた鱗肌の細身のイケメンになった。報告を受けたときは「違う、そうじゃない」と小声で叫んだっけ。

 それをどこで聞いたのかその夜か翌日位に女王が俺の部屋で人魚の格好をして待っていた時はド肝を抜かれたな。やっぱり綺麗だったが。


 その女王もようやく人並みに他人と喋れるようになって、長年勇者係とされてきた俺は涙腺崩壊レベルで嬉しい。月日と努力は人を変えるのだ。

 逆に俺としての変化といえばそれほどない、髭を生やすようになったこと、女王の細かな変化も気づけるようになったこと、そして子供が可愛くて可愛いこと、言ってしまえばそれくらいだろう。


 しかし、今は幸せで幸せで大変だ。

 もう子ども達を村に預けて久しいがゴーレム達が送ってくる映像には玉のように可愛い子供達の姿が映っている。


 時たま暴力を振るわれたりして野郎ぶっ殺してやる!となることもあるが、それでもやはり幸せすぎて泣ける。

 この日記はまたどこかへ隠して記憶消去でもしておこう。

 あぁ楽しみだ、これからの人生全てが。


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