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てんくーじょーのあるじ  作者: 記角麒麟
2/13

淫獣、そして人物紹介。えっと、本編はここから始まる様です。

 むかーしむかし、あるところに、ひとりのおとこのこがいました。


 おとこのこはうまれたときから、なんでもできました。


 いいえ、じっさいはなんでもということではありませんでしたが。


 ようやくすれば、おとこのこには、みんなにはない、とくべつなちからをもっていたのです。


 それは――――。



⚪⚫○●⚪⚫○●



 ――新暦XXXX年 5月――


「ふぁぁあ……」


 その日、彼は久しぶりに目を開けた。

 一体、どれくらいの時間眠りについていたのだろう。

 一年か、それとも二年か。

 はたまた、数十年か、数百年か。


 だいたい、それくらいの気だるさは感じる。


 しかし、そんな彼の体感とは別にして、鹿島九十九が眠っていた部屋は、随分きれいなものだった。


 ワインレッドを基調とした、天蓋付きのベッドはふかふかで、白を基調にしたデザインをした家具やカーペットには、一切のホコリは見当たらない。


 まるで、彼が起きるまでの間ずっと、誰かが部屋にいて、掃除してくれていたみたいである。


(まあ……いつものことですが)


 そんなことを考えていると、ガチャリと扉が開く音がした。

 そちらに目を向けてみると、そこには黒を基調としたエプロンドレスに身を包んでいる、銀髪灼眼のメイドさんの姿があった。


「おはようございます、ご主人様」

「おはよう、日向ひなた


 手早く挨拶を済ませると、少年はグッと伸びをして(ついでに大きなあくびもして)、ふかふかの愛しい君(天蓋付きのベッド)を後にする。


「どれくらい寝ていました?」

「ざっと五百年ほどにございます」

「わお!それは随分と長いお昼寝でしたね……」


 淡々と事務的に告げる彼女に、今ではもう何回繰り返したかわからない挨拶をする。

 それから彼は、日向と呼ばれたメイドさんに数分間に及ぶディープキスをして、それから朝の運動へと乗り上げ――


「――おやめ下さい、ご主人様」

「……どうしてですか?

 君は、僕のモノでしょう?」

「それは否定しませんが、私にも自由意思というものがございます。

 お戯れは、また後ほどにお付き合いいたしますので、どうか」


 日向はそう告げると、スルリと九十九の脇をすり抜けて、数メートルほど離れていった。


「そこまで離れなくてもいいのでは?」

「貴方の淫獣ぶりを知る者なら、これでもまだ近いと感じるはずですが?」

「心外ですねぇ……」


 はぁ、と少しの溜息を吐く。

 それから、彼は日向が持ってきた洋服に着替えると、朝食の場へと足を向けるのだった。



⚪⚫○●⚪⚫○●



 異常なまでに広いダイニングにて、これまた異常とも言えるほどに長い長机の上座に腰を下ろした九十九は、一人きりの朝食を堪能する。


「うん、美味しいですよ。御影みかげ

「至極、光栄の至りにございます」


 彼の朝食を用意したのは、黒い執事服を纏った、黒いポニテを揺らす男性であった。

 彼の名前は御影。

 身長190センチメートル。

 縁無しの四角い眼鏡と、鋭い目つき。そして、黒いポニテがチャームポイントの男性である。


 メイドの日向と共に、この天空城にて家事全般を分担して行っている。


 ちなみに、このお城は笑ってしまうくらい広大だが、その中にいるのは、城主である鹿島九十九を含め、この二人の使用人だけである。


「ごちそうさまでした。

 とても楽しい料理でしたよ」


 美味しい朝食を頂いて、彼は御影にそう告げる。


「お粗末さまでした」


 御影は恭しくそう礼を述べると、空になった食器を下げるために、その場を離れていくのだった。



⚪⚫○●⚪⚫○●



「ツ・ク・モ・ちゃ〜ん!!」


 しばらく廊下を散歩していていると、背後からそんなハイテンションな呼び声が聞こえてきた。


(……そういえば、もう一人いましたね)


 キャラが濃いので、逆に忘れていました。


水無月みなつきさん……ふぐぅっ!?」


 ――ドスっ(水無月がタックルした音)


「ツクモちゃ〜ん!

 会いたかったよ〜!

 500年ず〜ぅっとおネムだったんだネ〜ぇ?」


 白衣をはためかせながらも現れたのは、艷やかな砂色の髪をした、赤のアンダーフレームのメガネが可愛らしい少女であった。

 彼女はそう叫ぶなり、九十九の体に抱きついて、問答無用とばかりにその唇を奪う。


「ん……く……ぷはっ♡

 ん〜、鉄と亜鉛が不足してるね〜ぇ?

 後で御影くんにお説教だね!」


 そう言うと彼女は、テヘッ?と笑いながら、そんなことを宣った。


 彼女の名前は水無月。

 身長130センチメートルで品乳(貧乳ではない)。

 いわゆる幼児体形である。

 彼女は使用人ではなく、この城アルドラの警備と、武器庫の管理、また、武器やシステムの作成を担当している。


 因みに、知覚系スキル【絶対味覚フルテイスト】と【絶対音感パーフェクトピッチ】の持ち主で、その人の味や音から、体の隅々まで把握するという特技を持っているため、医者としても活躍している。


「水無月様、お戯れがすぎると思いますが」

「えぇ〜?

 そんなコトないよ〜ぉ?」


 水無月はそんな風に軽く流すと、サササと俺の隣に回る。

 日向はというと、若干膨れ気味である。

 どうやら嫉妬しているらしい。


「それで、ツクモちゃん。

 今日は何か予定ある?

 ないなら、部屋でイイコトしな〜ぁい?」

「それは魅力的な相談ですね……。

 わかりました、今から伺いましょう」

「ご、ご主人様……!」


 九十九がそう答えると、日向が何か焦った様に、彼を呼び止めた。


「日向さんも行きますか?

 水無月さん、いいですよね?」

「いいよ〜ぉ、別にぃ。フフッ」

「そ、そう仰るならば……」


 どうやら、折れたらしい。

 こうして僕たち三人は、水無月の持つ部屋へと足を向けることになるのだった。

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