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仮面  作者: 悠里
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第一話

『人間は仮面を被って生きている』




そう最初に言ったのは誰だったのか。

本当の自分を隠し、仮面を被り、人付き合いや学校や仕事をしている。

僕にはその仮面が見えた。比喩ではなく、本当に誰も彼も仮面を被っているように僕の目には映るのだ。


だから僕は、両親の顔も、クラスメートの顔も分からない。人によって仮面の形や模様が違うから、それで判別している。


「こんなところにいたのか。葉蔵(ようぞう)


聞き覚えのある声に顔を上げると、般若の仮面を被った少女が立って腰に手を当てて僕の顔を覗き込んでいた。

因みに葉蔵というのは僕の本名ではない。彼女が勝手に付けた名前だ。


彼女の名前はコノミというらしい。本名ではないらしいが。


「仕事じゃぞ葉蔵。今回のターゲットはこの男じゃ」


年齢に相応しくない喋り方をするコノミが書類を差し出してきた。僕はその書類に目を通す。


山本一馬(やまもとかずま)。17歳。レイプ魔。親が政治家の為殆ど罪になることなく反抗を繰り返している。


「書類には目を通したな?では行くぞ葉蔵。成敗じゃ!」


元気良く右手を掲げてそう言うコノミを横目に、僕は自分の両手を見詰める。

僕の両手は、汚れているーー。





「畜生!何なんだよこれっ!」


山本らしき男が両手足を縛られもがいている。バーで泥酔していたところを連れ出し、この廃倉庫まで運んで来た。


「離せ!離しやがれ!」

「煩い男じゃのう!お主、今までの罪を償う覚悟は出来ておろうのう?」

「罪?はっ、そんなの知らねえよ!俺は自分の好きなようにする!それだけだ!」

「このゲスが!!葉蔵、やってしまえ!!」


僕は頷くと、山本の仮面を両手で掴む。たとえどんなに自分勝手に見える人間でも、誰しもが仮面を被っているのだから。


「な、何して……?」


そして、

仮面を、外した。




目を見開いたまま、涎を垂らしている山本。

仮面を外された人間は、人間でなくなる。言葉を喋る事も無く、反応もせず、ただ食事と排泄をするだけの生き物になる。


僕が自分の呪われた能力に気付いたのは、つい最近のことだった。母が父と離婚したがっていたが僕という子供がいるから我慢していることを知った僕は、自分をさらけ出して欲しいと母の仮面を外した。

その結果が、母を廃人にしてしまった。


コノミと出会ったのは、その時だ。

どこからか僕の能力を知ったコノミは、僕に法で裁かれない悪人を自分達の手で裁かないかと誘って来た。


どうしてその誘いに乗ったのかは分からない。ただ、この能力が必要だと言われて嬉しかったのかも知れない。罪の意識が軽くなると思ったのかも知れない。




コノミと別れた後、自宅に戻った僕は洗面所の鏡を見る。

そこには、仮面を付けた、僕がいた。





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