2話 新入生
2話 新入生
結構登ってきたのに、まだ学園見えてこないぞ。時間も結構やばいのに。
そこまで急じゃないけど、すごく長い坂道を全速力で走り続けて5分。やっとアドレイザ学園の一部が見えてきた。
「やっと見えてきた!」
学園に近づけば近づけほど、学園の全体が見えてくる。その大きさはありえないほど大きく、小さな村一つ分はある大きさだ。
「ハァハァ、マジかよ……」
これはさすがにデカすぎだろ。俺はあまりの大きさに、時間のことを忘れて呆然と立ち尽くしてしまった。
「おーい君、新入生の子か?」
自分に声をかけられていることに気づき、ふと時間のことを思い出した。
「そうです!体育館ってどこですか?」
勢いよく事務室の前へと行くと、事務のおじさんはちょっとだけ笑いながら体育館への行き方が書かれた紙を渡してくれた。
「入学式に遅刻ギリギリとは、青春だね〜 時間がないから短く説明するね。まずこの紙が体育館への行き方が書かれた物だから、これを見ながら行けば大丈夫だよ。後は体育館に着けば指示があると思うから。入学おめでとうね!」
「ありがとうございます!」
おじさんはとても優しく、俺が見えなくなるまで笑顔で手を振ってくれた。周りの校舎を見る暇もなく、体育館へと真っ直ぐに走り続け、何とか遅刻せずに体育館へと着けた。
「ハァ、ハァ、やっと体育館に着いた。遅刻しなくてよかった!」
大きく一回深呼吸して、体育館の扉を開けた。体育館の中にはたくさんの新入生が座っていて、今にも始まりそうな雰囲気が漂っていた。
近くにいた先生に自分の名前を言い、席の場所を教えてもらい、自分の席へと歩いていると、自分の席の近くに見慣れた顔が見えた。
しかし、喋りかけずに席に着き、走り続けて疲れた足を休めた。そして、先生が舞台の上へと上がり入学式が始まった。
1時間半の入学式が終わり、休まずに学園まで走ってきた疲れと、体感では10時間に感じた入学式で身体中の力が抜けて立ち上がれなかったヘイドに誰かが近くづいてきた。
「おーい、ヘイドっ!」
聞きなれた声と共に、かたを優しく叩かれる感覚があった。ヘイドは叩いた人の顔を見ずに、言葉を返した。
「なんだよ、アイリ。てか、なんでお前がここにいんだよ」
「なんでって、私もダンジョンとか冒険してみたいし、それにヘイドのお母さんに頼まれたんだよ。ヘイドは夢中になると周りのこと見えなくなるし、危なっかしいから」
「なんだよ、別に大丈夫なのに余計なことしやがって」
ちょっとだけため息をこぼして、下を向くヘイドとは逆に、アイリは笑いながらちょっとだけ嬉しそうだった。
「まあいいじゃん! 私たち子供の頃から同じ学校行ってたし、親同士も仲いいんだから。それに私はちょっと嬉しいしね! またヘイドと同じ学校行けて」
「そうだな! 知ってるやつが1人いると安心できるしな!」
そんなこんな話てるうちに、クラスの前へと着いた。
「今気づいたけど、私とヘイドって同じクラスだったんだね!」
「確かに一緒っだな! 俺も今気づいた。とにかく早く入ろうぜ」
ヘイドが扉を開けて中に入ると、教室には30人ぐらいの生徒が席に座っていた。ヘイドはまず、黒板に貼ってある自分の席の場所を確認して、窓側の一番後ろの自分の席に着いた。
教室の中はとても静かで、誰も喋ろうとはしていなかった。まあ入学仕立ての頃は大体こんなもんだろう。ヘイドは先生が入ってくるまで外の景色でも見ようとした瞬間、前の男子が話しかけてきた。
「なぁなぁ、このクラスの女子レベル高いと思わねぇーか?」
ヘイドの前の男子は、大胆にイスにまたがり、小声でヘイドに話しかけてきた。ちょっとだけびっくりしたヘイドは、とっさに『う……うん確かにレベル高いな!』と言ってしまった。
ヘイドの前の男子はそのまま話を続けた。
「お前はどの女子が1番可愛いと思う? 俺は1番右側の、前から3番目の子が1番可愛いと思うんだよな! 確か、お前の後に入ってきた子だよ」
「あぁ、アイリか。確かにあいつ可愛いもんな! 中学の時はクラスの男子ほとんどに告られたらしいし」
何気なくアイリのことを話すと前にいた男子は、こっちを見て固まった。数秒経つと、大きな声を出すのをこらえて、『えっ! お前あの子と知り合いなのか?」と聞いてきた。
その声と同時にドアが開き、担任の先生がやってきた。
「ああ、俺の幼馴染。先生来たからまた後で話そうぜ」
「ああ、そうだな。俺の名前はセガ・ラベルだよろしくな!」
「俺はヘイド・ラドアス、よろしく!」
担任の先生は、教室に入ってくると教卓の前で止まり、自己紹介とこれからの流れを話した。
「え〜と、私が君たちの担任になった、エリナ・ペペです。これからよろしくね! そして、君たちにはこれから地下にある実技訓練室でモンスターと戦ってもらいます。もちろんモンスターは、コンピューターの作り出した幻影のような物なので危険はありません。なのでまずは地下の実技訓練室に行くので、私について来てください」