夢を叶えるために
1話 夢を叶えるために
「ここがラエル王国か。やっぱ王都は人が多いし、建物もすごいな!」
俺は冒険者になるために、小さな村からここラエル王国までやってきた。
この世界にはモンスターが存在する。しかし昔から存在する訳ではなく、100年前隕石が地球に衝突してから突如現れた。
隕石は莫大な被害をもたらした、山の頂上に落ちそこから半径1000キロ圏内を洞窟とかした。
モンスターたちは洞窟の中に住み着き、洞窟を拡張して行った。しかし、地上へは出て来ず、洞窟の近くにあった村や街には、被害がなくすんだ。
この隕石やモンスター達に興味を持った科学者や研究者は、協力し合い多額の金を出して、剣士達を連れ洞窟に調査に行った。
しかし、調査から帰ってきた者は居なく洞窟への立ち入りは禁止された。
それから10年が経ち、1人の男が洞窟へと入り、1ヶ月で洞窟から出てきた。男は洞窟から出てくると共に、世界の人々に洞窟で起こったこと全てを話し、ここから人々は洞窟のことをダンジョンと呼び始め、ダンジョンに挑む冒険者が現れ始めた。
そして、冒険者になる方法は2つある。
1つは王都にある冒険者訓練学園を卒業して、冒険者になる方法、もう1つは訓練学校には行かずに素人のまま、冒険者になる方法だ。
素人のまま冒険者になる方法は、簡単に冒険者になれるけど、冒険中にモンスターに殺されることが多く、この方法を使う人はなかなかいない。
俺は、この方法で冒険者になろうとしたけど、親に反対され訓練学校を卒業して冒険者になる方法を選ぶことになった。
もう1つの訓練学校を卒業して冒険者になる方法は、冒険中にモンスターに殺されることは少ないけど、卒業までの道のりで訓練学校をやめる生徒が多く、中々卒業できない。
だけど、俺は絶対卒業して冒険者になる。そしてまだ誰も辿り着いていない最下層まで冒険し尽くすんだ!
それで、まずはアドレイザ訓練学校に行けばいいんだったよな。確か、もらった地図に学園の場所書いてあるから、地図見ながら行けば着くよな。
「って、なんだよこれ! ごちゃごちゃしてて全くわかんねぇぞ!」
田舎育ちで勉強のできない俺にとって、たくさんの店が並び、都市としてとても大きな王都の地図は全く読み取れなかった。
「どうすっかな〜」
この巨大な王都で、地図の読めない俺は巨大な砂漠に入り込んだアリと同じようなもんだ。
「時間もそんなにないし、街にいる人に学園への行き方聞くしかないか」
それにしても人多いな。こんなに人多かったら、学園の生徒とか1人ぐらいはそこらへんにいるだろうし、その人に学園への行き方聞くか。
人混みのすごい道を流されるまま進んでいると、流れに反して人が多く集まっている場所が見えた。
「ちょっと見に行ってみっか」
人混みの流れを上手く使いながら、人が多く集まっている場所に着くと、何やら決闘をやっているみたいだ。
ここら辺の大きな街ではよく起こることらしいけど、小さな村で育った俺には、全く見慣れない光景で決闘に見入ってしまった。
「おい、確かあの髪の長い女ってアドレイザ訓練学校のファーストクラスに入ってるレイラ・クレッドだよな」
「ああ、間違いねぇよ。レイラ・クレッドだ! あっちの男も同じ訓練学園のやつだろうけど、さっきからやられっぱなしだな」
「そりゃそうだろ。ファーストクラス相手だぞ!」
前から微かに聞こえてくる話し声が耳に入ってこないほど、俺は決闘に夢中になっていた。
決闘が終わると共に後ろからものすごい勢いで押されていることに気づいた。しかし、その時にはもう遅く、俺は決闘のやっていたスペースに押し出された。
「痛っ」
思わず声が出てしまい、一気に周りの視線が俺の所へときた。パニック状態になってしまい、固まっている俺に女の人が近づいてきた。
「大丈夫?」
女の人はそう声をかけながら、手を伸ばしてくれた。その姿はとても綺麗で天使みたいだった。
パニック状態は解けて、固まっていた体も動くようになった。
「ありがとうございます」
「いえいえ! 君はもしかして、アドレイザに入学する人かな?」
お礼以外何も言わなかったのに、女の人は俺がアドレイザ訓練学園に入学することに気づいた。俺はびっくりして、また固まってしまった。
「あっ突然言われたらびっくりするよね。君が持ってる地図がアドレイザから新入生に渡されるやつだったから、それで気づいたんだよ!」
「あっ確かに学校に通ってる人はこれ見れば分かりますよね」
俺は苦笑いしながら話を続けた。
「ねぇねぇ、新入生なら私とちょっとだけ決闘しない? 君にダメージは当たんないし、アドレイザのクラス分けテストだと思ってさやろうよ」
「えっ、そうですね。決闘やりましょうか」
俺はあまりにも楽しそうに話す女の人に勢いで押されて、決闘をやることにしてしまった。
「新入生だからまだ戦い方とか分かんないよね?」
「はい、まだ分かんないです」
「それじゃあ、剣の打ち合いだけで勝負って感じだね!」
女の人はとても楽しそうで嬉しそうに見えた。だけど決闘のカウントが始まると、獲物を見る目になり、金縛りにあってるみたいに体が固まった。
カウントが終わると共にすごい勢いで突っ込んできて、剣が振り下ろされた。俺は避けることもガードすることも出来ずに攻撃をくらってしまった。
ものすごい攻撃をくらったのに、体は全く痛くなく体力以外は全く変わりなかった。しかし、攻撃のラッシュは続きガードして凌ぐので精一杯だった。
だけど、だんだんと相手のスピードに目が慣れてきて、ガードに余裕を持てるようになってきた。
「へー、君なかなかやるんだね! だけど必殺の一撃で終わりにしちゃうよ!」
女の人は、ものすごい攻撃をしているにも関わらず、俺なんかより余裕を持ちながら戦っていた。
攻撃のラッシュが緩み始め、その代わりに一撃一撃の攻撃力が増してきた。思いっきり振り下ろした攻撃に後方へと押し飛ばされた。女の人は剣を構えたまま、力を溜め込み始めた。
俺はここしか攻撃する場所はないと思い、足に力を溜め込み前方へと跳んだ。しかし、相手も同じタイミングで飛び込んできて一撃勝負になった。
と言っても、全く攻撃を食らってなかった女の人には、ちょっとのダメージしか負わせられず、俺は負けた。
悔しいな〜と思いながら顔を上げて周りを見てみると、決闘を見ていた人たちは俺のことを見て立ち竦んでいた。
「君すごいね! 戦いが初めてなのにここまで強いのは本当にすごいよ!」
「そうですか⁉︎」
あまり自分の凄さが実感できなかった。
「それよりあと15分で入学式始まっちゃうけど、急がなくて大丈夫?」
「え? ……あっ、急がないとやばい! てか学園までの道分かんないっ!」
「学園までの道ならこの坂真っ直ぐ登っていけば着くよ」
「本当ですか⁉︎ ありがとうございます! あっ俺ヘイド・ラドアスです」
「私はレイラ・クレッドよろしくね」
戦い初めてで私にダメージ与えるなんてね、しかも結構ガチだったんだけどな〜 気に入っちゃった〜
あと15分ってマジでヤバいぞ!なんとか間に合うかな。