表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

襲撃

 結局夜襲はなかった。何度か緊張で起きてしまったせいか体調はよくない。

「まさかオーク共宴会してるんじゃないだろうな……」

 そう思うと無性に腹が立ってきた。

 というかだいたいなんで俺はこんなところにいるんだ。思い返すだけでも腹立たしい。とっととフラグたててかわいいエルフの女の子とズコバコしたいもんだ。でも現状一番フラグがたってるのはカリエなんだよな。顔はいいけどあの性格はリアルだとないわ。いや、もうちょっと余裕出てきたらかわいく見れるのかも。

 などとぼうっと考えているところにいつもの不機嫌顔でカリエがやってくる。

「おい、いつまで寝てる気だ。とっとと起きて会議に顔を出せ」

 あ、やっぱりねーわ。


 とりあえず朝の一杯を飲みながら会議に顔を出す。

 とは言ってもこっちに来てからまともな飲み物を飲んだ記憶がない。いまだって怪しげな汁をすり鉢状の植物の葉からすすっている。薄くてちょっと青臭いお茶のような感じだ。

 ああ、キンキンに冷やしたコーラが飲みたい。こんな思いをするくらいなら異世界になんか来たくなかった。こちらに来てから何度目かわからないため息をつく。

「お疲れでしょうか?シンイチ殿」

 女王が尋ねてくる。まあこの人は目の保養になるけど。

「いや、かまわないでくれ。それより状況は変わらずか」

「そのようですね。ポストからの報告も、異常はないとのことです」

 ふむ、面倒だな。偵察を出すべきか。状況が見えないのは痛い。とは言えあちらも偵察が帰ってきてないのだから用心しているのかも知れない。膠着状態が続けば不利なのは相手だ。あえてこちらから手を打つ必要もないか。

 そう考えていると一人の若いエルフが発言してきた。やや疲れた顔をしている。

「こちらから攻めていくのはどうでしょうか。前線の皆も状況がわからずストレスがたまっています」

 ストレスだぁ?そんなもん知るか。こっちだって溜まりまくりだよ。言いたくなったがこらえる。エルフ達の心証は害したくない。

「長期戦は物資が限られる相手の方が不利だ。こちらはゆっくりと相手の出方をうかがえばいい。だいたい昨日の戦果は森の中での奇襲という好条件が整ったからだ。あまり自分たちの力を過信しすぎるな」

 釘をさしておかないと独断専行される危険性があるからな。できれば手駒は失いたくない。

 とは言え状況がわからないのはこちらにもストレスがかかっている。偵察の範囲を広げるのが妥当だろう。

「遊撃隊を再編成し、四人でひとつの隊とする。四分隊の編成として二分隊ずつ偵察に出す。こうすればより広い範囲を走査できるな。足りない人員は直轄部隊から出す。今回は森のぎりぎりまで走査範囲を広げろ。目的はあくまでオーク本隊の発見だ。もし逃げていたとしても痕跡は残っているはずだ。確実に見逃すな」

 少しばかり人員がつらいががんばってもらうしかない。その他細々とした指示を出し朝の作戦会議を終えた。


 状況が変わったのは昼前だった。

「敵襲です!現在ポスト4が交戦中ですがオークの数が多く捌ききれません!」

「クソっ!よりによってこのタイミングかよ!」

 偵察隊の交代の隙をつかれた格好だった。いや、本来は偶然なのだろう。しかしあまりにも出来すぎたタイミングだった。誰かの悪意を感じざるを得ない。

 遊撃隊と直轄部隊の伝令に指示を出す。

「遊撃隊全隊は直ちにポスト4の援護に向かえ。各ポストに伝令だ。ポスト4で交戦中、ポスト3は援護を実施、ポスト1、2はそのまま警戒しつつ別動隊の襲撃にそなえろ。その後にオーク軍の偵察も実施だ。数の把握と大物の有無だ。場合によっては全隊を動かすことになるかもしれん」

 だがなぜポスト4はいきなり動いた?援護を待つ余裕すらなかったのか?功を焦ったのか?考えても答えは出てこない。

(どちらにせよ後でお仕置きだな……)

 結局、そんなことを考えていられたのはこの時までだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ