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戦略シミュレーションは得意なんでね

 この世界のエルフは俺が予想していたものと大差なかった。いわば標準的なエルフ像というやつだ。

 弓と短槍が得意で、森の中で音も立てずに動くことができる。正直目の前に隠れていても気づかないレベルだった。魔法も使えるが、これは人数自体少ないらしい。攻撃魔法は風の魔法、束縛は樹の魔法、いわゆる精霊魔法である。火や水の魔法もあるらしいがここでは使えないらしい。

 反してオークの情報は少ない。だが、エルフ達が言うにはひどく臭く、何十メートル先からでもその存在はわかるらしい。そしてずいぶんと頑強だということ。

 オークは通常三十匹程度で集団を作り活動しているらしい。数自体はエルフの方が上だが、オークは全て戦闘要員と考えるべきとのことだ。エルフは総勢百人足らず。うち戦闘に使えるのは六十人ほど。非戦闘員は全て村の大きな建物に入れて、戦闘要員を五人程度割けば問題はない。あとは相手の進軍経路だ。

「オークを見つけたのは?」

「僕です。朝の巡回の時に東の森の外れで見つけました。4、5匹だったと思います」

 こたえたのは若そうなエルフであった。いくぶんおびえている様子だが、まだ若いのだから仕方ないだろう。

「得物はわかるか?あとはどんな様子だった?」

「すみません、そこまでは……。ただ、なにかを探している様子でした」

 舌打ちをする。どうにも情報が少ない。この村の正確な位置が知られているとは限らない。だが知られていると考えるのが妥当だろう。となると発見したのは斥候で、本隊はまだ後ろにいる。

「大人数で行軍しやすいルートはあるのか?」

 だがこの問いには誰もが首をかしげる。攻められたときには逃げればいいという考えだから仕方ないのか。

 ならば次善の策だ。この村を中心に発見地点に向けて扇状の監視網を構築し、密な連絡を取り合う。これが現状もっとも効率的な配置。前衛に四ポスト、後衛に三ポストを置く。各ポストには弓兵と槍兵を二人ずつ、伝令を一人ずつ。さらに遊撃隊を編成する。遊撃隊も五人で一個分隊。それを三個分隊。村の本陣には救護、伝令、防護を兼ねた直轄部隊を置く。これは八人編成でいいだろう。

「いいか、絶対に姿は見せるな。相手の攻撃範囲から離れたところから攻撃を仕掛けろ。それと、できるだけ相手より大勢で攻撃するんだ。場合によってはポスト間での挟み撃ちを画策してもいい。絶対に、まともに立ち合おうとするな。それでは各員配置につけ。第一遊撃隊は前々哨として、オークの先遣部隊の捜索に当たれ。その他の遊撃隊は待機とする」

 必要な準備はこれで整った。うまくオークの斥候部隊を先に叩ければそれでよし。そうでなくとも本隊の進軍は時間がかかるはずだ。地形を利用しろ。大人数であれば森林の中での行動には大きく制限がかかる。こちらは森林では最高のパフォーマンスを持つエルフだ。各個撃破を狙えば多少格上の相手でも問題はない。

 だが、それより問題なのは村の状況だ。周りに柵などなく、侵入が容易なのだ。しかし逆に捉えればどうだ。どこから攻められても逃げることができる。一応巡察は出すが、村に攻め込まれた場合でも、最悪撤退戦を行いながら配備済みの連中との挟み撃ちも期待できる。

 さて、ここからは持久戦だ。


 女王はなにやら浮かない顔をしている。しまったな、女王から激励の言葉でも与えさせれば士気も上がったかもしれない。だがもう後の祭りだ。終わってからねぎらいの言葉でもかけさせればいい。

「そういえば女王様よ。あんたは何ができるんだ?」

 だが女王が口を開くより先にカリエが割って入ってきた。

「はぁ?何よさっきから偉そうに。お前ごときヒト風情の罪人がなんでそんなにいばってんのよ!」

「いや、まあこれが俺の素だからな。ついでに今の俺は執行猶予期間中のうえに軍師だぞ。罪人どうこう言われる覚えはねえなあ」

「ぐぐぐ……調子にのって……」

「そこまでにしておきなさい、カリエ。今となってはこのヒトを頼るしかないのです」

 見かねた女王がカリエをたしなめる。まあ個人的には調子に乗ってるのはどっちだって話だがな。

「さて、私に何ができるかとの問いですが、戦闘などには秀でておりません。あなたの世界のエルフは知りませんが、私のようなハイエルフは子を生み、育て、部族を作ることを目的としているのです。せいぜいが、癒しの力と精霊との会話程度です」

「その精霊との会話で、オーク共の居場所はつかめないのか?」

「残念ながら無理ですね。会話と言っても精霊の意思が一方的に流れてきて、その流れを局所的に動かす程度なのですから」

 はあ、なるほど。使えるかどうかわからない技能だ。だがまあそうすると女王無双は期待できないわけか。だけどそれをやられるとこちらの立場もないし妥協するべきか。

「そうか……。よくわからんが、まあどっしり構えてくれれば問題はない。長があわててたり不安がってると指揮に影響がでる」

「そう……そうですか。わかりました。では、私もあなたを信じましょう。……そういえば、名を聞いておりませんでしたね。私はエレゼニア。エウドリアに連なるエレゼニアと覚えていただければ結構です」

「そうか。俺の名前は……」

 そういえばしばらく本名プレイはしていなかったが、こうして異世界転移してきたからにはしてみるか。

「俺の名前は、本間真一。シンイチと呼んでくれ」

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