さよなら世界。
ライヴ感()重視なので作者にもこの先どうなるかわかりません。むしろ「俺」の設定もないまま書きはじめてます。
勢いのままの習作に耐えられる方におすすめです。
なお知識に偏りが多いので、ツッコミ、訂正、お待ちしております。
「お前の子どもが欲しい」
それが姫騎士から俺への告白だった。だがひとつ想定外なのは、彼女はオークだったのだ。
俺が異世界にやって来たのはほんの一週間前。それまではまあごく一般的な、いや、ここは隠したところで仕方ない。いわゆるニートであった。
親の脛をかじりながら自堕落に生きる日々。一応大学も2年ほど留年しながら卒業したのだが、その後の進路なんてのは決まってなかった。それでも親には就職したと嘘をついて6畳一間のアパートで仕送りを頼りに暮らしていた。だが、そんな生活も一年も続かず、つい先月ニートであることがバレてしまった。仕送りも止まって、バイトをしようにも自堕落に慣れきった身体は働くことを拒否している。
(どうする……エロ同人でも描いてみるか。でも絵心ないしな……。ラノベの新人賞でも狙うか。でもなあ……)
などとやくたいもないことを思いながらも一切行動はしてこなかった。どうにもニートらしい。
結局なにもしないまま運命の日を迎えた。クリスマスイブであった。
その日は絶対に外に出ないと思っていた。クリスマスイブなんざくそくらえだ。世界中のカップルはマジ滅びろ。
ニートの上に童貞だってんだからたちが悪い。
かと言ってネトゲでフレンドに会うのも嫌だ。いや、会わない方が嫌だ。今日インしてない奴は絶対によろしくやってる。そんな事実を見たくない。あいつらも絶対に同じ穴の狢だ。小さなプライドを刺激されるような事態は嫌だ。だから普段やってるネトゲもやらなかった。
でも暇潰しは必要だ。
そう考えながらネットサーフィンしていると、とあるサイトを見つけた。異世界ファンタジーMMOのファンサイトだ。だが今さら別のネトゲをやる気にもならない。そう思いながらもつらつらとそのサイトを見ていく。
どうもそのネトゲはキャラメイクに重点がおかれているらしい。身長から体格、肩幅や足の長さなどいろいろな部分が自由に変更出来るらしい。どころかウェブカメラで自身をモデルにキャラメイクできるときた。
「なにこれくだらねー」
そう笑いながらクライアントをダウンロードしていた。どうせ暇だししばらくキャラメイクで時間をつぶすつもりだった。気がのればそのままプレイしてもいい。どうせ一週間は無料だとのことだ。
最初は普段通りのエロキャラを作っていた。身長は低めでロリ顔だがグラマラスなボディ。理想の女を作ってにやにやしていた。だがそれも飽きて、
「そういやカメラでキャラメイクできたんだっけ……」
誰に聞かせるともなしにつぶやき、カメラを起動させた。
画面の指示通りに顔を映す。全身を映す。ついでに決めポーズもとってみる。
「うわっ、これはひどいわ」
出来上がったのは確かに俺だった。だが逆に面白い。どうせ暇潰しだ。真剣にやるわけでもない。そのままキャラメイクを進め、登録する。その頃には何かにとりつかれるかのように動いていた。そしてストーリーを始める。
一人称視点のカメラでオープニングムービーは進む。世界観などどうでもいい。それより自分の姿をした英雄候補を動かしたかった。
ぐう、と腹がなった。
そういえば起きてから何も食べていなかった。食い物を漁るもたいしたものは残っていない。今から米を炊くのも面倒だ。
仕方ない。そう思って外に出る準備をする。と言ってもよれよれのジーパンを履いてTシャツの上にいつ洗ったかもわからないパーカーを羽織るだけだ。フードを目深にかぶり、薄い財布を懐に入れる。
(海苔弁か、からあげか……。あ、クリスマスならちょっと豪勢でもいいな)
朝の、外に出ない誓いなんてものは空腹の前に無意味であった。
散らかったごみを避けながら外へ出る。ボロアパートの2階にある自室から階段を降りる。だが、
つるりと滑った。
そこから、現世での記憶は途切れた。