8月16日
鳥追笠が揺れる。
むせかえるような暑さが袖口を貼り付けた。
赤と青の着物が混ざり、身ごろを握りやわらかに回った。
ひこさ頭巾の亡者達は囃子に誘われ、火を囲み赤い鼻緒で砂を煙らせる。
笛に白い手が漂い、黄色の帯が薄闇に映えた。
もうどれほど踊ったか。
篝火の熱にあてられて三角の視界で橙色がゆらりとにじむ。
亡者の列を抜け出すと吸い込む息は生ぬるい。
ふとすれ違った端縫の身ごろに、見慣れた祖母の小紋が見えた気がした。
夏に参加する盆踊りをテーマに書いてみました。
踊り子は皆、亡者を思わせる頭巾や特殊な笠で顔を隠します。
女性は先祖の着ていた着物を切り、縫い合わせた着物で篝火の中を踊るのです。