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それからの時間、俺と海山はただ黙って夜が更けるのを待った。
部屋の中には時を刻む秒針の音だけが響く。
いつの間にか日は暮れ、周りの家からは夜の光が漏れ出し、その光すらも消えた頃海山が話しかける。
「安山君、そろそろ行こうか」
海山のその言葉に俺は解った。とだけ返し、ビニール袋を大きな旅行用のカバンの中に詰める。
二人でそのかばんを一つずつ車の中に運び込む。
俺は免許は持っていなかったが、海山は免許を持っていたのでカバンをトランクに押し込めると海山は運転席に座り車のエンジンをかけた。
静まり返った街の中に、色々と改造された車の派手なエンジン音が響く。
「こんなバカみたいな車が役に立つときが来るなんてね……」
ぼそりと海山は呟き、車を走らせる。
夜の街を俺と海山は山の方に向かって車を走らせる。
しばらくは街の中を走らせていたが、やがて民家も見当たらなくなり、上り坂が始まる。道はどんどんと狭く曲がりくねり暗闇が支配するようになっていく。
山の頂上より少し手前で海山は車を止める。
「安山君。この辺で」
海山はそう言うと車を降りトランクの方に歩き去る。
俺も彼女に少し遅れて車を降り海山の後を追う。
俺と海山は無言でトランクの中の荷物を取り出し、山の中をかき分けていく。
暗い坂道を懐中電灯で照らしながら進むと、荷物を埋めるにはちょうど良い少し開けた所に出る。
俺は海山に手渡されたスコップで土を掘り、鞄を二つ埋められるくらいの穴を掘りそこに二つの鞄を投げ入れる。
そして投げ入れたカバンの上に今掘り起こしたばかりの土をかぶせる。
海山は黙ったまま、少しずつ土を被せられ姿を見えなくしていく鞄を見つめている。
その表情はどこか穏やかで、今までの暗い過去からようやく解き放たれるという開放感のようなものも含んでいた。
ようやく俺が土をかぶせ終わり手にしていたスコップをほり投げ座り込む。
「これで私と安山君は共犯だね。これは私と安山君だけの秘密、安山君が黙っていてくれるのなら……」
海山はそういて疲れ果て今埋めたばかり穴の所にへたり込む俺のとなりに座ってこちらの方を見る。
「私は安山君の物になるよ」
海山はそう言って俺にキスをし、俺は海山のキスを無防備に受け入る。
それから海山は立ち上がり、車の方に引き返す。
海山の後に続き車に向かい、助手席の扉を開け席に座ると海山はエンジンをかけて今来た道を戻り始める。
海山の家に着いたころにはうっすらと夜は明けだしていた。
精神的にも体力的にも疲れた俺はその日海山の家に泊まり、二人でベッドに潜り込み泥のように眠り続けた。




