表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 流民
3/11

 最後に話したあの日から海山は学校を休んでいた。

 あの日から何日かたった晴れた日の休日、俺はする事もなく面倒な家にもいたくない気持ちで街に出てどこに行くともなくただ街をふらついていた。

 街を当てもなく、しばらくぶらぶらと歩いていたが、少し疲れ、近くの喫茶店に入りカフェオレをたのみ、少し混み合う店の中で空いている席を見つけそこに座る。

 カフェオレを一口飲み、ポケットの中からタバコを一本取り出しそれに火をつける。

 一口煙を吸い込み、身体の中に取り込みゆっくりと煙を吐き出す。

今まで街中でタバコを吸っていても止められたことが無いほど俺は少し老けているようで、今日も俺がタバコを吸う事には誰も疑問を抱いていないようだ。

 一本目のタバコを吸い終わり、俺はコーヒーカップを見つめる。

 するとどこかで突然大きな声が聞こえ、少しざわついた店が一瞬静まり返り店の誰もがその声のした方に顔を向ける。

 俺も周りの人達と同じようにその声のする方を振り返と、三十を過ぎたくらいの男の前で女の子が何かをわめいている。

 声に聞き覚えがあったように思え俺はその女の子の方をじっと見る。

 その声は最近学校を休んでいる海山だと気づくのにそれほどの時間はかからなかった。

 海山だと解った瞬間また俺は身体が勝手に動いてしまい、俺は海山の方に歩きだし彼女の手を取る。

 手を取られた海山は少し驚いたような表情を見せたが、俺が手を引いて店を出ようとしてもそれに抵抗する事もなくすんなりと俺の手の引く方に導かれるかのように付き従った。

 その光景を呆気にとられて見ている男を無視して、俺は海山を連れて店を後にした。

 店を出てしばらく歩いていると、いつの間にか手を引いていた俺の手は海山に引かれているかっこになり、今度は俺が黙って見山に手を引かれて付き従う事になった。

 しばらく海山に手を引かれ歩いて行くと少し大きな公園に辿り着く。

 その公園は休日の昼間にしては人気なく、どこか寂しく感じる。

 公園に辿り着いた海山はようやく俺の手を離し俺に背中を向けたまま肩を震わせている。

 それを見た俺はもしかすると凄く悪い事をしてしまったかもしれないと思い、海山に声を掛けようとしたその時、突然海山が堪えきれなくなったかのように声を上げて笑い出す。

その光景の意味が解らず、俺はしばらく海山の姿を見続ける。

 ひとしきり笑った後、海山はようやく落ち着いたのかこちらの方に向き直り、まだ少し残る笑顔を見せながら俺に声を掛ける。

「あー面白かった」

 何が面白かったのか俺は意味が解らずに複雑な表情をしていると、海山はそれに気づいたのか更に言葉を続ける。

「だって、あの時のあいつの顔見たでしょ?凄く馬鹿面して。なかなかあんな顔見れるもんじゃないよ。面白くなかった?」

 俺には海山の行っている事の意味が解らず、ただその言葉を聞いているだけしかできなかった。

 まだ困惑している俺の表情を見て海山は不思議そうにこちらを見ている。

「面白くなかった?」

 海山の言葉に何と返していいかわからずにただ曖昧に「う、うん」としか俺は返せず海山の顔を見ているだけしかできなかった。

俺のその返事に海山は「何だ、つまんない」と返し近くのベンチまで歩きだし、そこに腰掛け、俺に声を掛ける。

「そんなとこに立ってないでこっち来て座ったら?」

 その声でやっと我に返った俺は海山の座るベンチに向かい海山の横に腰掛け、ようやくまともに話ができそうな所まで気持ちが落ち着き海山に話しかける。

「さっきの人だれ?もしかして彼氏とかだった?」

 俺は海山にそう言うと海山は少し怒ったような顔をして否定する。

「そんなわけないでしょ?あんなダサい奴彼氏な訳ないじゃん」

 そう否定する海山の言葉になぜか俺は少し安心すると、海山はそれが解ったのか悪戯っぽく笑う。

「嫉妬してたの?あれは……そう、ただの知り合い。ただのね」

「べ、別に嫉妬なんてしてないよ。ただちょっと気になっただけだよ」

 俺は海山の言葉を慌てて否定した。

 その言葉を聞いた海山はただ「ふーん、そうなんだ」とそっけなく答え何気ないしぐさで空を見上げる。

 海山につられ俺も空を見上げると、まだ太陽は真上と言っていいほどの位置にいる、空を見上げながら横に座る海山の様子を横目で伺う。

 海山の顔はさっき笑っていた時とは違って、どこか悲しそうな表情を浮かべていた。

「ねぇ……どっか連れて行ってよ」

 海山のいきなりの言葉に俺はまた驚く。

「安山君が連れ出して来たんだから今からの時間面倒見てよ」

 海山はそう言うと素早く立ち上がりまた俺の手を引いて歩き出す。

手を引かれながら俺は海山に声を掛ける。

「連れて行けって、何処に?どこか行きたい所でもあるの?」

 海山はその言葉で少し立ち止まり考える。

「うーん……そうね……そうだ!今年は海に行けなかったから海に連れてって」

「う、海?今から?これから行ったら何時になるか……」

 解らないよ。と言い終わる前に海山は再び、俺の手を引き駅の方に向かって歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ