いざ、異世界へ 1
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私たちは坑道を抜けて、件の扉の前までやってきた。
不思議なことに、コウモリどころか魔物に会うことさえなかった。
悪魔が二体もいるからその妖力に恐れをなしているかのようだ。
「懐かしいどすえ」
妖狐は細い目をさらに細めて、扉を見つめる。
「さて、扉を開けるかぇ」
リーンはホイヤーさんにの首に回した手をどけて、扉の前に立つ。
ついに扉が開かれる時が来てしまった。
リーンはホイヤーさんから宝玉を受け取ると、扉のくぼみにそれをはめ込んでいく。
リーンは完全に油断している。仕掛けるなら今しかない。
そう想いレモンに目配せをする。
レモンも私に気付いたらしいが、首を横に振った。
何で? 今が格好のチャンスなのに。
扉が開かれたら、魔界と繋がっちゃう。
そうなったら悪魔が押し寄せてくるよ。
私は、魔物たちが村を焼き払う光景を想像してしまう。
今なら魔物は二体、何とかできるかもしれないのに。
私は腰のポーチに手をやると、何者かに腕を掴まれた。
だれ?
振り向くとそれはレモンだった。
「どうして? 今がチャンスにゃ」
「慌てるな、今はまだこらえるんだ。様子を見よう。えせ占い師がすんなり従っているところを見ると、何か策があるのかもしれない」
「ホイヤーさんは単に、女ったらしなだけじゃにゃいの」
「それにここで、戦うのは得策じゃない。あわてるな」
「でも……」
レモンはホイヤーさんの行動を重視しているようだけど、どう見ても単にリーンに逆らえないだけな気がする。
「仕掛けたかければいつでも相手になるどすえ」
き、聞かれた? 振り返ると妖狐がにっこりとほほ笑んでいる。
「まさか、無粋なことはしないよね。レモン君」
ホイヤーさんはレモンの肩を掴んだ。
「ああ、そんなことするわけないだろ」
レモンも答える。
「そうどすか。それは残念どすな。体がなまったいたさかい、少しくらい運動してもよかったどすえ」
妖狐の細い目は私の顔を見ていた。
やっぱりさっきの会話聞かれていたんだ。




