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「「お代わり」」
勢いがすごいの何のって……。
「慌てなくてもまだあるから」
よっぽどお腹好いてたんだね。お代わり五杯……作った夕食全部食べちゃったよ。
「ところで名前くらい教えてくれないかな?」
「人に名前を聞くときは自分から名乗るのが礼儀ってホイヤー兄さんが言ってたぞ」
「それもそうね。私はミカン・オ・レンジ。こっちはレモン・ス・パイ。あなたたちは?」
「俺様はマイヤー」
「あたいはアイヤー」
「何でこんなところにいるの?」
「ここは俺様たちの縄張りだ。文句あるか?」
「縄張り?」
マイヤーはお腹が落ち着いたのか、機嫌がいい。
「あなたたちエルフよね?」
「純血だぞ。えらいだろ」
マイヤーが胸を張る。
「そう言えばさっき言ってたホイヤーってひとは?」
「ホイヤー兄さんは男前でかっこいいんだ」
「鼻筋も通っていてブルーの目がとってもきれいなの」
アイヤーがうっとり。アレは恋する乙女の顔だ。
「そのホイヤーってやつはどこにいる?」
レモンが不機嫌だ。何かあったのかな?
「もうじき戻ってくると思うぜ」
やっぱりエルフ何だろうな。
まさか生きてるうちにエルフにあえるなんて思っても見なかった。
「これはこれは美しいお嬢さん。家の子がこんなになつくなんて。あなたの美しさに私も見とれてしまいますよ」
いきなり肩を抱かれた。
「てめ、ミカンから手を離せ」
レモンが剣を握る。
「おおっと失礼。あまりに美しかったものですからつい」
「「ホイヤー兄さん」」
この人がホイヤーさん?
年齢は二〇代半ばくらいだ。
レモンより頭一個分背が高い。
確かに鼻筋が通っていて、吸い込まれそうなブルーの瞳。
それに大人の気品が漂っている。
耳がとがっているからエルフかな?
「ふっ、そんなに見られると照れてしまうよ。美しいお嬢さん」
「あなたもエルフなんですか?」
「自己紹介がまだだったね」
金髪の前髪を払うと「ホイヤーと申します。残念ながら半分しかエルフの血を受け継いでおりません。以後お見知りおきを」
私の右手の甲にキスを落とした。
まるで小説の一シーンみたい。
思わずときめいてしまった。
「わ、私はミカン・オ・レンジ。こっちがレモン・ス・パイ。私の幼なじみです」
「よろしくな」
やっぱり機嫌悪い? レモン。
「こ、これは……あなたたちは鍾乳洞に行くのですか?」
「なぜそれを?」
そんなこと一言もはなしてないのに。
「私はこう見えても占いを生業にしていましてね」
「占い師さん?」
すごーい。レモンとの相性占ってもらおうかな?
「むむ、ミカンさん。あなたは運命で結ばれる人が現れていますね」
ええ、それってレモン?
「ほら目の前に」
「目の前?」
「何だよホイヤー兄さんまたナンパかよ」
また?
「なんだよえせ占いかよ」
「失敬な、本当なんだよミーちゃん」
ミーちゃん?
一気に神々しいイメージから軽いイメージに変わっちゃったよ。