8
坑道前ではギャリさんが何事もなかったように夕食の準備をしていた。
なんだかいつも通りのギャリさんは安心感を覚える反面なんか不思議な気持ちになった。
心配じゃないのだろうか?
傷こそ治ったものの意識を失っているフーリクスさん。
今はベットで寝ている。
しかしギャリさんは心配する様子を微塵も見せない。
本当はそばにいたいんだろうね。私たちに遠慮しているんだね。きっと。
そう言い聞かせて納得する。
それにしても……。
「「わ~」」
コボルトの子供。
未だ全身の毛並みがふさふさしてまるで縫いぐるみみたい。
コボルトの村の生き残りとかいってたっけ。
何者かがコボルトの村を襲ったんだよね。
いったい何のために?
こんなに可愛いのに。
なんだか胸の奥に何かがつかえたような感覚を覚えた。
夕食をすませた私たちはそれぞれの部屋に戻っていった。
「ねえレモン、あの人たちは何でフーリクスさんを襲ったと思う?」
愚問かな?
フーリクスさんのことを知らなければ私たちだって……。
「旅人がコボルトを恐れるのは不思議なことじゃない。
フーリクスには悪いが運が悪かったと言うしかないんじゃないか?」
やっぱりそう思うよね。
「うん」
力なく返事をする。
コボルトは農作物や家畜を襲ったりするもんね。
臆病だから人に直接危害を加えないけど、人から見れば妖魔……倒すべき対象だもんね。
「誤解が解ければいいのに」
コボルトだって人と同じように生活してるのにね。
「気になるのは近くにコボルトの村があったってことだな」
「どうして? それが?」
気になることなの?
「規模はわからないが、村一つつぶすのは普通の人じゃできない」
「そっか、冒険者が絡んでるのね」
確かに冒険者に依頼してる可能性は否定できない。
「でもそれが何で、気になることなの?」
「昼間の戦士たちは恐らく冒険者だろう。もしコボルト退治の依頼を受けていたら? どうすると思う?」
冒険者がコボルト退治の依頼を受けていたら?
「依頼は完遂するのが条件だよね」
「しっ、静かに!」
え? どうしたの?
真剣な顔つきになるレモン。
「何か聞こえないか?」
「何か?」
耳を澄ますけど聞こえないよ。
「ち、やつらか!」
レモンは剣を握りしめ飛び出していった。
私もすぐ後を追う。
レモンが向かったのはフーリクスさんたちの坑道。
入り口には松明を持った戦士が一人。
「何してるの?」
思わず叫んでしまった。
昼間の三人組の一人だ。
レモンは有無を言わさず攻撃を仕掛けた。
見張りらしき男を気絶させるとレモンが中へと駆け込んだ。
坑道の中にはいると剣撃の音がしっかり聞こえる。
「フーリクスさん」
大声で呼んで見るも返事はない。
レモンは迷わずフーリクスさんたちのいる部屋へと駆けていく。
そこには血に染まったフーリクスさんとおびえる子供、必死で庇うギャリさんがいた。
戦士風の男たち二人も返り血を浴びてたっている。
「フーリクスさん!」
血まるけでなお相手を威嚇する。
もういいよ。
レモンがフーリクスさんを庇うように割ってはいる。
私はすかさず回復呪文をかける。
その時だった。まるで糸が切れるようにフーリクスさんが倒れたのは。
「しっかりして、フーリクスさん」
フーリクスさんの体から急速に熱が引いていく。
「ダメだよ。フーリクスさんしっかり!」
ギャリさんが異変に気がついて駆け寄ってくる。




