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「こちらが殿方、向こうが姫方が使うとよいどすえ」

 紙のスライド扉一枚挟んだだけの不用心な部屋。

 しかも窓はなく、こちらも紙の扉で廊下とをつないでいる。

「え? 本当にここで泊まるのかにゃ?」

 野宿よりはましだけど、ベットはどこだろう?

「ベットはどこにゃ?」

「少し待つどすえ」

 すると藁の上に布団を敷いていくではないか。

 これでは野宿と変わらない。いや、藁の上だけあって少しはましか。


「それではごゆっくり」

 妖狐はさらに奥の部屋へと消えていった。


「……」

 言葉を失った私は、レモンに視線を向ける。

「仕方ない、せっかくの好意を無にするわけにもいかないだろう。一応見張りを立てて休むとしよう」

 レモンは呆れながら言った。

「うんそうだにゃ、マイヤーとアイヤーも早く寝かしてあげないといけにゃいものにゃ」

 紙の扉を開いて、お互いの部屋が見えるようにしてからマイヤーとアイヤーを布団に寝かしつけた。


 ところ変われば風習も変わるというけれど、ここまで違うのは初めての経験だった。


☆☆☆

 翌朝、危惧するようなことはなく朝を迎えた。

 私は井戸に行って顔を洗う。

 レモンはいつも通り、朝の訓練を始めていた。


「おはよう、昨日はゆっくり休めたべか?」

 声の主はユータだった。

「あ、ユータおはようにゃ。聞きたいことが山ほどあるにゃ。朝食作るから待ってるにゃ」

 私はユータにそう言うと、朝食の準備を始めた。

 庭で火を起こして、鍋を火にかける。

 干し肉と野菜炒めを鍋いっぱいに作った。

 後はパンを焼けば出来上がり。

 

 ほどなくして朝食が出来上がるころには、匂いにつられてかみんなが起きてきた。

 いつも通りの朝食。ユータを囲んで食事を始めた。

 ユータは物珍しそうにそれらを眺めていた。

「「お代わり」」

 いつも通りのマイヤー、アイヤーコンビだ。

「はいはい、いっぱいあるからたくさん食べるにゃ」

 マイヤーとアイヤーにお代わりをつぐとあっという間に胃袋に収まっていく。

 作った方も気持ちがいいくらいだ。


 

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