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「次はどんな奴だ?」
レモン機嫌悪いよ。
「え~と、下り坂になっていて魔物が襲ってくるって」
「どんな魔物だ?」
「わかんない」
そう言えば、下り坂をのぼってくる魔物って言ってたね。
なんだろ?
またトカゲ?
「またトカゲじゃないだろうな?」
レモンも同じこと考えてる。
「どうかな? でもほんとに魔物かもよ」
「まあ、警戒するに越したことはないからな」
剣を構えてレモンが先に降りていく。
ひんやりと冷たい風が駆け上ってくる。
「ぐあ」
レモンの悲鳴だ。
「レモン、大丈夫?」
「足下に気をつけろ」
足下?
松明で足下を照らしてみると……これは……ふん転がし?
が、一生懸命糞を転がして上ってきている。
気づかなければ足下をすくわれて、転倒していただろう。
「レモン大丈夫?」
「ああ、このくらいじゃぁぁぁぁあ」
「レモン!」
松明をレモンの方に向けるけど、明かりの届く範囲にはいない。
「レモン、レモン」
足下を照らしながら、糞転がしを踏まないようにゆっくり降りていく。
ところが途中で足の踏み場もないくらい糞転がしが増えて、足下をすくわれた。
「きゃぁぁぁあ」
そのまま下り坂の底まで転がっていった。
「いった~」
「ミカン退いてくれないか?」
「え?」
薄い闇に紛れて、レモンが私のお尻の下にいるのがわかった。
「きゃ、ごごごめん」
すぐに退いてレモンの手を取った。
「ごめんねレモン」
「不可抗力なのはわかっている。謝る必要はない」
ポンポンと砂を払って立ち上がるレモン。
さすがの松明も消えてしまったのでまた火をつけ直す。
「はい、レモン」
「サンキュー」
一本はレモンに渡した。
「しかしひどい目にあったな」
「そうだね。糞転がしが魔物に見えたよ」
「魔物か? 確かにな」
「以外と凶暴だね」
「あれだけ足の踏み場がなくなると、そうだな」
丸まった土がタイヤのように転がってくれるから、止まれないよ。
「帰り道はふさがれたな。進むしかないぞ」
え?
下り坂の出口は二メートルほど上にあった。
けなげにも糞転がしが上っている。
うーん、私たちじゃ無理だ。
別ルートで帰り道を探さなきゃ。




