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小説 「 p 」 - 死刑囚、2080年から1582年へ  作者: /WoKoERu ( wokoeru )
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第45話 交戦 P, TAOSU

/WoKoERu From Japan


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第45話 交戦 P, TAOSU

 

緑色の警告灯が、一定の間隔で点滅していた。

 

低い警報音が、施設全体を震わせている。

 

Pは静かに周囲を見渡した。

 


格納区画の先には、細い通路が続いている。




 

天井は低い。



 

配管が何本も縦横に走る。



蒸気管やガス管が壁一面を覆っていた。




 

照明は半分以上が壊れ、緑色の警告灯だけが通路を照らしている。

 

その時だった。

 

カシャン。

 


乾いた金属音が響く。

 

煙の奥で、二つの赤い光が灯った。


目だった。

人間のものではない。

 

赤い光は左右に揺れながら、ゆっくりと近付いてくる。

 


続いて、もう一つ。

 

二対の赤い光。




煙の中から現れたのは、二体のヒューマノイドだった。


 


黒い装甲。

無駄のない細身の機体。


両腕には、刃渡りの短い高周波ブレードが固定されている。

 

銃器は携行していない。

 

まるで、この施設だけのために造られた兵器だった。




 

「TARGET CONFIRMED」


 

機械音声が重なる。

 

二体は同時に床を蹴った。

 

凄まじい速度。

 

Pは咄嗟に身を引いた。

高周波ブレードが鼻先を掠める。

火花が散った。

 

そのまま壁へ激突した刃が、鋼鉄を紙のように切り裂く。


 

Pは短刀を抜いた。


 

正面から勝てる相手ではない。

 

そう理解していた。

 

一体がPへ迫る。


 

もう一体は、TAOSUへ向きを変えた。


 

TAOSUは微動だにしない。

 

右手が静かに腰へ添えられる。

 

柄を握る。

 

カチリ。

 

小さな音だけが響いた。

 

刀が、ゆっくりと鞘から姿を現す。

 



刃は細く、美しかった。

 


ただ、それだけだった。

 


特別な光も、派手な機構も見えない。

 



一見すれば、ただの日本刀だった。

 



ヒューマノイドが跳ぶ。

 

一直線。

 


高周波ブレードがTAOSUの首を狙う。

 

次の瞬間。

 

キィン――

 

金属が触れ合う澄んだ音。



 

それだけだった。

 

ヒューマノイドは数歩進み、その動きを止める。

 

右腕が、音もなく床へ落ちた。

 

切断面は、鏡のように滑らかだった。

 

一拍遅れて火花が噴き出す。



 

TAOSUは、何も言わない。

 

刀を下ろした姿勢のまま、静かに立っていた。


 

Pは一瞬だけ視線を向ける。

(……速い)


 

その僅かな隙を、敵は見逃さなかった。

 

ブレードが振り下ろされる。

 

Pは身を捻る。

 

刃が肩を掠めた。

服が裂ける。

熱を帯びた痛みが走る。

 

Pは後退した。

 

敵は距離を詰める。

 

さらに一歩。

 

その時。

 

敵の足が、床に這う配管へ乗り上げた。

 

バランスが僅かに崩れる。

 

Pは迷わなかった。


短刀を、関節部へ突き立てる。

鈍い音。

 

刃は浅い。

しかし動きは止まった。

 

Pはすぐに身を離す。

直後。


ヒューマノイドの腕が、壁の蒸気管へ叩き付けられた。

 

轟音。



 

白い蒸気が、一気に噴き出す。

 

視界が真っ白に染まる。

 

何も見えない。

 

足音だけが響く。

 

一歩。

また一歩。

 

誰の足音なのかも分からない。

警報音だけが、緑色の空間に鳴り続けていた。

 

そして――。



 

カチン。


 

静かな納刀の音が響く。


 


蒸気がゆっくりと晴れていく。

 

そこには、膝をついたヒューマノイドがいた。


 

胸部から肩口にかけて、一筋の斬撃。


 

数秒後。

 

機体は左右に滑るように裂け、そのまま床へ崩れ落ちた。

 

TAOSUは、刀を鞘へ納め終えていた。

 

何事もなかったように、Pへ視線を向ける。


 

「……行くぞ。」

 

その一言だけだった。

 


しかし、その瞬間。

施設のさらに奥から、重く鈍い振動が響く。

 

一度。

 

二度。

 

床が揺れる。


 

壁の配管が軋み始めた。

 

Pは警戒するように暗い通路を見つめた。

 


この施設には、まだ何かがいる。

 


そんな予感だけが、静かに胸へ残っていた。

 



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