第12話『エンドコンテンツルートへの挑戦』
――じゃあ、一番回避しなければならないエンドコンテンツルートは挑戦できるのか。
純粋な疑問。
攻略できてしまった場合、そのルートへ突入してしまう可能性がある。
しかし、さっきの裏ルートに関与するイベントを攻略という名の潰すことが有力だった場合、一番避けなければならないルートに突入せず済む。
そんなことを思いながら、俺は本日最後の休み時間に再び森の中へ来た。
「エンドコンテンツルート、条件が厳しいんだよな」
表&裏ルートの伏線を同時回収しながら、各イベントと並行してストーリーが進んでいく。
その際、両面のヒロインが初めて邂逅する。
……あれ、それって今の状況じゃ?
「標的発見」
森を巡回する狼型のボスモンスター。
さすがはエンドコンテンツ、ここへ至るまでにレベルアップの水準を満たさないと詰みポイントとして設定されていたな。
当然、打開策がないからデータをリセットして1からやり直しという鬼畜っぷり。
一応は親切心として、序盤はレベルアップできる期間が限られているからこそ――いや、そんなことより。
今度は自力で倒そう。
身体能力の次は、扱える魔法の度合いの検証だ。
「えっとたしか……」
『グゥ?』
「黒浄の棘」
『ンガウ!』
黒い棘が体に巻き付き――縛り上げる意識と共に手のひらを握って。
「1撃で討伐。そりゃそうか」
ラスボスの攻撃だから、当然だよな。
今の検証で、確信を得ることができた。
圧倒的な身体能力、武器、魔法能力。これら全てが最初から扱うことができ、しかし知識のおかげで行使できる。
エンドコンテンツルートが実装されるまで、主人公の親友は自身の能力を知らなかった設定は無理があるのでは?
と、今更思っても意味はないか。ありがたく使わせてもらおう。
「一帯のモンスターでも試してみるか」
学園から抜け出し、ここまでで1分程度。
残り3分はギリギリ自由に行動できるな。
『グルルルルル』
「黒怒の炎」
右手を持ち上げ、黒い魔法を発動。
声を上げることなく、目線があっただけの狼型モンスターを燃やし尽くした。
そして次、また次、次。
場所を移動しながら、視界に入ったモンスターを次々に魔法で消滅させていく。
パッと思い出せた魔法を発動させているけど、効果や威力は違っても全て問題なく想像通りの魔法だった。
さすがはラスボス。
常人では再現不可能な速度で駆け回って、これほど最上級の魔法を連発したのに疲労感を全く感じない。
「今ので、20体。凄まじいな」
この強さに加え、純白の烏と漆黒の鷲、2本の剣もある。
だというのに、血の繋がっていない姉がエンディング回収のキーキャラであり、親友よりも濃い繋がりによって敗北するなんて想像できない。
というか結末がわかりきっていて、力も最初から使えるのなら結末を簡単に変えられるのでは?
現に裏ルートとエンドコンテンツルートを攻略できたわけだし。
未確定な表ルートを攻略していけば、俺が死ぬ未来は完全に回避することができる。
「おぉ」
未だ不確定要素は残っている状況だけど、初めて安堵できる予想に心が軽くなったような気がする。
しかし、この世界で生活するなら不都合というか守らなければならないルールはあるよな。
最強だからといって秩序を崩壊させていいわけではないし、やりたいようにやっていいわけじゃない。
好きなゲームに敬意を払い、可能な限りは流れに身を任せて楽しみたいから。
だからこそ、放課後のイベントはゲーム内では語られることがなかった内容であり、思春期な男子にはドキドキしてしまう。
想像するだけでもソワソワして仕方がない。
こんなに強いのに、エロ本もといファッション雑誌を購入するだけ、で。
「あ、そうだ。ゲームの中と言えば、やはりステータスだよな」
現状の強さを数値化して把握できる、とても便利なもの。
学園へ足を進めつつ確認してみよう。
と思っても、どうやって確認するのか。
ゲームだとコントローラーのボタンを押すとできたけど……記憶に残るステータスを想像でもしてみよう。
お。
――――――――――
レベル999
パワー999
レジスト999
ディフェンス999
アジリティー999
バイタリティ999
HP9999
MP9999
――――――――――
なるほど……清々しいほどのカンスト状態。
これに加え魔法や装備によって数値が補正される。
主人公で攻略していたときはラスボスのステータスはわからなかったけど、確認することができて苦戦していた要因が腑に落ちた。
それと同時に、エンドコンテンツルートの難易度の高さにも納得してしまった。
最終戦までの道中、選択肢を間違えたら攻略不可能になるのは、このラスボスのためということだ。
本当、あまりにも全てがシビアすぎた。
「あ、そうだ。どうせなら」
ステータスの高さと自分の強さを完全には理解できていないけど、扱い方には注意しなければならないことはわかった。
そして、常に周りへ注意を怠らず『痛いフリ』をしなければならなそうだ。
と、これからのことを想像しつつ、どうせならと超跳躍をして空へ。
「おぉ――何度も確認し、何度も妄想した世界だ」
飛行機などが進む高さまですぐに到着し、視界いっぱいに広がるのは世界そのもの。
何度も行先を確認するために開いては閉じを繰り返したマップ。
さすがの学園は見下ろしても大きさに驚くし、ショッピングモールもあるし、海と錯覚してしまうほどの大きな湖もある。
駆け回っていた森も広大なものだし、山も街も全てが記憶にあるマップそのままだ。
「なんて素晴らしい光景なんだ」
ゲームで見るのと実際に見ることに差があるのは当然として。
既に急降下が始まっているにもかかわらず、焦りよりも胸の高鳴りを実感できてしまう。
こんな最高な体験ができるなら、これが夢なのか現実なのかはどうでもいいじゃないか!
「あ」
ダメージを受けることはないけど、着地ってどうやるんだ?
ミサイルが地面へ着弾したみたいに、土や木がドバーッてなっちゃうんじゃ?
全然考えていなかった。
やば。




