第7話 魔王軍、ついに“闇猫神殿”を建て始める
王国が猫対策会議を開いていた頃、魔王城ではさらに深刻な事態が進行していた。
「魔王様! 闇猫様のための“神殿”の建設を開始しました!」
「は?」
(は?)
ヴァルナと俺の声が完全にハモった。
ガルドは誇らしげに胸を張る。
「闇猫様は魔王軍の象徴……いえ、守護神! そのお方を祀る神殿が必要と判断しました!」
(いや判断したのお前らだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ヴァルナは猫を抱きしめながら震えた。
「ちょ、ちょっと待って!? 神殿って……どこに!?」
「魔王城の中庭です!」
「中庭ぁぁぁぁぁぁぁ!?」
(いや場所がガチすぎるだろ)
中庭に行くと、すでに魔族たちが総出で作業していた。
「闇猫様のために黒曜石を運べー!」
「闇猫様のために闇の炎を灯せー!」
「闇猫様のために猫じゃらしの巨大モニュメントを——」
(最後だけ方向性おかしいだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ヴァルナは頭を抱えた。
「な、なんでこんなことに……!」
「魔王様が闇猫様を大切にしておられるからです!」
「そ、そんな……! 私はただ……かわいかったから……!」
(正直でよろしい)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
その時、兵士の一人が猫を抱き上げた。
「闇猫様〜! こちらに新しいクッションをご用意しました〜!」
「にゃあ」
「おお……! なんという神々しさ……!」
ヴァルナの目が細くなった。
「……ねえ」
(お、来たな)
「なんで……みんな……猫ばっかり……?」
(昨日も言ってたな)
「わ、私は魔王なのに……! なんで猫の方が人気なの……!」
(いや猫は強いからな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「やめてぇぇぇぇぇぇ!! 今の光るの恥ずかしいからぁぁぁ!!」
「魔王様ー! 闇猫様の魔力測定器が完成しましたー!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ヴァルナは猫を抱えて逃げ出した。
「闇猫様の毛一本でいいので!」
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
(この流れ昨日も見たな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
夕方。
魔王軍の総力を挙げて建てられた“闇猫神殿”が完成した。
黒曜石で作られた荘厳な建物。
入口には巨大な猫じゃらしの石像。
内部にはふかふかのクッションが敷き詰められ、猫用の玉座まである。
(いや魔王城より豪華じゃねえか)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ヴァルナは震える声で言った。
「……これ……本当に……猫のために作ったの……?」
「はい! 闇猫様のために!」
「……私の部屋より豪華なんだけど……」
(事実だな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ヴァルナは猫を抱きしめ、涙目で叫んだ。
「もうやだぁぁぁぁぁぁぁ!!
なんで魔王軍が猫に全力なのぉぉぉぉ!!」
(いやお前が召喚したんだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
こうして、魔王軍の暴走は新たな段階へ突入した。




