第13話 対猫特殊部隊、魔王城に偵察に来る
ヴァルナが少し元気を取り戻した翌日。
魔王城の外では、ひそひそ声が響いていた。
「……ここが魔王城か……」
「気をつけろ。真の魔王“猫”がいるはずだ……」
「猫の気配を探れ……!」
黒い軽装に身を包んだ数名の兵士たち。
胸には“対猫特殊部隊”の紋章——猫のシルエットにバツ印。
(いや紋章の時点でおかしいだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
もちろん、外の兵士には聞こえない。
「よし、作戦開始だ。
目標は“猫の捕獲”……!」
「了解!」
兵士たちは魔王城の裏口から忍び込み、廊下を慎重に進んでいく。
「……気配を感じる……!」
「猫か……!?」
「いや……これは……魔族の気配だ……!」
(いや普通に魔族だよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
そこへ、魔王軍の兵士が現れた。
「誰だ!?」
「しっ、静かに! 猫が起きる!」
「……猫?」
魔王軍の兵士は胸を張って言った。
「闇猫様の昼寝の時間だ! 静かにしろ!」
「……闇猫様……?」
対猫特殊部隊は震えた。
「や、やはり……猫が魔王軍を支配している……!」
(いや違うって!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「にゃあ」
廊下の奥から、例の黒猫が歩いてきた。
「……っ!!」
「で、出た……!」
「真の魔王……!!」
(いやただの猫だよ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
魔王軍の兵士たちは一斉に跪いた。
「闇猫様……!」
「今日もお美しい……!」
「肉球が神々しい……!」
(いや崇拝の仕方おかしいだろ)
「……魔王軍が……猫に跪いた……!」
「やはり……猫が支配者……!」
「このままでは……王国が……猫に……!」
(いやなんでそうなるんだよ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
猫は兵士たちの前で立ち止まり——
「……にゃあ」
ただ鳴いただけ。
しかし。
「……命令……!」
「猫が……命令を……!」
「魔王軍が動くぞ……!」
魔王軍の兵士たちは立ち上がり、猫の後ろをついて歩き始めた。
「闇猫様のお散歩だー!」
「道を開けろー!」
「闇猫様の足元に気をつけろー!」
(いやただの散歩だよ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「……だめだ……」
「猫の力が……強すぎる……!」
「我々では……太刀打ちできない……!」
(いや何と戦ってんだよ)
隊長は震える声で言った。
「……撤退だ。
王国に報告する……
“魔王軍は猫によって完全に支配されている”と……!」
(いややめろぉぉぉぉぉ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
こうして、対猫特殊部隊は魔王城から撤退し、王国の誤解はさらに深まることになった。




