第11話 王国、ついに“猫が真の魔王”説を信じて大混乱する
勇者見習いルカが王都に戻り、震えながら報告書を提出した翌日。
王国の作戦会議室は、異様な緊張感に包まれていた。
「……では、報告を読み上げる」
司令官が紙を広げ、重々しい声で読み始めた。
「“魔王軍の真の魔王は……猫である”」
会議室が静まり返った。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も笑わなかった。
むしろ、全員が真剣な顔で頷いていた。
(いや笑えよ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
もちろん、王国には聞こえない。
「……ふむ。魔王軍の魔法が猫に吸い寄せられる……」
「猫の鳴き声で結界が揺れる……」
「魔王軍が猫に跪く……」
「魔王が猫を守るために身を投げ出す……」
(いや全部誤解だよ)
司令官は深刻な顔で言った。
「……これはもう、疑いようがない」
「「「……!」」」
「魔王軍の真の支配者は——
**猫だ!!**」
(いや違うってぇぇぇぇぇ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「よし、猫対策本部を設置する!」
「はっ!」
参謀たちが次々と意見を出し始めた。
参謀A
「猫の弱点は“水”と聞きます。水鉄砲部隊を増強しましょう!」
(いや小学生か)
参謀B
「猫は高いところが好きです。高所に罠を仕掛けるべきです!」
(いやなんで罠を高所に設置するんだよ)
参謀C
「猫は光るものに反応します。鏡を大量に用意して——」
(いやそれ遊んでるだけだろ)
参謀D
「猫は“またたび”に弱いと聞きます。王国の予算を使って大量に——」
「よし、予算を回せ!」
(いや何に使ってんだよ!!)
議論が白熱した末、司令官が立ち上がった。
「よし、決まった!」
「「「おお……!」」」
「魔王軍の真の魔王“猫”に対抗するため——
**王国は“対猫特殊部隊”を創設する!!**」
(いや何やってんだよ!!)
ルカは青ざめながらも、司令官の言葉に頷いた。
「……これで……魔王軍に対抗できる……!」
(いや絶対無理だろ)
一方その頃、魔王城では
「闇猫様〜! こちらに新しいベッドをご用意しました〜!」
「闇猫様〜! 今日の献立は“闇のカリカリDX”です〜!」
「闇猫様〜! 肉球クリームを改良しました〜!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ヴァルナが猫を抱えて逃げ回っていた。
(いや魔王軍の方がよっぽど危険だよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
今日も魔王城は平和だった。




