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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

"炮筒子"

掲載日:2026/02/02

"大勝負(マックスベット)"マックスと"弾丸(バレット)"バレッタと言えば、荒野にその名を轟かす悪党にして大狂人だ


この地方の家の有る子供たちは、親から「遅くまで出歩いているとマックス達に攫われる」と脅かされて門限を守るようになるし、あるいは無法者達の中には俺達を神格化するやつも居る

だが、本人の立場から言うなら「人間の世界に生きられなかったけだものが、死にかけて暴れている」に過ぎない




森から銃声

少しだけ腹が立った


バレッタがまた何か、愚かな事をして居るに違いないからだ


給油は既に終わって居る

店主の火葬も兼ねて、俺はガソリンスタンドのタンクに葉巻を投げ入れると、自分の車のエンジンを入れた


爆発

だだっ広い土地を利用して大きく作られていた店が白昼堂々、太陽よりも明るく燃え盛る

出発には相応しかった



到着すると、バレッタが何をして居るかはおおよそ解った


森から子供の悲鳴が聞こえる

要するに、また『そういう事』だ


案の定、車を降りて少し歩くと、森の暗がりから、口の周りを血でべたべたにしたバレッタが現れた


彼女には、『頂点捕食者になりたい』という強い欲求が存在する

その為、実感を得る為に人間を捕食する


子供を選ぶのも女を選ぶのも、「その方が美味いから」らしい

明らかな狂人そのものだが、見捨てる気にはなれない



「おい、バレッタ」


呼び声にバレッタが、唸り声で返す



眼が据わって居る


前に彼女自身が言っていた

「血には麻薬作用が有る」と


絶対にそんな訳が無いが、ただ、彼女にとってはそうなのだろう



「早くずらかるぞ、こんな所で遊びやがって───」


言いかけた言葉は、よく知った声の告げる「今日は」「ずらかるのはナシだ」という台詞で遮られた


嫌な奴のお出ましだ

この地方の保安官だった


俺達を非常に高く買っているのか、それなりの過剰戦力を連れて居る

全く残念な事に、俺達と車との間に、連中は百人規模で位置取りを終えて居た



『森に逃れるか』

俺はそう思った


とにかく遮蔽物の在る場所に行かないと、戦うにしても犬死にだ

そう思ったが、犬より頭の悪いバレッタは両手に拳銃を持つと、早くも銃撃戦を開始してしまって居た



「チッ、良い女だ!」


やむを得ず、俺も銃を抜く

狙いが雑なのか、かろうじて俺達には弾は当たらず、数人の保安官や自警団が顔や手に弾丸を浴び、戦闘能力を喪失した


皮肉とはいえ、『良い女』と言った事に対してバレッタが、「良い女って言えば……」「最後まで、あたしを力ずくでだけは抱こうとしなかったよな」と、馬鹿みたいに銃を撃ちまくりながら呟いた


「お前には、笑顔が似合うと思ってな」




「ありが───」


一、二、三…………四発

合計で四発の弾丸が顔の色んな所に命中し、バレッタは後ろに倒れて動かなくなった



バレッタの腕を掴んで、森に逃げ込む

もうそんな事をする意味なんて全く無いのに、彼女の手を離す事が出来なかった


視れば、当たり前の事だが、彼女は顔の上半分が無くなって居た



「これが、無理矢理じゃないと良いけどな」


これが最後だと思い、俺はバレッタの唇に自分のそれを重ねた


躊躇いは無かった

躊躇えば、彼女が傷付く気がしたからだ



「犯罪なんぞしなきゃ、こうもならなかったのによ!」


隠れた樹の向こうから保安官の声がした



「しなかったら」


「てめえらが、家や食いもんでもくれたのかよ」


隠れても埒が明かない

飛び出して撃ちまくるか


───大丈夫、相棒にも出来たんだ



それから少し時間はかかったが、最終的には死ぬ覚悟だって付いた

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