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沈黙の力

数日が過ぎた。

ジンジールは国王のもとに詰め、昼夜を問わず奔走していた。


セイタは屋敷に留まり、街を小窓から観察し、兵士や使用人たちの会話に耳を傾け続けた。


市場に並ぶ物資が日ごとに減っていく。

動かない荷車がそのまま朽ちていく。

兵士たちは街道の出入りを監視し、盗賊や魔物を警戒していた。


(……物流の動脈が絶たれている。物資喪失、ルート遮断、資材配置の崩壊。

このままでは……)


だが、ただ眺めているだけではなかった。

セイタは夜、誰の目も届かない場所で、自らの力を試していた。


(……暴力に頼る気はない。でも……力がどんなものか、知っておくべきだ)


試したのは、飛行能力。

夜の街を静かに飛び、上空から街道や城壁、放棄された荷車の山、盗賊の火の手を確認した。


そして透明化の力。

最初は自分の手、次に小石、布袋、やがて小型の荷車までも消すことに成功した。


(……これなら、物資の小さな輸送を盗賊の目から隠すことができる……)



その夜、戻ったジンジールにセイタは初めて切り出した。


「……王都と周辺領の荷車や馬、倉庫の物資。どこに何が残っているか、まず把握する必要がある」


ジンジールは深く頷いた。

「調査に回せる兵は少ない。だが、私が自ら指揮を取ろう」


セイタは一拍置き、口を開いた。


「……俺に、調査の手助けをさせてくれ。目立たない形で……夜、飛んで街道を見てくる。盗賊の動きや橋の損壊状況を」


ジンの目に驚きと感謝が混ざる。


「……その知識、その力、貸して頂けることに感謝いたします……」


セイタは目を伏せた。

「……ただ、何も残さず終わるのが嫌なんだ。それだけだ」



王都の地図に、小さな線が描かれ始めた。

その線が、絶たれた物流の動脈を再びつなぐ第一歩になることを、まだ誰も知らなかった。

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