表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

疑念と沈黙の道

風が、焼けた戦場を吹き抜ける。

立ち尽くすセイタの隣で、ジンジールは剣を地面に突き立て、荒い呼吸を整えていた。


「……助けていただき、感謝します」

ジンの声はかすれていた。

「あなたがいなければ、私はここに立ってはいません」


セイタは答えなかった。まだ震える手を見つめていた。


「ここを離れましょう」

ジンジールが立ち上がり、道を示した。

「このまま王都に向かいます。だが……あなたのことは、私の判断でしばらく私のもとに置かせてほしい」


セイタは小さくうなずいた。

(……当然だ。むしろ助かる。目立ちたくない……)



道を歩く二人。焼けた村、崩れた街道、散乱した荷車と物資の残骸。


ジンジールが沈んだ声で語り始めた。


「街道は魔王軍や盗賊に封じられ、物流は途絶えました。馬車も荷車も奪われ、商人たちは街を捨てた。街は飢え、病が広がり……国は崩れかけています」


セイタは荷車の残骸に目を止め、頭の中で数字と図を思い描いた。


(……物資喪失、ルート遮断、ドライバー不足……都市の物流崩壊の連鎖……)


「……王都ですら、もはや食料も薬も十分ではありません」


(まるで事故現場……いや、それ以上だ……)


「陛下には、私からあなたのことを申し上げます。だが、正直に言えば……」

ジンジールはわずかに目を細め、前を見た。

「あなたが何者なのか、私にはまだ分かりません。それを確かめるまでは、私の責任でお守りします」


「……感謝する」

セイタはそれだけ答えた。


(……俺の力のことは……誰にも知られたくない。今は……静かに、考える時だ……)


遠く、焼けた橋の向こうに王都の城壁が見えた。

その壁の内側に、崩れかけた都市が息をひそめている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ