表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

ただの運行管理者、異世界へ

※この物語は、運送会社の運行管理者だった男が、無双を封印し物流の知識で世界を変えていく物語です。

最初は暗めの導入ですが、徐々に成り上がっていく過程をお楽しみください。

心臓が、締めつけられるように痛い。

デスクに伏せる寸前、視界の端が暗くなった。


(……これで終わりか……)


トラックの運行計画、点呼、事故報告書、ドライバーの管理。

ただの運行管理者として、数字と電話と書類に追われる毎日だった。


家に帰れば、子どもたちはすでに寝ていた。

暗い部屋で寝顔を見つめ、ただ黙って風呂に入り、布団に潜り込むだけの生活。

妻と会話することも、もう何年もなかった。


(……何もなかったな、俺の人生……)


闇に沈んでいく感覚だけが残った。



目を開けると、そこは白い空間だった。

壁も床もない、ただ真っ白な世界。


「目覚めたか」


白髪の老人のような姿をした何者かが立っていた。

その瞳は人のものではなかった。


「お前は死んだ」


セイタは呆然とした。

言葉が出なかった。


(……死んだ……?)


目の前の存在は何かを話していた。

物流、崩壊、滅びかけた国、知識が必要──

耳には届いているのに、意味が頭に入ってこなかった。

ただ音として響いているだけだった。


「生きる機会をやろう。選べ。何も残さず終わるのか。それとも――」


セイタは拳を握りしめた。

(……終わりたくない……こんな、何も残せず……)


「……やる……」


「お前を守る力も授けよう」


「……力……?」


「もう決まったことだ」


次の瞬間、足元が崩れ、暗闇に落ちた。



落ちた先は、地獄だった。

剣戟、獣の咆哮、血と炎の匂い。

燃える村、崩れた城壁。

巨大な魔物の群れ。その中心に異様な威圧感の影がいた。


(……何だ、あれ……ただの魔物じゃない……)


骨のような鎧に覆われ、黒雷の魔力をまとい、群れの魔物たちがその影に道をあける。

その目がセイタをとらえた。


「……何者だ……貴様……?」


声だけで背筋が凍った。


魔物の槍が振り下ろされ、闇の波動をまとった一撃が迫る。


(ヤバい……死ぬ……死にたくない……!)


その刹那、波動はセイタに届く前に空間に吸い込まれるように消えた。


「……な、なんだ……?」

セイタ自身も呆然とした。


魔物が怒声を上げ、二撃目を放つ。

セイタは無意識に両手を前に出した。

「うわ、くるな……!」


波動は跳ね返り、雷の塊となって魔物に突き返った。

威力はさらに増し、その体を貫いた。


「……馬鹿……な……!」


魔物は塵と化した。


ただ静寂だけが訪れ、焼けた大地の匂いが残った。


セイタは自分の手を見た。


(……これが……俺の力……?)

(怖い……こんなの、頼っちゃいけない……)


ただ一人の生き残りの剣士が立ち尽くし、声を絞り出した。


「……あれは魔王軍の将の一体……あの化け物を倒すなど……」


セイタは震える声で言った。

「……今のこと……誰にも……頼む……」


剣士はゆっくり頷いた。


風が焼けた戦場を吹き抜けた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしよければ感想や応援コメントお待ちしています。次話では王都の惨状が描かれ、物語が動き始めます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ