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第8話:巣作りは仕様策定から

いつも読んでくださりありがとうございます!


最新話をお届けします。本日20時にも更新予定です。

楽しんでいただけると嬉しいです。


連載して3日経ち、昨日初めてブックマークとリアクションをもらえました(≧▽≦)

嬉しくて泣きそうですが我慢します。。ありがとうございます( ;∀;)←


今後も毎日更新でがんばります(*^^*)


それでは、どうぞ!




「――というわけで、まずはインフラ整備とセキュリティ対策からだ」


俺が腕を組んでそう宣言すると、インプたちはキョトンとした顔で互いを見合わせた。インフラ? セキュリティ? 彼らにとって、それは未知の呪文に聞こえただろう。


「あの、ヴァル様…それは一体…?」

ノクテリオンがおずおずと尋ねる。


その瞬間、俺はハッと我に返った。そうだ、さっきから興奮して、ずっとタメ口だった。相手はどう見ても人生の大先輩。前世の体育会系上司に叩き込まれた礼儀作法が、今更ながら脳内で警報を鳴らす。


「あ、いえ! 失礼しました、ノクテリオン…さん!」

俺は慌てて背筋を伸ばし、ぎこちない敬語に切り替えた。


「まずは、皆さんが安心して暮らせる環境を整えよう、という意味です。はい」


俺の急な態度の変化に、ノクテリオンは目を丸くし、そして慌てて首を横に振った。

「め、滅相もございません! ヴァル様は我らの救い主。どうか、お楽になさってください!」


「いやしかし、年長者を敬うのは当然のことで…」


「とんでもない! ヴァル様に『さん』付けなど、恐れ多くて耳が溶けてしまいます!」

「でも、俺としては落ち着かなくて…」


俺とノクテリオンが、謎の敬語とタメ口の押し付け合いを繰り広げる。その傍らで、ミアが俺のローブの裾をくいっと引っ張り、「ヴァル様は、ヴァル様だよ?」と首を傾げていた。その純粋な一言に、俺たちは顔を見合わせて、ふっと笑ってしまった。


「…分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます、ノクテリオン」


「はい、ヴァル様」

妙な空気も和んだところで、俺は改めてプロジェクトの概要説明に入った。


「まず、この洞窟は最高の拠点だ。何より、このヴァルス・アステラクロンの骸が、強力な魔物を寄せ付けない天然の結界になっている」


俺が《コード・アナライザー》で得た情報を共有すると、ノクテリオンは「やはり…」と頷いた。


「次に食料問題。これが最優先課題(クリティカルパス)だ」


そこで、俺は先日倒したレイザー・ハウンドの亡骸を洞窟に引きずってきた。インプたちがビクッと身をすくめる。


「ヴァル様、それは…?」

「もちろん、食料だ」

俺の言葉に、インプたちの顔が青ざめる。


「こ、こんなものを食べるのですか…? 我らは普段、木の実や草の根を…」

「まあ見てろって」


俺は即席ナイフ(レイザー・ハウンドの爪を簡単に加工したもの)で肉を切り分け、焚き火で炙る。ジュウジュウと音を立て、香ばしい匂いが洞窟に立ち込めた。


(さて…ここで一つ実験だ)

俺は自分のスキルについて考察する。


《悪食》は、対象を分解し、情報とエネルギーを抽出するスキル。ミミズ時代は、このスキルでスキルをコピーしてきた。では、普通の「食事」とはどう違うんだ?


俺は意識を集中して《悪食》をOFFの状態にする。そして、焼けた肉を一切れ口に放り込んだ。


「……うまい!」


ミミズ時代には決して味わえなかった、熱い肉の旨味と歯ごたえ。ただの食事という行為が、こんなにも感動的だなんて。俺は思わず、目頭が熱くなるのを感じた。


俺が夢中で肉を頬張る姿を見て、インプたちもおそるおそる手を伸ばす。


「おいしい…!」

「こんな美味しいもの、初めて食べた…!」


飢えていた彼らは、涙を流しながら肉にかぶりついた。ミアも小さな口いっぱいに肉を頬張り、幸せそうに笑っている。その光景は、どんなご馳走よりも俺の心を温かく満たしてくれた。


さて、次は《悪食》をONにした状態だ。

俺はもう一切れの肉を手に取り、スキルを発動させてから口に入れた。


その瞬間。

シュンッ!

肉は噛む間もなく光の粒子と化し、俺の身体に吸収されてしまった。


《経験値を微量獲得しました》

《HPとMPがわずかに回復しました》


(なるほどな…)

俺の中で、一つの仮説が形になる。


《悪食》をOFFにした状態での食事は、純粋な栄養補給と、何より精神的な満足感を得られる。


一方、ONにした状態では、食事の楽しみはなくなるが、対象を完全に分解し、経験値やエネルギーに変換できる。そしておそらく、スキルを獲得するには、この《悪食》ONの状態で、対象の「()()()()()()()()」か、あるいは「対象そのものを()()()」喰らう必要があるのだろう。普通の食事では、スキルは手に入らない。


納得したところで、俺は早速、彼らに役割分担を指示した。


「ノクテリオンは全体のまとめ役。知識と経験を活かしてくれ」

「はっ!」


「力のある者は、洞窟の入り口にバリケードを作るための資材集め。手先の器用な者は、レイザー・ハウンドの皮や骨を加工して、武器や道具を作るんだ」


「「「おおっ!」」」


インプたちは、初めて与えられた明確な役割に、戸惑いながらも生き生きとした表情を見せる。


そして、俺はミアと数人の子供たちに、特別な任務を与えた。

「ミア、お前たちにはこの周辺の『探索』を頼みたい」


「たんさく?」

「そうだ。俺のスキルで安全な場所と危険な場所は判別できる。お前たちには、食べられる植物やキノコ、綺麗な水源がないか探してきてもらう。これは、この巣の未来を左右する重要なミッションだ」


俺は《コード・アナライザー》を使い、周辺の簡単なマップを描き、安全なルートと探索ポイントをミアたちに教える。その時、俺はふとミアに意識を集中してみて、彼女という存在を「解析」してみた。


すると、脳内に見慣れたウィンドウとは違う、より詳細なディレクトリ構造が展開された。

【ルート】

 ┣【オブジェクト名:ミア(インプ)】

 ┃ ┣【物理パラメータ】

 ┃ ┃ ┣【レベル:1】

 ┃ ┃ ┣【HP:12/12】

 ┃ ┃ ┗【その他:種族平均値】

 ┃ ┣【精神パラメータ】

 ┃ ┃ ┣【状態:良好、ヴァルへの強い信頼と好奇心】

 ┃ ┃ ┗【思考:単純、直感的】

 ┃ ┗【魂の構成要素コア・アトリビュート

 ┃   ┗【属性親和性アフィニティ:闇(未覚醒)】

(…なんだ、これは)


俺は自分のステータスウィンドウに表示される単純なリストとは、全く違う情報量に驚いた。


(これが《コード・アナライザー》の力か…。表層的なステータスを覗き見るんじゃない。対象の存在そのものを、構成要素(コンポーネント)レベルまで分解して表示することができるのか…)


俺のスキルでは、自分の詳細な魂の構造までは見ることができないらしい。だが、他者(もしくは自身より弱いもの)であれば、ここまで深く読み解ける。


特に気になるのは「魂の構成要素」という項目だ。属性親和性(アフィニティ):闇(未覚醒)。


(闇属性との親和性か。インプは夜の闇に紛れて行動する魔物。そう考えると、闇の力と魂レベルで繋がりが深いのは自然なことだ。未覚醒ということは、何かのきっかけで開花する可能性がある…?)


(闇の力…それは、姿を隠したり、相手の光を奪ったりする力だろうか? あるいは、物理的な『影』を操るような力に繋がる可能性も…?)


今はまだ、漠然とした推測に過ぎない。だが、彼女に何か特別な才能が眠っている可能性は高い。


「わかった! ミア、がんばる!」


ミアは、目を輝かせて力強く頷いた。その才能をどう伸ばすかは、今後の課題だな。


日が暮れる頃には、洞窟の入り口には粗末ながらもバリケードが組まれ、洞窟の中では女たちが皮をなめし、男たちが骨を削って槍先を作っていた。


ミアたちも、泥だらけになりながら、食べられる木の実がなる場所を見つけて帰ってきた。

洞窟は、もはやただの避難場所ではなかった。


誰もが自分の役割を持ち、明日のために汗を流す。そこには、確かに「巣」と呼ぶにふさわしい活気が満ち溢れていた。


俺は、その光景を眺めながら、静かな満足感を覚えていた。


誰かに指示を出し、プロジェクトを動かす。前世では苦痛でしかなかったその行為が、今は不思議と嫌じゃなかった。


「ヴァル様!」


ミアが、見つけてきた木の実を一つ、俺に差し出す。


「これ、あげる!」

酸っぱくて、少しえぐみのある木の実。

だが、俺にとってそれは、どんな高級なデザートよりも、甘く感じられた。


その甘さを噛み締めながら、俺はまだ気づいていなかった。


食料と安全を手に入れた彼らが、有り余るエネルギーを斜め上の方向に発揮し始めるまで、あと数日も無いということに。

今回もお読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


次回、インプ無双です。


今後の展開に向けて、皆さんの応援が何よりの励みになります。


「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】、リアクション、そして【感想】**で応援していただけると嬉しいです! 誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さんの声が、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです!

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