第4話:プロジェクトD、始動
5話目も読んでくださってるそこのアナタ(〃ω〃)
最大級の”ありがとう”を送らせてください(๑˃̵ᴗ˂̵)
そして、これも何かの縁。お気に召したら、ぜひブクマでご祝儀を……!
ドラゴン。
その圧倒的な存在の骸を前に、俺――相馬 透は、ただのミミズでありながら、壮大な計画を胸に秘めていた。
その名も、『プロジェクトD』。
DはドラゴンのD、そしてデリシャス(美味しい)のDだ。
「……とはいえ、99.9%の確率で精神崩壊はさすがに笑えない」
あの赤い警告ウィンドウは、前世で本番環境のデータベースを全消ししかけた時のトラウマを的確に抉ってくる。
(あのとき聞こえた声は、気のせい、だよな...)
とりあえず準備だ。周到すぎるほどの準備こそが、無謀な挑戦を成功へと導く唯一の道。元システムエンジニアの俺は、そのことを骨身に染みて知っている。
俺はドラゴンの骸がある大洞窟を仮の拠点とし、来るべき日のためにレベルアップという名の地道なデバッグ作業に没頭し始めた。
「まずは、覚えたての《火炎ブレス》の動作テストからだな」
俺は目の前の岩壁に向かって、腹の底から力を振り絞る。
『《火炎ブレス》!』
ボフッ……。
口先から吐き出されたのは、誕生日ケーキのロウソクに及ばないくらいの情けない火の粉だった。岩肌がほんのり温かくなっただけだ。
「……出力、低すぎだろ! このAPI、仕様書と実装が違いすぎるぞ!」
思わず前世のノリでツッコミを入れてしまう。これでは戦闘の決め手にはならない。
せいぜい、肌寒い夜に暖を取るくらいの用途しかない。キャンパー御用達スキルかよ。
「いや、待て。出力が低いなら、使い方を工夫すればいいだけの話だ」
俺は思考を切り替える。例えば、敵の目くらましに使うとか。
あるいは、可燃性の物質に引火させるとか。そうだ、このスキルは直接的なダメージソースではなく、戦闘の「トリガー」として設計されているに違いない。そうに決まった。
自己完結した俺は、狩りの効率を上げるべく、洞窟周辺のモンスター生態系マップを脳内に構築していく。《解析》で得た情報を元に、どのモンスターがどんなスキルを持ち、どのくらいの経験値を持っているのかをリストアップ。まるでゲームの攻略サイトを作るような作業だ。
『ギシャア!』
「はいはい、お疲れ様。経験値ごちそうさまです」
カマキリとトカゲの悪魔合体『マンティスリザード』を、《酸液飛ばし》と《外殻強化》タックルのコンボで危なげなく仕留める。戦闘は、もはや作業だ。
《レベルが7に上がりました》
《レベルが8に上がりました》
レベルは順調に上がり、ステータスもミミズとは思えない領域に達しつつあった。しかし、新たなスキルはなかなか手に入らない。どうやら、同じモンスターばかり狩っていても、得られるものは少ないらしい。
「もっとレアなスキルを持つモンスターはいないのか…」
そう考えながら、洞窟のさらに奥、ドラゴンの骸に近づいた時だった。
ゾクリ、と。
全身(ミミズなので全体だが)の感覚器官が、強烈な悪寒を訴えた。これまで感じたどのモンスターとも違う、陰湿で知的なプレッシャー。
俺は咄嗟に岩陰に身を隠し、プレッシャーの根源を探る。
いた。
ドラゴンの巨大な頭蓋骨の、眼窩の暗がり。その闇が、ゆらりと蠢いた。
『《解析》!』
《対象:シャドウ・リーパー》
《表示:竜の強大な魔素に惹かれ、影に潜むことを覚えた魔物。実体を持たず、影から影へと高速で移動し、対象の魂を刈り取る鎌で攻撃する。》
「……実体がない、だと!?」
まずい。これは相性が最悪だ。俺の攻撃手段は、《酸液飛ばし》と《火炎ブレス》、そして物理タックル。どれも実体がなければ当たらない。
その瞬間、俺の足元の影が不自然に伸び、鎌を持った漆黒の人影が音もなく立ち上がった!
速い!
ヒュンッ!
魂を刈るという禍々しい鎌が、俺の身体があった場所を薙ぎ払う。俺は完全に勘で身をよじり、紙一重で回避していた。
「あ、危ねぇ!」
だが、シャドウ・リーパーは即座に影の中へ溶けて消える。そして次の瞬間には、別の場所の影から再び現れ、攻撃を仕掛けてくる。一方的すぎる!
「クソッ、攻撃が当たらねぇ!」
俺は手当たり次第に《酸液飛ばし》を放つが、全て影に潜られて空を切る。これではMP(マジックポイント、いつの間にか増えてた)が尽きるだけだ。
「落ち着け、俺。パニクるな。相手はプログラムだと思え。必ず行動パターンがある」
俺は一旦攻撃をやめ、回避に専念しながら《解析》の深度を上げる。敵の行動を、思考を、アルゴリズムを読み解くんだ!
《対象:シャドウ・リーパーの行動パターンを解析中…》
《…影から実体化する際、0.3秒の硬直時間が発生…》
《…影から影への移動には、影が繋がっていることが条件…》
《…性質上、強い光を極端に嫌う…》
「――見えた!」
敵の仕様書、カンニング完了!
勝機は「光」。だが、俺が持っている光?属性の攻撃は、あの線香花火レベルの《火炎ブレス》だけだ。
「……やるしかない!」
俺はシャドウ・リーパーの次の出現位置を予測する。奴の行動には癖がある。俺の右、左、そして背後。三角形を描くように移動している。つまり、次は――正面だ!
俺は敵が出現するであろう正面の空間に向かって、ありったけのMPを注ぎ込み、スキルを発動した。
『舐めるなよ、俺の誕生日ケーキキャンドラーを!《火炎ブレス》!』
ボオオオオオッ!
情けない火の粉ではない。洞窟の闇を払うほどの、眩い閃光!
MPを限界まで注ぎ込んだブレスは、威力こそないものの、閃光弾のような強烈な光となって炸裂した!
『ギイイイイイイイイッ!?』
光の直撃を受けたシャドウ・リーパーが、影から完全に引きずり出され、苦悶の叫びを上げる。実体化した奴は、ただの黒いモヤだ!
「今だッ! お前のコード、丸見えなんだよ!」
俺は硬直した敵に最大火力の《酸液飛ばし》を叩き込み、続けざまに《外殻強化》した身体で突撃する!
『グギャアアアア…!』
致命傷を負ったシャドウ・リーパーを、俺は容赦なく《悪食》で喰らい尽くした。
《経験値を大量に獲得しました》
《レベルが10に上がりました!》
《レベルが11に上がりました!》
《レベルが12に上がりました!》
《条件を満たしました。スキル《隠密》を獲得します》
《悪食による情報抽出…完了。『…古の竜…その魂は未だ滅びず…我ら影は、ただその眠りを見守るのみ…』》
脳内に響く断片的なメッセージ。眠りを見守る? やっぱりこの竜、まだ完全に死んでいないのか?
だが、それ以上に重要なのは、この勝利がもたらした確かな自信だった。
知恵とスキルを組み合わせれば、格上すら倒せる。
俺はもう、ただのミミズじゃない。
「…よし」
俺は決意を固め、再びドラゴンの骸の前へと進み出た。
99.9%のエラー?
上等だ。バグのないプログラムなんて存在しない。ならば、その0.1%の正常ルート(サクセスケース)を、俺が無理やり通してみせる!
俺は足元に転がる、巨大な黒い鱗に狙いを定める。
「プロジェクトD、最終フェーズに移行!」
俺はミミズの身体をくねらせ、覚悟を決めた。
「俺のすべてのチカラを使って、喰ってやる!」
そして、俺は《悪食》を発動したーーー。
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ステータス
【種族】ワーム
【個体名】トオル ソウマ
【レベル】12
【HP】 80 / 80
【MP】 55 / 55
【攻撃力】50
【防御力】65
【素早さ】30
【魔力】25
スキル:解析(Lv.3)、悪食(Lv.3)、麻痺耐性(Lv.2)、酸耐性(Lv.2)、酸液飛ばし(Lv.3)、外殻強化(Lv.3)、火炎耐性(Lv.2)、火炎ブレス(Lv.2)、物理抵抗(Lv.2)、毒耐性(Lv.1)、電撃耐性(Lv.1)、隠密(Lv.1) new!
固有スキル:
称号:地を這うハイエナ
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